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世間の善悪を分かつライン

想像してみてください。

世間の共通認識として、「ここから上はOK」「ここから下はNG」というラインが常に1本引かれているとします。
そのラインには幅が結構あり、OKとNGが明確ではないグレーなエリアがかなり広くとられています。

「世間」と書きましたが、それは同じ国や近い地域に暮らす、常識やルールに関して暗黙の共通理解がある人々のことで、彼らはいつも世界に対してそのラインを当てはめて判定をしています。

アメリカでは、探検家コロンブスやルーズベルト大統領が実は差別主義者だったという説が広まり、OKラインのはるか上にいた彼らをグレーゾーンに下げ、功績をたたえた銅像などを撤去しました。

日本でも戦前から戦時中は、偉大な軍人と称えられた人の像が東京の駅前に建っていたそうですが、敗戦とともにいっさいなかったことにされました。
おそらくどの国でも同じようなものです。


今日もそれは起きている


過去において称賛されていた、または大きなメリットと引き換えに黙認されていた常識的ではない行動や考えの個人が、世間のラインの急な変化によってグレーゾーンやNGゾーンへ突き落される、という事件を私たちは何度も繰り返し目にしています。

素晴らしい演技の俳優、クリエイティブな音楽家、人気のスポーツ選手、好感度の高いアイドル、名作をいくつも残す作家、業界に革命を起こした起業家など、誰とは言いませんが、同じように世間のラインの下へ叩き落された人を容易に思い浮かべることができます。

そしてまさに今、山下達郎氏が発したジャニー喜多川擁護と称賛の言葉、さらに気に入らなければ聴かなくてよいという流れを読まない挑発的な発言が世間を刺激し、彼は黒に近いグレー側に落とされてしまいました。

私は作品と人格を分けて評価したいのでこんな事件が起きても聴くのをやめませんが、世間のバッシングにはおそらく逆らうことはできずメジャーシーンから消えていくと思います。

彼の音楽は好きですが、どうすることもできません。


個人では抗えない基準


この世間のライン上下というのは、現在の行動や発言だけでなく過去についても判明次第同じように適用されるので、隠しておきたい過去や、昔はOKだったが今はそうではなくなった経験を持っている人にとっては、非常につらい状況です。

まあその当人にとっては結局自業自得なのですが、我々ファンにとっては、ファンになる前のそんな古い出来事でその人がつぶされていくのはたまったものではありません。

ジャニーズの例の問題に直接関わりそうなメンバーやグループのファンの皆さんは、まさに今同じ気持ちを味わっているのではないかと想像します。

明らかな犯罪行為であればあきらめもつきますが、以前は黙認されていた喜多川氏の行為を受け入れた、またはそうしたのではないかという疑惑があるだけで世間からは黒に近いグレー目線で見られるというのは、ファンとして耐えがたい状況だと思います。


そして、世間のNGラインに引っかかってしまった人がその後何もなかったかのように復活した例を私はあまり知りません。

なぜかはわかりませんが、そのラインに引っかかったという履歴は十年単位で世間に記憶され、笑い話に昇華できれば最も良いケースで、たいていは過去の「あの事件・あの人」扱い、さらにひどいと表には二度と出られず、裏で無限にネタとしてこすられ続けます。

それはまるで古代から続くムラ社会のようで、村八分や破門、島流しになったら二度とその土地に足を踏み入れることはできず、入ったら殺されるという時代から何も変わりません。

おそらく人の性質は何百、何千年くらいでは変わらないんでしょう。


被害を最小限にする方法


最後に、被害を減らす策があるとしたらとにかく初動が非常に大事で、世間がラインを上げグレーまたは黒と裁定された時点で弁明の余地はなく、すでに有罪判決が下った後なんだと理解し、余計なことは言わず静かに非を認めるしかないと思います。

多分そのラインは法律より強固で、理屈では説明できない多くの人の強い感情が含まれているので、正論で返しても覆ることはありません。
まして嘘をついて逃げようとしたら一生裏切り者の汚名を着せられてしまいます。

唯一、そんな世間の怒りを鎮められるだけの共感と同情を呼び起こせる人間力があれば切り抜けられるかもしれません。

またあなたがグレーや黒認定された人のファンである場合、もう今までと同じでいることは無理と考えてあきらめたほうがいいでしょう。
私もそういったファンの一人なので、今後また同じことが起きないよう祈るくらいしかできることはなさそうです。




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