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肯定も否定もしない


あるクラスがあった。

明るい人もそうでない人もいる、どこにでもあるようなクラスだった。

一生続くような特別な絆があったわけでもなければ、憎しみ合うほど仲が悪かったわけでもない、ごくごく平均的なクラスで、何事もなく学校生活は修了した。

数年後、同窓会を開いて、クラスの半分ほどが出席し、お互いの近況を報告しあって、その他特筆すべきこともなくお開きとなった。それ以降、何年かに一度は開催していたが、全員そろうことはなかった。

それからしばらくして結婚した人が現れた。報告をSNS にて行いクラスメイトから祝福され、その後結婚ラッシュが続いた。

さらにしばらくして芸能人になる人が現れた。その人はクラスで一番の人気者だった。テレビを通してみる同級生はとても輝いてみえ、クラスメイトたちに希望を与えた。

ただ、そんなことを知らずに、まったくスポットライトの当たらない、社会の片隅で独り苦しみ続けている人もいた。お互いがお互いの存在を知ることもないまま時間だけが過ぎていった。

さらに時間が過ぎ、離婚する人が現れた。子供が成長し、みんないい大人になってきた頃、芸能人のあの人が引退した。その後、テレビに出ることはなく、クラスの誰とも会うことはなかった。

さらに、事業に失敗して倒産する者、事故、病気で命を落とす人が出てきた。遠くに引っ越してしまう人もいて、同窓会にくる人数も徐々に減っていった。

再会できなかった人たちは、人生における喜怒哀楽を語り合い、わかり合うこともなく、それぞれがそれぞれの場所で散っていった。

それでも幸せになる人もいた。決して金持ちとは言えないが、幸せな家庭を築くことができたのである。その人は学生時代、クラスで最も目立たなかった。

クラスのみんなが死んでいく中、最後まで生き残ったのはその人だった。

一人一人の訃報を聞くたび、つらく寂しいものがあった。自分一人だけ取り残されていくような感覚があった。自分より先に逝ってしまう人たちを恨みたくなり、これじゃあどっちが幸せかわからないなぁと嘆息した。最後にできることは、子供たちや次の世代にバトンを渡すことだけだった。


そしてやがて一つのクラスは終わった。

そのことについて言及する者は誰もいなかった。






確実に続けていますので、もしよろしければ!