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カースト制よ、さよなら

「か-て嬉しい花いちもんめ。まけーて悔しい花いちもんめ。あの子が欲しい、あの子じゃわからん。相談しましょう。そうしましょう。」
確かこんな感じだった記憶。


子供の世界の中でも、残酷でかつ現実的なゲームだと思う、花いちもんめ。
私はこのゲームで最後の1-3人に残る方の小学生だった。クラスの人気者が序盤で選抜され、中盤で選ばれた子も、少し安堵した表情で敵陣に小走りで向かう。

終盤のグループは、「自分だけは!最後になりたくない」という一心である。「ねるとん紅鯨団」で告白を待てど待てど全くお迎えがこないブラウン管の中の女性を思い出す。

小学2年生の時、建売住宅が建ち並ぶ団地に引っ越した。転校して程なく、無視や仲間外れにあった。おそらく、転校して早々に開催された学芸会の配役決めの際、主役のガチョウ役にいの1番に立候補したからだろう。

ただ、そんな仕打ちを仕打ちとして感じとれる能力が幼き私にはなかった。
小学生までの私は、どこか素っ頓狂で、心ここにあらずの、ボーっとして鼻をほじっている、そんな子だったのだ。

悪口は、彼らの独り言と思っていたし、自分なんかの話をしているわけがないと思っていた。
「桃田さん、ブルマからハミパンしているよ(クスクス)」と言われれば「教えてくれてありがとう」とトンチンカンな返しをしていた。
全くイジメがいがない。

でも、そんな私も中学生に入ると、よそのJCと同じ感覚を持ちはじめ、思春期を体験できるまでに成長した。悪口や陰口のルールも学んだし、対処法も知った。勿論、されたら嫌な気持ちも体感した。さらに女子のカースト制の存在を知った。


①人気者(別の学年からも注目されがち)
②人気者と友達の明るいグループ
③普通のグループ
④目立たないグループ
⑤嫌われてしまったグループ

ざっとこんな感じだろうか。

私のランクは当時(自己査定)②だったと思う。
なぜなら全学年の中でも注目されていた美人の真美と仲が良かった。いわばコネで②グループにいた。カースト制の上の方にいると、上には真美しかいないわけだから、居心地は快適で何より安全な世界だ。

華やかな中学生活は束の間、悲しいことに、②にいた私は、中学生でもイジメに合う。理由なんてない。女子小中学生のいじめとはシンプルであって残酷である。「なんかムカつかない?」の掛け声で始まるサバイバルゲームだ。


音楽室から教室に戻る間に何があったんだ?
仲良かったあの子もこの子も、まるで私が見えないかの如く透明人間になるのだ。

カースト制②にいた私は、一気に島流しに合い⑤嫌われてしまったグループへ出向となった。
真美はというと、私がいなかったかの如く、残留メンバーと楽しくお喋りしているではないか。


今考えると大した話じゃないが、中学生の私にとっては、この仲間外れだけでも、大きな出来事で、不安と恐怖を覚えたし、通学に向かう足が重くなった。


いつまで続くの?と心で嘆いていた時、話しかけてくれたのは、部活が一緒で、絵が得意なアユムだった。アユムは部活で、私と一緒の補欠組。
なかなかレギュラーになれない中、毎日朝練夜練を頑張っていた子だった。団体では物静かで目立つタイプじゃないけど、2人で話す時はケタケタとよく笑う子だった。私の変な妄想話を聞いてくれてケタケタ笑ってくれていた。彼女は当時のカースト制で言うと④目立たないグループにいる子だった。


私と話すと訴追される状況の中、
「一緒に帰ろう。」と誘ってくれた。

アユムは、小学生の時の私に少し似ていた。
周りを気にせず、人に流されない、自分の世界がある芯の強い子だった。


一緒に帰ったり、朝練を一緒にしたり、交換絵日記でお互い漫画を描きあっていた。
相変わらず女子からの無視は続いていたが、自然と気にならないようになっていた。
妄想話に妄想漫画、ケタケタと笑う声。

私は新しい世界にいた。
①も②も③も④も⑤もない。
カースト制なんてもんはないんだ。
私は私で行きたいところに行って、いたい人たちといる。

頭の上にいたと思っていた人気グループも横並びに見れば、魅力が霞んでくるではないか。
私はやっぱりアユムと妄想漫画を描いて、部活のレギュラーになれなくても夜練した帰りに、妄想話をしてケタケタ笑いながら帰ってる自分が好きだ。カースト制よ、さよなら!


今いる世界が嫌なら飛び出していい。
今いる場所に執着する必要はない。
世界はきっと自分が思うよりも広く、たくさんの人がいる。
きっと自分がケタケタ笑える場所と笑い合える人がこの世界のどこかにいるはず。


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