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神戸の春の味

毎年3月の半ばごろFacebookで神戸の友人たちの投稿に「いかなご炊いた」という文字を見つけると「春やなぁ」と思う。
関西の人ならこの時期の定番のご飯のおともかと思っていたら、大阪出身の夫はあまり知らないと言っていたし、東京の友達に
「いかなご知ってる?」
と聞くと
「え?いなご?」
と聞き返されたときはびっくりした。聞いたことも食べたこともないとのこと。
全国区ちゃうかったん、いかなご!こんなにおいしいのに、なんでみんな知らんの?もっと広がればいいのに。

いかなごのくぎ煮は、3・4cmの魚の佃煮で、神戸市垂水区が発祥の地と言われている。
砂糖・醤油・酒・ミリンなどで味付けた、甘辛い味で、私的ご飯のおともランキング一位だ。
甘辛い味付けに、くるみと一緒に炊いてあったり、生姜が入っていたり、ゆずが入っていたり、山椒が入っていたりと、それぞれの家庭の味付けになっている。
3月半ばころになると、各家庭それぞれの味付けで作られる。
いかなご漁が解禁になったとテレビや新聞で報じられれば、スーパーに列をなして開店前から並んで、みんな何キロも買い求めるのは神戸では有名な話。
出来上がったものがお店でも売られているけど、いかなごは買うものではなくて、あっちこっちのお宅からいただくものだった。
西宮出身の母は作ったこともないし、やはり神戸に来るまではいかなごの存在も知らなかったと言っていた。
「これは○○さんとこの、こっちは△△さんからいただいたやつ」
いろんな家庭の味が食卓に並んでいた。
私の友人たちも毎年炊いている人が多く、春の楽しみを送ってくれている。
今年もその中の一人の友人からメールが届いた。
「いかなご送ったよ。ゆずと山椒の二種類。ゆずの方にテープ貼っておいたから」と中身を開ける前に私が触ってわかるように工夫してくれたことも嬉しい。
メールには続きがあった。
「リンゴケーキも焼いたから入れてあるよ」
去年もいかなごと一緒にリンゴケーキを入れてくれていて、しっかりシナモンのきいたリンゴに甘さ控えめのケーキがとてもおいしかったことをよく憶えている。
届いた荷物を開けて、家族で「春の味やね」と言い合った。
一緒に入っていたリンゴケーキを開けてみると、四切れ入っていた。我が家は三人なのにどうしてかなと思いながら、彼女にお礼のメールを書いた。
「リンゴケーキ、一つはお母さんにやから。あずちゃんが食べてくれてええからね」
と書いてくれていた。母の事を思ってくれた気持ちが嬉しかった。
「お母さん、よかったなぁ。めっちゃおいしいリンゴケーキいただいたよ。私が代わりに食べるわ」
と言いながら、家族を送り出し一人でコーヒーと一緒にいただいた。
もちろんいかなごは夜ご飯のときに三人でいただいた。ご飯にのせて食べたら、口の中にご飯の甘みと歯ごたえのある甘辛いいかなごの春の味が広がった。
神戸の大好きな春の味覚をありがとう。

タイトル画像サポート、ありがとうございました。
いかなごを送ってくれた友人の写真を使わせてもらいました。ご飯にのったいかなごの写真です。

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