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バスケのデータ分析オンライン講座第4回 ~シューティングメトリクス~

こんにちは。

アメリカのバスケのデータ分析オンライン講座について、前回は第3回の講義のまとめを行いました。

今回は第4回の内容の振り返りや感想を記載していこうと思います。
内容としては、Shot SelectionとShot Makingを踏まえたシューティングメトリクスになります。
具体的な分析手法の話になり、表計算ソフトも利用する回になっています。
概論がメインだった1~3回とは少し毛色は異なりますので、予め把握いただいた上でお読みいただければと思います。

シューティングメトリクスについて(第3回の振り返り)

  • 一般的なシューティングメトリクスとして下記が挙げられる

    • FG%

    • FT%

    • eFG%

    • TS% = PTS / (FGA + 0.44 * FTA)

  • しかしこれらの指標は、シューティングメトリクスというよりスコアリングの効率性を測るメトリクスと捉えるべき

  • そこでシューティングメトリクスを下記の2つに分解して考察してみる

    • Shot Making(ショットを決める)

    • Shot Selection(ショットを選ぶ)

シューティングメトリクスの具体的な分析手法

まずShot SelectionとShot Makingの考え方についてお話します。
両者の意味合いはそれぞれ「良いショットを選択できているか」と「ショットを決めることができているか」を表すメトリクスになります。
FG%やeFG%、TS%などはそれらが混在していて、悪いショットを打たされているのか、単に決めきれていないのかが分からない状態になっているので、両者を分解して解像度高くショットを評価しようというのが目的になります。

では具体的な分析の流れに入っていきましょう。
今回はBasketball Referenceのショットエリアごとのスタッツを利用します(画像参照)。
% of FGA by Distanceが全ショット本数に対して、距離ごとのショット本数の構成比を意味しています。
(全ショット100本の内、3Pが39本打っていたら3Pの% of FGA by Distanceは39%になります)
そして、FG% by Distanceが距離ごとのショット成功率になります。

シューティングメトリクスに当てはめると、どのショットエリアを選んでいるかがShot Selection、エリアごとの成功率がShot Makingになります。

ショットエリアごとのスタッツ

ここから、上記のデータを使って具体的なメトリクスの計算方法を説明していきます。
計算方法の紹介に使うファイルを下記に載せておくので、ご自由にご利用ください(Google スプレッドシートを利用しています)。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1q8W7ya2VjYIF5uwJhM6wu7uW-JBX75a4gR0blFmuYLo/edit#gid=0

まず、良いShot Selectionができている状態を定義しましょう。
話を簡単にするために、どのチームにとってもショット成功率が60%のエリアAと40%のエリアBがあるとします。
上記のエリアに対し、チームXはエリアAで80%、エリアBで20%のショットを放ち、チームYはAで50%、Bで50%のショットを放っているとします。
この場合、Shot Selectionが良いのはチームXと言えるでしょう。
つまり、良いShot Selectionとは、成功率の高い(厳密には得点期待値の高い)エリアでより多くのショットを打てていることという意味になります。

それでは考え方が掴めたところで具体的な計算式の話に移りましょう

Shot Selection版

今回は上記画像のサンズ(一番上の行のチーム)を例に取ります。
サンズはショット距離が0-3ftのショット構成比が18.8%、3-10ftが22.2%…となっています。これは良いShot Selectionになっているのでしょうか?
参照する基準が必要になるので、今回はリーグ平均の構成比と比べましょう(最下部にあります)。
それと比較するとリーグの0-3ftの構成比は24.1%、成功率は68.8%となっており、ここに関してサンズは構成比が少ないため、(18.8% - 24.1%) * 68.8% * 2 = -0.073のマイナスになります。
(2を掛けているのは、2点のショットだからです)
一方で3-10ftの場合は(22.2% - 19.4%) * 43.7% * 2で0.024のプラスになります。
これらを各距離ごとに算出して(3Pに関しては3を掛ける)、足し合わせることで、リーグ全体の傾向を基準としたサンズのShot Selectionの良し悪しが見えてきます。
イメージがつきやすいように、上記で足し合わせた数値に100を掛けて、100回ショットを打ったときに何点分をShot Selectionで得している / 損しているかを計算した結果が画像の一番右の緑列になります。
サンズの結果は-3.70と、Shot Selectionの影響で100回ショットを打つと-3.7点分の損が出ている計算になります。
実際に構成比を見ると、期待値の低いミッドレンジでの構成比が多いので、Selection的には損をしているという形
になります。
(細かく把握されたい方はスプレッドシートをコピーしていただいて、セル内の計算式を追っていただければと思います)

