平成二大アイドル勢力の衰退
ジャニー喜多川氏の長年にわたる未成年者への性的暴行の問題が相変わらず世間をにぎわせています。
ジャニーズ事務所は何らかの形で解決を目指すのか、うまいこと忘れ去られるのを待つのか、それは分かりませんが、何をしたところでこの芸能史に残る悪行を忘れてしまう大人はもういないでしょう。
ジャニーズ所属または出身の人のうち純粋な被害者の方々には、本当にお気の毒としか言いようがありません。
また今週、音楽プロデューサーの松尾潔氏がマネジメント契約を結ぶスマイルカンパニー(SC)を契約解除となり、その理由が、SCと強い関係にあるジャニーズのスキャンダルについて彼が公の場で語ったからだというニュースがありました。
これによりSCの山下達郎氏への批判が相次いでいます。
本件の真相は分かりませんが、この問題の闇の深さだけは一般人にも十分伝わってきて、恐ろしさを感じます。
そしてその大事件の陰に隠れている、ジャニーズとは別のもうひとつのアイドル勢力に関する闇についてお伝えしたいと思います。
それは平成時代のAKB48で一躍有名になり相当な批判を受けた「握手券商法」が、未だにAKBや坂道系グループで続けられているという事実です。
音楽が売れなくなった時代の発明
いわゆる握手券商法は皆さんご存じだと思いますが、AKB48が会いに行けるアイドルというコンセプトで握手券を買えば曲のCDがついてくるというイベントを、調べたところ2005年ごろに初めて行ったそうです。
これは昭和の終わりから平成初期の音楽CDブームが去り、ミリオンヒットがなくなりつつあった時期に発明されたある種革命的な抱き合わせ商法です。
そしてこの商法はアイドルファンの強力な支持を得て巨大な売り上げを実現し、ヒットチャートがAKBで独占された時期もありました。
ただそのやり方も当然限界がきて、2012年から18年まで続いたAKBのミリオンヒットはなくなり、入れ替わるように2017年ごろから乃木坂46が登場し、基本的に同じ方法を取り商業的に一定の成功を収めました。
その後2020年のコロナ禍によって握手会が行われなくなりついにこの商法も終了すると思われましたが、オンラインに場所を変えて継続され、コロナ終了の今は直接の接触こそないもののリアルイベントはまだ行われています。
二つの大きなデメリット
この劇薬ともいえるCDと握手券の抱き合わせ商法は日本の音楽界、芸能界に非常に大きな禍根を残しました。
この商法は、音楽のヒットランキングがCDの売上枚数だけで計算されることを逆手に取ったハックの一種と言え、その結果、音楽ランキングのロジックを完全に破壊しました。
しかし一般の人は音楽ランキングをその後もしばらく信じていたので、AKBの曲が広く受け入れられているという錯覚を起こし、その結果彼女らの曲がテレビや主要メディアで流れ続け、他の音楽を圧倒してしまいました。
もうひとつ、こちらの方が深刻だったかもしれませんが、握手会の人気イコールCD売り上げという図式により、未成年どころか小中学生の女性アイドルを持てはやし接触を試みる大人の男性ファンの購買行動を正当化できる理由を与えてしまいました。
アイドルを熱狂的に支持する大人のファンはいつの時代にも必ずいますが、それはあくまでごく一部であり、当然社会的には好ましくないとされてきました。
しかし握手券商法では、いい大人が下手をしたらまだ小学生のアイドルに多くのお金をつぎ込んで支持の大きさを可視化することができ、しかもその行為は「太客」などと呼ばれ称賛されました。
そのような熱心すぎるファンが一線を越えてアイドルに直接的な接触や見返りを求め、法律で禁止されたレベルの過剰なファンサービスに発展したり、逆に拒否されてストーキングや犯罪が起きたのは皆さんご存じの通りです。
太客という本来裏の存在が注目された状況は、平成という世間の価値観が揺れ動いた時代の、倫理観の混乱を象徴する出来事のひとつだったと思いますが、もうそろそろ本来の状態に戻るべきでしょう。
悪しき握手券商法はまだ続く
改めて考えると、平成の二大アイドル勢力のひとつであるジャニーズは例の未成年に対する巨大スキャンダルで信用を失いましたが、もうひとつのAKBグループも未成年に対する欲求の可視化を主軸に置いたグレーゾーンのビジネスを長年行ってきました。
握手券ビジネスは下火になりましたが、今でも抱き合わせ商法自体は継続されていて、音楽とは関係ない人気投票による売り上げを競っています。
人気投票をやるなら音楽の売り上げとは別の独立した商売として行えばいいし、音楽は音楽として選ばれるべきだと思います。
サブスク全盛の今、彼らがもはや時代遅れの握手券商法への依存を止め、本来のライブ、歌、演技、キャラクターの魅力、作品の完成度等で勝負するようになってほしいですね。