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【山梨県立美術館】キュレーターズ・アイ「岡本直浩展」を見に行く

はじめに

 山梨県立美術館のエントランスロビーを利用した「ギャラリーエコー」にて、年数回キュレーターズ・アイというミニ展覧会が行われます。キュレーターズ・アイは、主に山梨ゆかり若手作家の作品を紹介するものです。
 「岡本直浩展」(2023.4.25~6.25)の岡本直浩氏は県内で農家を営みながら、クスノキを使った彫刻作家をされています。

山梨県立美術館本館
エントランスロビーを利用した「ギャラリーエコー」

失われた木喰の再現プロジェクト

 岡本直浩氏といえば、2018年(平成30年)に木喰生誕300年木喰展(身延町なかとみ現代工芸美術館)にて披露された木喰の仏像再現プロジェクトの作家さんでした。特集番組で見た桃畑の中でノミを振るう姿が印象にありました。
 チラシで拝見したときは同一の作家さんであるとは全く気づきませんでした。そのくらい木喰彫刻の再現と氏のオリジナル作品に違いがあったからです。
 再現プロジェクトでは、木喰最晩年(91歳)の作と伝わる7体の木喰仏のうちの1体である子安観音像の再現を行ったものでした。この7体の木喰仏は甲府市の教安寺にあったもので第二次大戦末期の甲府空襲(1945.7.7)により焼失したものでした。再現プロジェクトの模様は山梨放送(YBSテレビ)にてしのはらともえさんが出演し放送されました。

桃畑でノミを振るう岡本氏 出典 : 身延町HP
再現された子安観音像 出典 : 身延町HP

 再現された子安観音像は身延町の木喰の里微笑館に保管展示されています。
 さらに翌2019年(令和元年)、続再現プロジェクトにて全国各地の焼失した木喰仏のうち5体を選定して再現をしています。こちらも木喰の里微笑館に保管展示されています。

岡本直浩展

 キュレーターズアイということで、チラシの裏面には学芸員による詳しい解説があります。それによれば、岡本氏は山梨市の出身で東京藝術大で彫刻を学び、クスノキつかった木彫り作品を制作しています。

チラシは《溶暗》の顔部分
学芸員からの岡本氏の解説

 エントランスの会場に9点の作品が並びます。その中でも一番目を引くのが、等身大の人の大きさをした《溶暗》という作品です。見る角度によって表情が変わります。

《溶暗》2023を中心に作品が名並ぶ
《溶暗》は見る角度で印象が変わる

 《溶暗》は葉など植物で人を表現しています。また、全体的に空洞で仕上げられています。ぶどうの房を耳から下げているのですが、よく見ると髑髏の房であるなど、味方により少し怖くなります。しかし別の角度から見ると、優しい表情になったりと不思議な作品です。

《溶暗》2023

 ほかにも植物をモチーフに人間と組み合わせた作品です。
 《推想》のみ素材はエノキで、ほかはすべてクスノキを使用しています。

《推想》2019
《朧気》2023
《流透》2015
《風聞》2020

おわりに

 植物や自然、風などを取り入れた作品でした。岡本氏は農家ゆえに自然と向き合う日常の中で、沸いてくる印象を作品に投影しているのではないかと推測しております。
 木喰の彫刻家とだけ知っていたのですが、今回のミニ展示に思いがけず岡本氏の作品世界に触れることが出来ました。


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