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無かったことに



授業中にお腹がグゥーっと鳴る。
シーンと静まりかえった場面で変なくしゃみが出てしまう。

普段の生活の中で周りに聞こえてほしくない音は色々ある。

それが頻繁にあるのは学校生活の中かもしれない。

朝きちんと食べてきた。何ならさっき休み時間に菓子パンだって食べた。
なのに、どうしてこんなにも静かな時にお腹が鳴るのか。

あっ、やばいと思ったら筆箱をガチャガチャ。咳払いを少々。
何とか被害を最小限に留めるために必死の対策。

しかし、そんな対策は虚しく自分が想像したよりも遥かに大きな音が教室に響き渡る。

多かれ少なかれ、こんな経験誰でもあるのではないでしょうか。

私の子供が小学生の時、ふいにこんな事を言い出した。

「今日、学校で皆んなとおしゃべりしてる時にさ、めっちゃオナラが出そうになったんだよね」

学校あるあるだ。私も経験ある。

音を最小限に抑えこむ事により、誰発信かは誤魔化しが効くが、匂いまでは制御できない難しさ。

しかし、我が子は驚くべき方法でこの窮地をやり過ごしていた。

「我慢してたんだけど、ちょっと音が出そうな気がしたからボイパしたよね」


・・・ボイパ?
一瞬、想像の域を越えすぎて意識が飛んでしまったが、我が子はオナラをボイパつまり、ボイスパーカッションにより誤魔化したと言うのだ。

※ボイスパーカッション通称ボイパとは打楽器の音色を口で表現するものです

私はそんなシチュエーションにかつて出会った事がない。ましてや、そんな発想もない。

「どうやったの?」

「え?だからオナラ出るかなって瞬間にボイパしてさ。ズッズッシュー、ントント、ジューみたいに、まぁ適当に?」

急に?急に何の前触れもなくボイパをし出した?大丈夫だったんだろうか?友達はよほど困惑してしまったのではないだろうか。

驚く事にこの場はこれで誤魔化しきれたと言う。

凄くないですか?
まず何か物音立てるとかではなく、自分から出た音を更に自分から出す音によってカバーする。

そして、友達は絶対に気づいたはず。それなのに急なボイパをスルーしてくれる優しさ。
母親として感謝したい気持ちでいっぱい。

あぁ、このまま育っていってほしいと心から思った瞬間だった。

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