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美容室コンプレックスだった私が、美容師さんになんでも話せるようになるまで

私には、ある程度定期的に、利害を気にせず、気負わず、軽めの雑談からずるずると長引く悩み事まで話せる相手がいる。
誰のことだかちょっと考えてみてほしい。

…と、あまり引っ張る気もないのだが、正解は美容師さんだ。

今日、久しぶりに髪を切りに行った。
ここ最近はショートが定着していたが、気分が変わって少しだけ伸ばしてみたくなり、前回からは2ヶ月近く間が空いていた。
この間のことを思い返すと、結構いろいろあったな…
必然的に、真面目な雰囲気の話が多い日になった。

今の美容室には、家を建ててから通い始めたので、もう6年近くになる。
女性ひとりでされているナチュラルで落ち着いた雰囲気の美容室だ。

私の髪を切ってくださる美容師さんもまた、お店の雰囲気にぴったりの、気取らず、それでいておしゃれな方。
年代は私よりほんの少し先輩、朗らかでとても話しやすい方なので、子どものことや仕事のことなど、安心してお話しできる。
ひとり目の職場復帰から、ふたり目妊娠出産、資格取得、退職や開業、夫の病気など、それはそれは多様な話を受け止めていただいている。

美容室の2時間は、髪だけでなく、心のもさもさしたものを落としてリセットできる、とても貴重なリラックスタイムになっている。
縁起でもないしそんなことはあってほしくないが、お店をたたむとでも言いださない限り、私は今後ずっと彼女にお世話になり続けると思う。

今でこそ生涯通いたい美容室を持てている私、実はかつて、美容室迷子だった。
街の大きな美容室(店長が中学の同級生…不意打ちに固まった記憶がある)、商業施設の中の美容室(何回か行ったものの記憶があまりない…)、結婚後は商店街の美容室(青山で結構有名だったんだよ雑誌載ってたよドヤ的な美容師さんにも出会った)、いろいろなところをうろついたけれど、なかなか「ここ!」というところに出会えなかった。

一番の要因は、美容師さんとの相性というか、コミュニケーションの取りづらさだったように思う。
思い返せば、美容師さんはそれぞれ頑張って(?)コミュニケーションを取ろうとしてくれてたのだが…
もともと陰キャの私には、美容師さんという存在そのものがどうしても対極のような感じがしていた。
その感覚はどんなに私がおしゃれしたふりをしても、髪を伸ばしたり染めたり巻いたりしたとしても、「ばれちゃう」んじゃないかなと勝手に劣等感を抱いていた。
そんなわけで、指名したいほど信頼できる美容師さんにも出会えず、私はいつも一見さんでい続けていた。

これを打破する出会いがあった。
彼女との出会いがなければ、私はまだ美容室コンプレックスを引きずって、全くリラックスできない2時間を、当たり障りない会話でごまかし続けていたかもしれない。

結婚前、ひとり暮らしをしていた近所に、おもしろいお店があった。
1階はカフェ、2階は美容室。しかもそれを、姉妹でされていた。
妹である美容師さんは年代も同じで、明るくておしゃれなのは今までの美容師さんたちと一緒だけれど、すごく親しみやすくて、ひたむきでかわいらしくて、不思議と距離の取り方を悩まずに済む方だった。
基本的に1組ずつしか予約を受けていないのも、安心材料のひとつだったかもしれない。
お姉さんのカフェもすごく雰囲気がよく、ごはんもお菓子もおいしかった。
夫と付き合っているときには、カフェにも美容室にもよくふたりでお世話になっていたし、結婚して別のところに住むようになってからも、少し距離は離れたけれど通わせていただいていた。

思い返すと、やれ彼氏ができた、プロポーズされた、新居が決まった、結婚式はこんな感じだ、子どもを授かった、家を建てることにした…と、盛りだくさんの期間に、私はこの美容師さんにいろいろな話を聴いてもらいながら、髪を整えてもらっていた。
決しておしゃれにはなれないままの私だったけれど、彼女が切ってくれると、今までより少し自分のことを好きになれていた。
それはカットの腕前とかセンスとか、それだけが理由じゃなかったと思う。

姉妹のこのお店は、ビルの売買の関係で残念ながら閉店を余儀なくされた。

その後、お姉さんは今は別の業種で活躍をされていて、妹さんは別の場所で美容師を続けられている。
家を建てたのち、私は今の美容室に通い落ち着いているが、夫は引き続き月に一度、車を走らせて妹さんのところでカットを続けている。
子どもたちも妹さんに髪を切ってもらっているし、私も今の美容室が取れないときには、時々お世話になっている。

美容室迷子だった私が、まさか美容師さんにある程度定期的に、利害を気にせず、気負わず、軽めの雑談からずるずると長引く悩み事まで話せるようになるなんて想像もしなかった。
家族でも友人でも仕事仲間でもない、こういう距離感にいる人って、すごく貴重だと思う。

~私の美容室コンプレックスを解いてくれたIさんと、いつも幅広く私の話を受け止めてくれるAさんへ感謝を込めて~

いただいたサポートは、夫のしあわせのためにありがたく使わせていただきます!