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熊川哲也 Kバレエカンパニー「白鳥の湖」

生まれて初めて、全幕作品のバレエを鑑賞しました。世界的バレエダンサーの熊川哲也氏が率いるKバレエカンパニーが2021年3月に公演、オンライン配信された"白鳥の湖"を映画館で観ることができるということで、「物は試し」と今まで経験のないバレエ鑑賞に足を踏み入れました。作品に関する事前情報は全くありませんでしたが、バレエと言えば真っ先に"白鳥の湖"が連想されると言っても過言ではないほど有名な作品ですので「これなら初心者でもとっかかりやすいかも……」と勝手に想像し、鑑賞に臨みました。後から知ったのですが、白鳥の湖は"眠れる森の美女"、"くるみ割り人形"とともに"チャイコフスキーの三大バレエ"と呼ばれているようです。

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作品は全4幕の構成となります。初心者には大変ありがたいことに、幕ごとの冒頭にあらすじの説明があるので、ストーリーの展開が理解しやすかったです。大まかには以下のような流れで話が進んでいきます。

・序幕

森にやってきた美しい娘オデットは悪魔ロットバルトに呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまいます。オデットが人間の姿に戻れるのは、夜の間だけ。この呪いを解くことができるのは、初めての愛の誓いをオデットに捧げられる者だけです。

・第一幕 王子の成人式

王子ジークフリートの成人を祝う饗宴のために友人や家庭教師がお城に集まっていました。そこへ王子の母親が現れ、お祝いにと王子に「弓」を贈ります。翌日に行われる舞踏会の場で花嫁を選ばなければならないのですが、結婚する意思のない王子は、王妃から贈られた弓を携え、皆と狩りに出かけてしまいます。夕暮れになり、森の中で王子が一人になったその時、悪魔が現れ王子を湖へと導きます。

・第二幕 湖での出会い

湖畔に着いた王子は、一羽の白鳥を見つけます。気づかれないように弓を引くと、その白鳥が人間の娘オデットの姿に変身しました。王子はオデットの美貌に目を奪われ、弓を下ろし、話を聞くことにします。オデットは自分にかけられた呪いのことについて王子に打ち明けました。王子は、「自分こそオデットの呪いを解くことができる」と愛を誓います。すると、どこからともなくロットバルトがオデットを連れ去ってしまいました。

・第三幕 王宮の舞踏会

翌日、豪華絢爛な舞踏会の場には、王子の結婚相手の候補として各国の王女たちが招かれていました。王女たちはそれぞれ王子ジークフリートの前で踊りを披露しますが、オデットのことが忘れられない王子は心ここに在らずといった状態で、結婚相手を選べません。そこに、他国からの使節に身を扮したロットバルトと、魔法でオデットそっくりに姿を変えた、ロットバルトの娘オディールが現れます。オディールの姿がオデットにあまりにも似ているので、王子はオデットが来てくれたものと勘違いし、オディールと愛を誓ってしまいます。身を隠していたオデットは嘆き悲しみ湖へ逃げ帰ります。悪魔に騙されたと気づいた王子は急いでオデットの後を追いました。

・第四幕 悪魔との決着

湖ではオデットが悲しみに暮れていました。呪いを解くことができるのは、初めての愛の誓いを自身に捧げられる者だけだからです。オデットを追いかけてきた王子は、彼女に愛の誓いができなかったことを心から詫びました。そこに再び悪魔ロットバルトが現れます。王子は悪魔に戦いを挑み、悪魔を倒しますが、オデットにかかった白鳥の呪いは解けません。永遠に白鳥の呪いが解けず、現世では結ばれることもないと悟ったオデットと王子は、二人で湖に身を投げ、その魂は来世で永遠に結ばれることになります。

感想

想像していた何倍も見応えがありました。ダンサーの皆さんの魂のこもった踊りはもちろん、荘厳なオーケストラの音楽も相まって、息もつけないほど心を揺さぶられます。中でも、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)は同一キャストが演じられるのですが、その演じ分けには凄みを感じました。つい先ほどまでオデット役として清廉な演技をされていたのに、場面が変わればオディール役として妖艶な演技に様変わりしていて。本当に同じキャスト?と思うほどです。日高世菜氏の演技力、表現力に驚きました。

悪魔ロットバルトが頭を左右に動かすシーン、王子の家庭教師が王妃にお酒を進めるシーン、祝宴や舞踏会の場面で周囲のキャストが身振り手振りで場を盛り上げるシーン……。物語の進行には直接関係しませんが、ちょっとした動作ですら印象に残っています。逆に言えば、たったひとつの動きも含めて作品の一部として注目されるということであり、キャストの皆さんがどれだけ神経を使って舞台に上がっておられるのかと思いました。

刻一刻と移り変わっていくダンサーのエネルギッシュな動きと表情を大画面で味わうことができたのは、劇場版ならではの楽しみ方だったかもしれません。でも次回は是非実際に劇場まで足を運び、生のバレエ舞台を体験してみたいと思います。今回、白鳥の湖をスクリーンで鑑賞し、現場で観てみたいという思いが一気に強くなりました。いつもより少し格好つけてみても良いかもしれませんね。楽しみがひとつ増えました。



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