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昭和世代と平成世代の違い

先日統一地方選挙がありましたが、選挙のたびに思い出されるのが「シルバー民主主義」という言葉です。
高齢者が多いため自然と高齢者優先の政策が実行されてしまい、それ以外の人、特に若い人の間で不公平感が募っているのはご存じのとおりです。

そういった状況下で、現在60代より上の昭和世代と、40代氷河期より下の平成世代の分断が起きていて、地域、企業、家庭内で多くの混乱を引き起こしています。

地域では、多数派の高齢者に支持される保守的な政策が行われ、少数派である若い人の積極的な考えは無視される。

企業(特にJTC)では年功型の組織が残ったままであり、その流れに乗れなければ排除され非正規に追いやられる。

家庭では、昭和の子育て、教育、就職等に関する古い常識を上の世代が持ち続け、働きながら子育てする世代がその無理解に苦しんでいる。

私も上の世代の方々の古い常識に、地域・会社・家庭内で疑問を持ったことは何度もありますが、その原因についていろいろ考えてきて、分かってきたことがあります。

それは、今の60代より上、特に70代以上の人は、見た目や言葉は現代風だとしても、実際は江戸から続く身分制を軸とした上下関係を最重要視する価値観を強く引き継いでいるのではないか、という仮説です。


朱子学と身分制


江戸時代は現代とは違い儒教の影響が強く、そこから派生した朱子学の影響のもと、強固な身分制が形作られていました。
ただ朱子学については歴史の授業で学んだだけでよく知らない人が多いと思うので、超ざっくりですが下記にまとめてみました。

・朱子学の基本は「理気二元論(りきにげんろん)」
「理」は、万物がこの世に存在する根拠、「気」は万物を構成する物質
それらが互いに作用し合う関係

・理気二元論を人間に当てはめると「性即理(せいそくり)」
「性」とは人間の本質で静かな状態、すなわち「理」
性が動くと「情(気)」、情のバランスが崩れると「欲(悪)」になる
人は常に情をコントロールして、性に戻さなければならない

・理気二元論から、すべての物事には不変の秩序=上下関係があるとする
自分よりも身分が上の人や父親の言うことは絶対とする「君臣父子(くんしんふし)の別」を重んじている

ちょっと長くなりましたが、要は「世の中は不変の秩序があり、同様に人間には絶対的な上下関係が存在する」といったら近いでしょうか。
この考えを江戸幕府が統治に利用したのは皆さんご存じの通りです。


昭和まで続いた教え


さらにその元となった儒教の教えを紐解きます。

「五常」の教え
「仁」は、人を愛し、思いやること
「義」は、利や欲にとらわれず、世のため人のために行動すること
「礼」は、謙遜し、相手に敬意を払って接すること
「智」は、偏らずに幅広い知識や知恵を得て、道理をわきまえること
「信」は、約束を守り、嘘をつかず、誠実であること

…とてもいい話だと思いますが、現代の人間から見るととてもあいまいで個人の考えがないし、他者と交渉するのではなく配慮を重ね衝突を避けようとする行動様式に見えます。

これらは今の個人主義的な考え方とはかけ離れていて、江戸の封建社会が現代の社会とどれだけ異なっていたか理解できると思います。


そしてその後の明治以降も、東京などの都市部以外では江戸に近い暮らしが昭和の前半まで続きました。
地方では昭和30年ごろ、1950年代まで電気のない生活が続き、個人同士の恋愛結婚が家同士の見合い結婚を件数で上回ったのは1965年です。

私には現在90歳手前の親戚がいますが、彼の幼少期、北陸地方の田舎では、電気ガスはもちろんなく、着物で過ごし、かやぶき屋根と囲炉裏、薪で沸かすお風呂しかありませんでした。

そして彼の少年時代から見合い結婚までのいきさつは、血縁と地縁による濃密な関係の中でまさに時代劇でしか見たことがないような話にあふれていて驚きましたが、昭和になっても江戸から続くさまざまな習慣や家制度、年長者を敬う儒教的な考えが色濃い生活を送っていたようです。


ギャップを認めることから


そういった戦前・戦中世代のすぐ下に現在75歳を中心とした団塊世代がいますが、彼らの親や周囲の大人は、いわば江戸時代の文化を最後まで引き継いだ人々だったのです。

幼少期を封建的な環境や教えのもとで育った70代以上の彼らと、物心ついたら1980年代以降のゲームや音楽、マンガに囲まれ個人の自由を享受し続ける40代以下は、普通に考えて理解しあえるはずがありません。

地域の年長者、企業の役員や65歳以上で働く人、孫のいる祖父母や年金受給者といった多くの人々が、かつての年齢や立場による上下関係ではない現代の個人中心社会へ移行出来ず、多くの場面で下の世代と軋轢を起こしているように感じます。

そういった大きなギャップが存在しているという事実をまずは理解し、「こんなに違う人々が協力してやっていくのは非常に難しい、ではどうするか?」と考えることからしか、この問題は解決できないと思います。




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