それでは同じようにShot Makingも見てみましょう

Shot Making版。
構成比と成功率のデータは変わらず、右側でShot SelectionではなくShot Makingを算出しています

サンズはショット距離が0-3ftのショット成功率が70.9%、3-10ftが50.3%…となっています。これは良いShot Makingになっているのでしょうか?
ここでもリーグ平均の成功率と比べましょう(最下部にあります)。
それと比較するとリーグの0-3ftの構成比は24.1%、成功率は68.8%となっており、ここに関してサンズは成功率が高いため、(70.9% - 68.8%) * 24.1% * 2 = 0.010のプラスになります。
また3-10ftの場合は(50.3% - 43.7%) * 19.4% * 2で0.026のプラスになります。
これらを各距離ごとに算出して(3Pに関しては3を掛ける)、足し合わせることで、リーグ全体の傾向を基準としたサンズのShot Maingの良し悪しが見えてきます。
Shot Selectionと同様に、上記で足し合わせた数値に100を掛けて、100回ショットを打ったときに何点分をShot Makingで得している / 損しているかを計算した結果が画像の一番右の緑列になります。
サンズの結果は6.59と、Shot Makingの影響で100回ショットを打つと-6.59点分の得が出ている計算になります。
実際にリーグ平均と比較すると、すべてのエリアで成功率が平均を上回っており、ショットを決める能力に長けている
ことが分かります。

注意点として、Shot Selectionは構成比なので、データの性質上、同一チーム内でプラスとマイナスのデータが出てきます(すべての距離でプラスや、すべての距離でマイナスにはならない)。
なので、Shot Selectionを見る際は、Xという距離でマイナスが出ているから悪いという意味合いにはならないので注意してください。
なお、Shot Makingに関しては構成比ではないので、すべての距離でプラスになることもあります(サンズなど)。

ここまでが算出の一連の流れになります。
DF版も出すことができ、実際にスプレッドシートに"Defense"というシートも作っています。
(意味合いとしては、相手のShot SelectionやShot Makingを良化/悪化させられているのかが見えるデータになります)

今回はショットの距離をSelectionの分割軸として使いましたが、どのようなデータを使うかは分析の目的や手持ちのデータによって変わってきます。
ex)C&Sとプルアップに分ける / オープンショットとタフショットに分ける

チームで使うなら、戦術を踏まえてこのようなShot Selectionになるのが理想で、そこから外れているなら何かしら問題があると考えて要因を深掘るなどができそうですね(トム・ホーバスのスタイルなら3Pを重視するので、全体のx%は3Pになっているべきなど)

個人的には、どのチームも作りたいショットとして①リム周りのショット ②オープンの3Pショット ③FT があると思うので、これらの要素を分割軸に加えたものは汎用性が高くなるのではと思っています。

まとめ

個人の感覚ですが、今回のデータ自体はあまり活用方法が思い浮かばないです。なぜなら、リーグ全体としてはBad Selectionに見えるエリアでも、あえてそこを選択しているチームがいても不思議ではなく、そうするとそれはGood selectionとも言えるからです。
ただ、この分析フレームワーク自体は下記2点の面でとても有用性が高いと感じています

  • ショットの良し悪しを、Selectionの良し悪しとMakingの良し悪しに分解して見ることができる

  • Selectionに関して使えるデータが多様で、様々な面からの分析が可能

前者に関しては、普段のバスケの分析で意識することが少ない項目でかつ価値があり、しかも後者によって多様な観点の分析ができるので、この考え方を使えばこれまで見えていなかったことが見えるように感じています。
自身の信条として、良い形さえ作れれば後は時の運だと考えています(ロケッツがプレーオフで27本連続3Pを外したなど)。
そういう意味で、良い形を作るために必要なデータとなるShot Selectionという考えは自分の今後の分析にも役立ちそうと感じています。

第4回の講義内容のまとめは以上になります。
計算式だったり細かいスタッツが出てきて、これまでと異なるタイプのまとめになりましたが、楽しんでいただけたら幸いです。
第5回の講義内容はこちらです。

この講義に関する記事は下記マガジンでもまとめているのでぜひご覧ください

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