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【感想】映画『ミッシング』

先日『ミッシング』という映画を見に行き、本作を鑑賞した時、私の中の石原さとみさんという一人の役者さんにおけるイメージ像の全てが一変されるほどの演技力に圧倒されたことを記憶しました。
『ミッシング』という作品の物語は、愛する娘の美羽ちゃんという小さな女の子の失踪によって、母の沙織里はネットでの誹謗中傷や世間の憶測による言動によって、極限まで精神が追い詰められていきながら、夫との温度差やテレビ局側の視聴率獲得を目的とした意識、弟に向けられた疑いの眼差しなど、暗闇から光が照らし出される時を待ち続けた先にあるものは一体何かを問い、絶望の中から光を見出だして向き合っていく物語となっています。
今年見た映画で日本の女優さんの中では『ミッシング』の石原さとみさんの演技力はある意味凄みが有りすぎて、他の演者さんたちよりも、ひときわ群を抜いているものがあり、殻を破り捨てた石原さとみさんは『ミッシング』の中で間違いなく覚醒したものだと感じました。
物語の中盤で、警察署から電話がかかってきた‘‘あのシーン’’での演技は震えるぐらい凄いものがありました。
娘を失ってからの後悔や苛立ちの中で失踪した娘を懸命に探し続ける夫婦像はまさにリアリティがあり、現代社会の闇をまさに描いていて、ネットでの人たちは容赦なく、夫婦の痛みに無関心であり、どうしてこれほどまでに関係のない人をここまで痛み続ける必要があるのかと苦しくなる場面も見受けられました。
辛い過酷な現実の中でも、彼らの為に救いの手を差し伸べて捜索の手助けをしてくれる人の優しさにも触れられたところも良かったなと感じました。
視聴者の興味を優先するテレビ局や熱を感じない弟や夫との価値観も少しずつズレが生じることにより、沙織里の心は次第に壊れていく。
周りの温度差や他者との関わりを繊細に描きながらも、どこかに希望の光が何度か差し込まれる様子に見ている側の私たちの心も救われる気がしました。
失くしたものをもう一度取り戻すことは難しい、そして一度失くしてしまった喪失感、絶望感を埋め合わせる為の空白はどのように足掻いても埋め合わせることは難しいものがあると本作から実感させられるものがありました。
生きる為には、希望は誰しも必要であり、希望を失ってしまった人はそこから這い上がることは非常に困難であるし、自分を責め続けることもあると考えさせられるものがありました。
『ミッシング』は間違いなく、石原さとみさんの代表作であり、演技力の限界値を越えたものが本作には込められていると感じさせられました。

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