お店がいつも開いてることが大事ってわけでもないって話
前回の記事とはある意味真逆の話だが、友人の紹介でとある飲み屋にひとりで行った。飲み屋といっても、食べ物は軽いつまみとカレー(でも手作りで野菜中心)しかなく、お茶とおやつの人も楽しめて、昼過ぎから夜までやっているようなお店だ。この枠組みからしてユルい。笑
まあ初めての人は入ってこないような場所にあるので、誰かの紹介?というところからボチボチと話をした。接客!というよりは、友達の友達かあまあ遠いところからよく来たね、という気楽な感じだったが、かといって馴れ馴れしすぎる感じもなかった。私のあけた瓶ビールをちょっと飲んでもらったりしながらだらだらと話した。いろんなものがごちゃごちゃとあるが、おそらく誰かからもらったかわいいお土産や、自分で大事にしている本やCDなんだろう。その雰囲気が、店というより人の家に来た感じでくつろげた。今日炊飯器が届いて明日から使うのが楽しみなんだよね、炊き上がった時どんな音がするかな〜といって急に私の前に座って説明書を読んだりしていて。
「まあお店も14時からってことにしてるけど、今日は行きたいところもあったからちょっと遅めにあけたんだよね。誰かに雇われたりしてるわけじゃないし、ひとりでやってるんだから、自分の好きにしたいしさ。冷蔵庫も家庭用の大きいやつを使ってるし、コンロもカセットコンロとIHしかないし、でもその範囲でやるって決めたからそれでいい。無理して食べ物の種類増やして、仕込みとか楽しくない感じで続けるのが嫌だから。」
たくさんの飲食の現場や、他にもいろんな仕事をしてきた人が、ようやく自分の理想をかたちにして始めた店だ。でもそこには、とにかくお店をおしゃれでかっこよく見せたいとか、話題になってどんどん人が来て欲しいからこんなメニューを作ろうみたいな、よく言えば野心、悪く言えばスケベ心がまったくなかった。彼女は彼女のやりたいことから逸れないように、それ以上でも以下でもないところを日々見極め、ちょうどいい加減で無理なく店をやっているのだった。
それがけっこう難しいことなのは、ある程度大人になれば誰でも知っているんじゃないかと思う。私たちには、儲けたいとか良く思われたいみたいな欲がある。でもそれを一番下のところにおいて、自分が自分らしく仕事するためのラインを最重要ポイントにしているところ、ものすごく品があると思った。そんな人がやっている店ならたまに行って閉まってても仕方ないか、と思えるだろうし、そんなゆるゆるのあの店で一杯飲もうか、と思うことが、毎日まじめにきりきりと忙しくしている人の心の拠り所に必ずなる。
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