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"回帰"的復旧から、"前進"的復旧へ
今から9年前に、私は『リーダーのためのレジリエンス 11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン社刊)という本を書いた。この本の中には、回復・復旧・復興、あるいはレジリエンスという言葉と緊密に関連する、一つのユニークな言葉がある。
それは「バウンス・フォワード(Bounce Forward)」という言葉だ。
一般に私たちが、大きな逆境や困難から早く立ち直ろうともがく時に、その先にイメージするのは「元通りの姿」である。いわば"回帰的な復旧"を目指すことを思い描くのである。これを英語では「バウンス・バック(Bounce Back)」と呼んでいる。
バウンス・バックによる回復は、いわば私たち人間の本能に基づく行動であり、大切なことではある。しかし、「やれやれ、やっと難を逃れた。これでもう二度と同じ目には合わないぞ」だけでは、単なる逃避行動の結果かも知れず、逆境や困難の事実に蓋をして「元通りの姿」を目指しても、そのリスクは残り続けることになる。
「バウンス・フォワード」という回復力が着目される理由はここにある。逆境や困難な状況から単に立ち直るだけでなく、それらを乗り越えた先にあるものを目指す姿勢のことである。バウンス・フォワードは逆境や失敗から学び、成長して前進することを指す。
以下は逆境や困難に対する一般的なバウンス・フォワードの例である。
(1)ひどいパワハラに苦しめられた人
その経験から学び、心理的な回復やセルフエンパワーメントの方法を探求し、同様の状況に直面している他の人々を支援するための活動に取り組む。
パワハラを経験した人々に対するサポートやカウンセリングのための組織やコミュニティを立ち上げ、彼らの声を広めるための運動に参加する。
(2)大地震に見舞われて事業が中断した会社
災害復興のための支援を受けながら、ビジネスモデルやインフラの再構築を行い、より耐震性の高い施設やシステムを導入することで将来の災害に備える。
地域の経済再生に貢献するため、従業員の再雇用や地元の復興プロジェクトへの参加、地元のコミュニティとの協力を通じて社会的責任を果たす。
(3)戦争で一つの都市が壊滅的被害を被った自治体
国際援助やNGOの支援を受けながら、都市の基本的なインフラや公共サービスの復旧を進め、住民の安全と生活の再建を優先する。
戦争によって損なわれたコミュニティの再生を促進するため、和解プロセスや平和構築の取り組みを推進し、文化的な団結や社会的な統合を促進する。
「レジリエンス」が柔軟に回復した望ましい状態を表す言葉だとすると、「バウンス・フォワード」は、その回復に至る道すじを体現する言葉だと考えると分かりやすい。
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