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何度も何度も

深夜目が覚めると、わたしは涙を流していた。

またか、と深いため息をついて布団を被る。


わたしは、何度も何度も同じ夢を見る。
とても愛しい人に別れを告げられる夢。いつまでも付きまとう悪夢。

別れなど1度告げられれば十分だ。それなのに意地悪な神様は、何度もわたしにこの夢を見せるのである。
シチュエーションは様々。しかし最後は決まって彼に別れを告げられる。

驚く程に早く脈打っていた心臓をやっとのこと落ち着かせると、外から鈴虫の鳴き声が耳に入ってきた。気がつけば夏が終わって秋が訪れようとしていた。
夏、彼といた最後の季節。気が付けばあの夏から一年以上が経過している。
こんな夢を見るのも最初のうちだけだと言い聞かせて日々を過ごしていたが、今でもかなりの頻度で別れの夢を見るのだ。

1年も経ったのかあ。1年前の今頃は本当に自暴自棄になって辛かったなあ、と、振り返って無理に笑ってみる。ズキンと強く痛む胸。ああ、わたしは一体いつまでこうなのだろうか。

色んな後悔の波が襲いかかる。全て後の祭りなのだ。わたしはなにひとつ上手くやれなかった。藻掻くわたしを、あの夏がいつも近くで嘲笑っている。

結局何故わたしが彼のことをここまで強く想えるのかは分からないまま、今日までを過ごしてしまった。そして同じように明日からも過ごしていくのだろう。またきっと彼は、今日と同じように夢に現れる。またきっと彼は、優しい目をして、別れの言葉を放つのだろう。

こうして日々を消費しているうちに、恋を怖いとまで思うようにもなった。なのにやはり人肌が恋しくなることもある。人の心理とはどうしてこんなにも複雑なのだろうか。恋も心理もわからないことだらけである。

わからないのに恋を歌っているのか。いや、わかりたいから恋を歌っているのだろうか。
それすらも定かではないが、わたしの心はいつもメロディに乗って、愛しさと苦しさが混じったぐちゃぐちゃの感情を、不器用に叫んでいる。


うーん、またあれこれと考えてしまう前に早いとこ眠りにつこう。明日はライブだ。

次はもっと幸せな夢が見られますように。

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