徒然読書日記~『暗幕のゲルニカ』

 原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』を昨日から読み始めた。

 〈ゲルニカ〉が制作されたきっかけとなった、スペイン北部の町、ゲルニカの爆撃。

 そして、21世紀、9.11をきっかけに始まった、「報復」としてのアフガン戦争と、さらにイラク戦争・・・。

 どちらにおいても、犠牲になったのは、市民たちだ。

 〈ゲルニカ〉のモノクロームの画面を思い起こすと、画面全体から悲鳴や轟音が聞こえてきそうな気がする。

 まだ話の最初の方だというのに、ずん、と胸に迫ってくるものがある。

 無差別爆撃への、巨匠ピカソの静かな怒り。

 そして、21世紀のニューヨークで暮らすもう一人の主人公・瑶子は、9.11で夫を失い、その後、戦争へと突き進むアメリカを強ばった目で見つめている。

 今ちょうど、「イラクへの攻撃」が、国務長官によって宣言されたところまできた。彼の背後、〈ゲルニカ〉のタペストリーには暗幕がかけられていた・・・。

 主人公と共に、胸のあたりが冷たくなるのを感じている。

 歴史は繰り返す。

 固有名詞などの細部を取っ払ってしまえば、似たような構造の事件がいくつ現れるだろう。

 以前、『映像の世紀』を見ながら、思ったことだ。

 時代の目撃者として、ピカソは巨大なキャンバスに向き合い、瑶子は〈ゲルニカ〉を展覧会に持ってこようとする。

 アートを通して、戦争と、そしてそれがもたらす負の連鎖と戦おうとしている。

 さて、続きはどうなるやら。

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