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円安は時代の変化をあらわす

本日のドル円レートは155~6円となっており、以前と比べて非常に円安となっています。
これにより毎日の生活でさまざまなデメリットを感じている人も多いのではないでしょうか。

例えば、
・輸入に頼る石油、食品、木材等の高騰で生活コストが上昇
・観光客が安い日本に押し寄せて迷惑、つられて観光地の物価も上がる
・海外旅行のコストが上がりすぎて気軽に遊びに行けない
・海外からやってくる労働者が減り、日本から出稼ぎに行く状態に
・自国の経済力の象徴である円が安くなり、GDPランキングが下がる

円安のニュースやXでのコメントはこういった問題を毎日繰り返し伝えていて、円安がなんだか衰退する日本の象徴になっている気分がします。
しかし、円安は本来輸出大国の日本にとって歓迎すべき事態です。


近隣窮乏化政策


経済を勉強した方やこういった情報に詳しい方ならおそらく常識の範疇だと思いますが、自国の通貨安を意図的に起こすことは「近隣窮乏化政策」として昔からよく知られています。

ざっくりいうと、自国の通貨安によって輸出産業の優位性を獲得し、国内の産業を活性化させ雇用を生み、代わりに周辺国の輸出を妨げ産業を低迷させ失業を増やします。

その証拠として今国内では、株価の上昇や賃金の上昇、失業率の低下などが進んでいて、日本で最も外貨を稼げる自動車や産業用機器、素材等の分野の企業は非常に景気が良くなっています。


さらに、海外に進出した企業はドルで売り上げているので、その利益を日本に送金すると円安の分儲けが増えます。
現在の日本はバブル期よりも10倍も海外に資産を多く持っていて、円安に反比例して海外の資産がどんどん増えるという好循環が起きています。

輸入する原材料等の高騰は確かに痛いですが、それを加工し付加価値をつけて輸出する日本の企業は、その原材料費の上昇を大幅に超える輸出の伸びを実現していて、それにより国内の労働者の雇用と賃金を充実させています。

このように円安はプラス面が多々ありますが、ではなぜ今はネガティブな話ばかり聞かれる状況なのか?
これは私の思うところでは、原因は3つあります。


一つ目は「マクロの視点を持てない人々の目先の不満」


100均ショップや安くておいしい外食などに代表される海外の安い品で勝負する商売がずっと続いてきたため、日常生活に多くの安い輸入品が入り込んでいて、少しの円安でも多くの品の値上げを発生させます。

本来なら、生活必需品を為替の悪影響を受けやすい輸入品に頼りすぎる状態こそがリスクなはずですが、その状況が長く続きすぎたため一般の人の目がすっかり慣れてしまい、値上げという目先の変化しか見れなくなっていることが問題だと思います。

平成時代、特に2000年以降は常に円高基調が続き安い輸入品ビジネスが主流でしたが、ついにそれが円安方向に切り替わろうとしていて、経済の常識が変わる瞬間が来たと言えるかもしれません。

そういった視点を持てない人が目先の変化に文句を言うのは、まあ仕方がないでしょう・・・。


二つ目は「高齢者に受ける話題ばかり流すマスコミの偏向」


テレビや新聞等オールドマスコミの主要なお客さんは60~80歳くらいの世代ですが、団塊世代を中心に反体制・反自民的な意見を持つ人が歴史的に多く、彼らの多くは年金生活者またはリタイア直前のため、好景気による賃金上昇の恩恵を受けることができません。

そのため円安を生活費がただ上がるだけの悪い状態と捉える可能性が高く、しかもそれが政府主導の低金利による通貨安への誘導であったら、反感を覚えるのが当然だと思います。

さらに彼らの記憶には高度成長期の上昇する日本という単純な刷り込みがあり、現代の複雑な経済の仕組みを理解することがなかなかできません。

結局マスコミも客商売なので、そんなお客さんの好きそうな話を延々垂れ流しているだけですが、これも仕方がありませんね・・・。


三つ目は「輸出関連産業以外になかなか行き渡らない恩恵」


輸出関連企業の多くは大企業またはその傘下の企業群で、おそらく国内の全労働者のうちそれらに従事するのは半分以下ではないかと思います。

すると残りの労働者は今回の円安による恩恵を直接受けられず、今後取引先企業の発注が増えたり、大企業社員の購買意欲の向上により売り上げが増えてはじめて恩恵を少しずつ感じることができます。

さらにそういった大企業以外の多くの企業は生産性が低く、原材料の高騰を付加価値の向上で補いそれを上回る成長を実現するスキルを持っていないため、現状はただ物価が上がるだけとしか感じられません。

これは結局、従業員ではなく企業の問題であり、高付加価値を生み出せる業種や企業に転職するのが一番いいんですが誰もがそうできるわけもなく、これも結局仕方がないでしょう・・・。


円高・円安の理由


結局、円高とデフレに30年慣れ過ぎて当たり前だと思っていた人々が突然の変化に戸惑い文句を言い続けているだけな気がします。

ちなみに日本の国力が低下した結果現在の円安になっているという意見がありますが、むしろ逆ではないかと思います。

1980年代巨大な赤字に苦しんでいたアメリカを救うために行った1985年のプラザ合意以降、アメリカのドル安・円高が日本の輸出産業を破壊しそれがその後30年続いたのが、現在まで続く日本の国力低下の主な理由です。
(もちろん理由はそれだけではありませんが、大きなウエイトを占めているのは間違いありません)

つまり80年代から通貨安競争をアメリカに仕掛けられていたということですが、時代が変わり今は日本がそれを海外に仕掛けています。

誰にも未来は予測できませんが、この円安は当分続く可能性が高いのではないかと思われ、もうあの平成の円高時代は終わったんだ、と一度頭を切り替えたほうがいいのかもしれません。




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