20枚シナリオ課題⑧窓「内と外」

   

『内と外』

人物


斎藤真一(23) 大学生アルバイト
伊崎裕二(29) 劇団員
伊崎哲也(58) 伊佐木商事社長
井上卓己(47) ビル清掃会社社員
守衛

〇TKビル・外観
   オフィス街の中に建つ10階建てのビル。
   突き出し看板に縦書きで、「伊崎商事」の文字。

○同・8階・社長室
   T「8階・社長室」
   広々とした部屋。右手にある窓には、白いバーチカル・ブラインドが掛けられ、閉じた状態。近くにはパキラの鉢植えが置かれている。
   床には水色のカーペットが敷かれている。
   奥にはどっしりしたデスクがあり、20cm大の抽象彫刻のオブジェが置かれている。
   椅子にふんぞり返って座るスーツ姿の伊崎哲也(58)に、ノーネクタイの伊崎裕二(29)、デスク越しに封筒を渡す。

○同・屋上
   ヘルメットと緑のつなぎを着、様々な道具を提げたベルトとハーネスを装備した井上卓己(47)と斎藤真一(23)、パラペット(手すり壁)の前に屈み込み、丸環にロープを結びつけている。
   作業する井上の手元を真剣な表情で見つめる斎藤。

○同・8階・社長室
   伊崎、封筒から書類の束を取り出し、つまらなそうな表情で読んでいる。
   裕二、唇を噛んで伊崎を見つめている。

○同・屋上~外壁
   屋上からビルの壁面に沿って、2本の黒いワイヤーロープが垂らされている。
   腰の右側に大きなゴムバックを提げた斎藤、ロープを伝って後ろ向きに下りていく。
   井上、パラペットの前に立って、斎藤の様子を見ている。

○同・外壁
   ブランコ器具に座った斎藤、8階の窓の前にいる。
〇同・外壁・8階窓前
   窓向こうにかけられた白いバーチカル・ブラインドは閉じていて、中は見えない。
   斎藤、壁に足をついて体を支えながら、ゴムバッグから洗剤の容器を取り出す。

○同・8階・社長室
   伊崎、紙束を脇のゴミ箱に放り込む。
   裕二、目を見開いて
裕二「何すんだよ、親父!」
   伊崎、呆れたように裕二を見上げる。

○同・外壁・8階窓前
   斎藤、洗剤を満遍なく窓ガラス全体に吹き付けていく。
   
○同・8階・社長室
   窓の前に立つ伊崎、
伊崎「……いい加減、三文芝居なんてやめろ」
   伊崎、チェーンを引っ張り、ルーバー(羽)の角度を動かす。
伊崎「才能がない、と自分でもわかってるだろ?現実を見ろ。」
   裕二、片ひざをつき、ゴミ箱から紙束を取り出し、唇を噛んで、伊崎の後ろ姿を睨みつける。
   伊崎、ルーバーの間から、窓の外を見ている。
   裕二、立ち上がり、デスクの上のオブジェを掴むと、静かに伊崎に近づいていく。

○同・外壁
   斎藤、ワイパーを使って窓の洗剤を落としていく。
   ルーバーの隙間からパキラの葉が見える。
斎藤「ふう... ... 」
   手を止め、額の汗を袖口で拭う斎藤。
   ブラインドが揺れる。
斎藤「ん?」
ルーバーの間から手が突き出てきて、窓ガラスに貼り付く。
斎藤「へ?」

○同・役員室
   窓に手をついた伊崎、空いている方の手で、ルーバーを掴み、立ち上がろうとする。
   ルーバーの隙間から窓の向こうにいる斎藤の姿が見える。

○同・外壁
   ブラインドが大きく揺れ、ルーバーをかき分けて、伊崎が顔を出す。
斎藤「うわあっ!」
   斎藤、驚いてのけぞる。
斎藤「わ、わわっ、な、何!?」
   ワイパーが手から落ちる。
   斎藤、呆然と下を見て、
斎藤「... ...あー」
   伊坂、窓に張りつき、ガラスを強く叩く。
   斉藤、振り向く。
伊坂「(口パクで)た、す、け、て」
   伊坂、後頭部を左の掌でこすって自分の血を付け、そのまま窓ガラスにこすりつける。
斎藤「え、... ... 血?血糊?」

○同・役員室
   伊坂、肩で息をしながら、窓ガラスに爪を立て、向こうにいる斎藤を睨む。

○同・外壁
   斎藤、伊坂の顔を食い入るように見つめる。
   伊坂、窓ガラスを叩き、
伊坂「(口パクで)こ、ろ、さ、れ、る」
斎藤「こ、ろ、... ...? 」
   首を傾げる斎藤。
伊坂、苛立たしげに背後を指す。

○同・役員室
   伊坂、顔を窓ガラスに押し付け、
伊坂「(小声で)早く!何とかし…… 」
   裕二、音もなく伊坂の背後に近づき、伊坂の襟首を掴む。
   振り向いた伊坂の顔に恐怖が浮かぶ。
   無表情の裕二。手には、血のついたオブジェが握られている。

〇同・外壁・8階窓前
   伊坂が後ろに引きずられていくのが窓越しに見える。相手の姿は見えない。
   ルーバーが大きく揺れる。
斎藤、茫然と見ている。
斎藤「今の……」
   窓ガラスに付着した血を見、布を取り出して拭こうとするが、落ちない。
   
〇同・8階・社長室
   肩で息をしている裕二。
   足元には後頭部から血を流した伊崎が倒れている。
   裕二の手から、血の付着したオブジェが滑り落ち、床に転がる。カーペットに血が付く。

〇同・外壁・8階窓前
   斎藤、窓に顔を寄せ、中の様子をうかがうが、ブラインドが邪魔で見えにくい。
   斎藤、上と下を順番に見つめた後、ロープについた器具を操作して、下に降り始める。

〇同・屋上
   井上、下を見て、
井上「ん?おい、何やってんだ、お前!」

〇同・8階・社長室
   裕二、ルーバーをかき分けて外の様子を伺う。
   窓の外には2本の黒いワイヤーロープが下がっている。

〇同・入り口前
   地面に降り立つ斎藤。急いで、ビルの中に駆け込む。

〇同・8階・社長室
   裕二、スマホを操作し、どこかにかけ始める。

〇同・1階・エレベーターホール
   斎藤、息を切らせながら、エレベーターの扉上部の階数表示板を見る。
   階数表示は6階。
   守衛、斎藤の背後から近づき、
守衛「ちょっと、アンタ!」
   斎藤、舌打ちして奥の非常階段へと走り出す。

講師や同じクラスのメンバーからのコメント

は大道具だが、小道具と同じ描き方
サスペンスの入り口(起のシーン)としてとてもうまく描かれている←嬉
・社長室に何があるのかも丁寧にト書きに書かれているので、映像でイメージできた。タイトルのように、窓の中と外の様子がリアルに描かれている
・後でわかるという事でなく、斎藤が大学生のアルバイトという事を、この20枚の中でわからせるべき
・続きを見たい
(以下、クラスのメンバーから)
・緊迫感が出ていた
・裕二の動機や、見てしまった斎藤の動揺が表現されていた
・斎藤の抜けているところが面白い←(ちょっとコメディ風味に味付けしたいとは自分でも思っていた)
・どこに電話していた?
・時間軸がちょっとわかりにくい
・書類の内容についてもっと詳しく書いて欲しかった←(自分としては一応、演劇の企画書のつもりだった)
・自衛隊員とかでもない限り、スムーズには降りられないのでは?

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