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毒きのこが観光資源になる日も近い。


なにをまたクレイジーな?と思われるかもですが。

私の職場では、毒きのこにフォーカスしたネイチャーツアー、その名も「猛毒きのこさんぽ」を実施しています。

安全に楽しむためのレクチャー

3年前から期間限定で実施しているツアーですが、大人気ですね。

予約した方は、わざわざ、お金を払って、毒きのこを探すわけです。
いいですねえ。振り切ってる感じ。


というのも、秋の奥入瀬渓流には「3歩歩けば1本きのこ」と言えるくらい、大量のきのこが生えます。
私は6年ほど、奥入瀬渓流ホテルでネイチャーガイドをしてきましたが、お客さまがきのこを見かけるたびに、100%おっしゃる言葉があります。


「このきのこ、食べれますか?」


絶対食べないだろうになぁ。
なんでも食べたがる日本人らしい質問だなあと思います(ふぐとか納豆とか)。
皮肉ではなく、なんだかいとおしい気持ちです。


実は、発生しているきのこの大半が食毒不明です。
要は、わからない。
野生きのこは、名前がついていないことがほとんど。
学者でもないので「食べてみないとわかりません」というのが誠実な回答です。


しかしながら、きのこの面白さは「食べられるか」「食べられないか」という単純な話ではないのかも?と思っています。

日本で一番中毒例の多い「ツキヨタケ」

例えば、樹木にきのこが生えていたとする。
きのこは樹木から栄養を吸収しています。
栄養を吸収されたことにより、本来硬質な樹木は、少しずつ柔らかく変質します。
そうすると、柔らかくなった樹木の中に、アリが巣を作ることができる。
アリはキツツキの大好物。
アリが入った樹木を、キツツキが喜んでつつき、中をほじくります。
キツツキに砕かれた樹木は、少しずつ穴だらけになって、何年もかけて地面に還っていくんです。


でもね、樹木にきのこが入り込まないと、あまりに中が硬すぎてアリが入ることもできない。
アリが入らないと、キツツキだって食べ物を得られない。
つまりきのこは、目には見えないけど生態系にとって大切な役割を果たしています。

最強の毒キノコとも表現される「カエンタケ」


そのほかにも語りきれないほどの役割を果たしている、きのこ。
たまーに、奥入瀬渓流で、毒きのこが踏み潰されている姿を見かけることがあります。
その度に、とっても悲しい気持ちになるんですよね。
毒とか、毒じゃないとか、そういうことで嫌わないでほしいなって。
だからこそ、あえての「猛毒きのこさんぽ」。
倦厭されてしまう彼ら?彼女ら?の健気さが、このツアーの醍醐味です。

奥入瀬渓流は国立公園の特別保護地区。
動植物の採取が禁じられている場所です。
だからこそ「食べる」視点だけじゃない、きのこのディープな面白さを知ってほしい。
ツアーに参加した方が、その面白さに魅了される姿を見るたびに、毒きのこが観光資源になる日も近い(いや、もうなっている?)と思うのでした。

▼こちらにも、そのディープな魅力を書いております。


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