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【トピックスレポート:第7回】『ウェンズデー』の大ヒットはなぜ生まれたのか?

こんにちは!B.O.Mの竹内です。

B.O.M(ボム)は音楽ストリーミングサービスの楽曲URLなどを一つのリンクで管理・分析できるサービスです。

B.O.Mのnoteでは、月に2本程度音楽やマーケティングについてのトピックスを紹介しています。

第6回は「『ウェンズデー』の大ヒットはなぜ生まれたのか?」です。

皆さんは昨年11月にNetflixで配信されたドラマシリーズ『ウェンズデー』はリリース後すぐに世界的なヒットとなり、いまでもInstagramやTikTokといったSNS上で大きなトレンドとなっています。
いったい何がこうした現象を引き起こしたのでしょうか?要素を分解して考察を行っていきます。

Wednesdayとは?

作品について

『ウェンズデー』(原題:『Wednesday』)とは、2022年11月23日にNetflixで配信された全8話のドラマシリーズです。
1991年に公開された映画『アダムスファミリー』に出てくる一家の娘、ウェンズデーが成長した姿を描くコメディホラーとなっており、頭脳明晰で皮肉屋、そしていつも暗い面持ちのウェンズデー・アダムス、ネヴァーモア学園に入学した彼女が、新たな友や敵を作りながら、猟奇殺人の謎を探っていくストーリーが描かれます。

記録的なヒット

公開からわずか三週間で10億時間相当の脅威的な再生数を記録し、『ストレンジャー・シングス4』が保持していた記録を塗り替え、Netflix史上1週間で最も視聴されたシリーズとなりました。

コンテンツについて

触れやすい距離にある物語

『アダムスファミリー』はアメリカでは多くの人が見たことある名作です。国内でも聞いたことはある、または一度は見た記憶があるという方も少なくないのではないでしょうか。そんな誰もが知っている、愛されているシリーズのキャラクターのひとり、ウェンズデーが主人公であるということから、新しく視聴することへの心的なハードルが非常に低くなっています

真似したくなる=UGCを生みやすい世界観

本作品を彩るのはゴシックで皮肉屋、不思議なオーラやファッションをもつ非日常感のある学園や主人公の設定です。なかでも主人公ウェンズデーの特徴的な黒とベリーのような色のリップを用いたメイクや黒と白のみのファッション、変わったダンスや言動などを分析し、真似するファンがSNS上で多く目立つことになりました。

普遍的だが視聴者のニーズを汲んだテーマ

「変わり者である主人公が新たな環境に身を置き周りの差に戸惑いずつも奮闘する」というストーリーライン自体は、例えば『エミリー、パリに行く』などの過去のヒット作にもみられるような普遍性のあるテーマですが、クールだが親切さは全くない皮肉屋であるウェンズデーのキャラクターが他作品とは一線を画すものとなっています。
こうしたウェンズデーのキャラクターは一見テーマに沿っていないかのように思えますが、トラウマや人気者とは対照的な自分のギャップや自己認識、人間関係によるもつれなどといった誰もが一度は悩んだことのあるようなテーマに対してより人間的な、視聴者の視点に近い行動を引き起こすものとなっています。
前述した『エミリー、パリに行く』のような不器用だが優しい「理想的な自己」を描く作品が多い中で、本作品のこうした特徴はヒットに繋げる仕掛けを施しつつも多くの過去作品との明確な差異を視聴者に提供するものとなりました。

マーケティングの特徴

SNS上でのUGCの爆発的増加

ヒットに伴い、InstagramやTikTokなど、SNS上ではウェンズデーのコスプレをしながら、劇中のダンスシーンでウェンズデーが踊っていたダンスをLady GagaのBloody Maryに合わせて踊るダンストレンドがTikTokなどで大流行しました。このトレンドによりZ 世代のゴシックサブカルチャーが復活したと言われているほどです。

CNNをはじめとした各メディアがこのSNS上でのトレンドについて分析を行っていますが、誰もが一度はダンスパーティーなどで踊ったことのある簡単でわかりやすく親しみのあるダンスムーブを用いており、それにWednesdayシリーズの不気味な、キャッチー(=実践しやすく)かつフックのある世界観が組み合わさったことで大流行したのではないかと考察されます。
また、ウェンズデーが周りを気にせず自分らしさを貫く姿勢が”自分が誰なのかを発見する”ということへのZ世代のニーズ、そしてプラットフォームの特徴と合っており、ウェンズデーのように自分らしくいる、変人でも周りなんて関係ないという姿勢が支持されたこともヒットが生み出された要因の一つであると考えられます。

エッジの効いたPR施策

さらに本作では、オンライン上のPRのみではなく数多くの印象的なオフライン広告も実施し、その多くが話題を呼びました。

Wednesday Releases Thing In New York | Netflix

リリース前の広告ではニューヨーク市民に対して、劇中に出てくる体のない手が街で歩いているというドッキリを行い、そのリアクションを動画にしプロモーション映像として公開しました。
シリーズの世界観をショッキングな形で伝える大胆なこのキャンペーンは作品に注意を向けさせる大きなきっかけとなりました。

ポスターの配布

11月末のリリース直前にあたる時期に、サンクスギビングの帰省ラッシュ時期に合わせ空港の荷物検査場で用いられる荷物入れの中のデザインにポスターを入れるプロモーションを実施しました。
ターゲットもタイミングも見事に掴んだこの施策の効果は抜群だったようで、実際に空港利用者がこれらの広告からシリーズを見始めたと語る視聴者も多く見受けられました。


おわりに

今回は世界的なトレンドとなった『ウェンズデー』について、ヒットを生み出した要素を考察していきました。要素をひとつひとつ分解して分析してみると、コンテンツに目をむかせる感覚的な要素とコンテンツに熱中させるような深度のある要素がマーケティングとコンテンツの両方において隈なく仕掛けられていたことがわかります。

また、今回はマーケティングという観点から作品について見ていきましたが、『ウェンズデー』は話題を裏切らず誰でも夢中になってしまう、非常に優れたホラーコメディです。気になった方はぜひ一話だけでもご鑑賞ください

今後もB.O.Mのnoteでは、本件のような音楽・マーケティング業界におけるトピックスについての発信を行っていく予定ですので、ぜひフォローしていただけますと幸いです!
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参考文献

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