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【ワイン資料館】メルシャンの「源流」、第二醸造場の建物と最古のワイン

はじめに

 甲州市勝沼にはワイナリーが多数点在し、ぶどうの収穫期の9月より仕込みを始めます。そして11月に新酒が解禁となると一段と賑わいを見せます。そんな勝沼のぶどうとワイン醸造の歴史を伝える施設として「宮光園」「ワイン資料館」「ぶどうの国文化館」があります。
 そのうち今回は「ワイン資料館」を紹介します。ワイン資料館は、宮光園の第二醸造場の跡の建物です。また第二醸造場の跡は現在はシャトーメルシャン勝沼ワイナリー(以下、メルシャン)の一部となっています。
 なお、宮光園、ぶどうの国文化館については拙稿をご覧ください。

メルシャンへの系譜

 メルシャンの入り口には宮光園の創業者、宮崎光太郎(1863年~1947年・元治元年~昭和22年)の胸像が立っています。
 宮崎は「甲斐産商店」を経営し、大黒葡萄酒、甘味料のエビ葡萄酒で成功を収めます。社名も「大黒葡萄酒株式会社」「オーシャン株式会社」とその時代の主力ブランド名にあわせ改称しています。
 しかし、1962年(昭和37年)には三楽酒造に吸収され「三楽オーシャン」と改称します。その後も吸収合併を経て「メルシャン」のブランド名を取得し、1990年(平成2年)には社名をメルシャンとします。さらに2006年(平成18年)よりキリンホールディングスの子会社となり現在に至ります。

「宮光園」創業者宮崎光太郎の像

宮崎第二醸造場

 資料館の外観は土蔵の作りをしています。内部は木造の柱と梁で西洋風のトラス建築をしています。こちらより古い宮崎第一醸造場は現存しないため、この第二醸造場の建物が現存する日本最古の木造ワイン醸造所になります。

資料館入口
内部は木製の梁がよく分かります

ワイン資料館

 宮光園の資料が勝沼のワイン造りの歴史と宮崎光太郎の商いに関する内容であるのに対して、こちらはワインの造りについて、古い醸造器具を展示し、地下貯蔵庫に入ることができます。またメルシャンの歴史が紹介してあるのが、企業系の資料館と感じさせます。
 入館無料となっています。常駐の受付スタッフはいなくて自由に見学するスタイルです。見学者の数は向かいの宮光園よりも多いです。

ワイン造りとメルシャンの歴史を紹介
前身となる大黒葡萄酒、エビ葡萄酒の看板

 メルシャンの歴史の紹介やケースの資料を眺めながら進むと蔵の奥となり少し薄暗くなります。
 ワイン造りの流れが分かるボードがありますので、作業の流れをイメージして道具や貯蔵施設を見ると分かりやすくなります。工程は収穫から始まり、粉砕、圧搾、発酵、熟成、瓶詰の順となります。

昔と現代のワイン造りの流れ

 まずは、収穫したぶどうを粉砕します。当時の木製の粉砕機がありました。

破砕機と大黒葡萄酒の木箱

 次に、圧搾です。受液槽という破砕溜めに流し入れることで、流れ落ちた果汁を受け止める役割を担います。受液槽に溜まった果汁は試桶で清水桶に運び発酵させることになります。
 こちらは、高野正誠と土屋龍憲が帰国後日本で作ったものです。

フランスで見た高野正誠と土屋龍憲が日本で制作したもの

 発酵室です。たいへん広くなっていて、発酵用の桶ともに古い史料を展示しています。

最古のワインが右側樽の展示ケースの中に

地下貯蔵庫

 地下の貯蔵庫で熟成させます。発酵が終わったワインを樽に入れて横にした寝かせます。この貯蔵庫の跡には2800リットル入りの樽が19個並びます。貯蔵庫として2010年(平成12年)まで使われていたそうです。ただし、この貯蔵庫は昭和初期に作られたもので、建設当初にはまだ無かったものです。 

樽ひとつから4000本のワインが作れます、今は中身はありません

 最後に瓶詰をして完成します。濾過機、手押しポンプ、コルク打栓機が展示してあります。

手押しポンプとコルク打栓機

現存する最古のワイン

 ワイン樽を使ったショーケースには現存する日本最古のワイン2本が展示されています。土屋龍憲とともにフランスへ渡った高野正誠の高野家の蔵から発見されたものです。

最古のワインの解説
残念、ピンぼけです

おわりに

 以上、ワイン資料館を見てきました。受付もなく自由に出入りして見学できるしまうのに古い貴重な資料もあり、建物もよく保存されています。
 向かいの白い現代の建物は、ワインギャラリーとして、テイスティングカウンターとショップになっていてます。常時20種類以上のテイスティング(有料)ができるます。お気に入りの一本に出会えるかもしれません。

右の建物がショップなど、正面に進むと宮光園の観光ぶどう園の跡


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