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【‘‘新・時間術’’概論】

-『限りある時間の使い方』から『YOUR TIME』『限られた時間を越える方法』まで-

Ⅰ.

これまでに読んできたタイムマネジメントやライフハックによる技術は生産性を見落とす罠であるということを時間術について色々と調べていくうちに分かってきたことがありました。
効率性を重視するがゆえに、時間を自分への投資として考え、時間を自らがコントロールしようと努めることがあります。
制約を設けることにより、ストレスフルになってしまい、人生は次第に孤独になっていく。
オリバー・バークマンの著書『限りある時間の使い方』では、‘‘制約のパラドックス’’と呼んでいる。
本書では、限られた時間には限界があるということを認めて受け入れることで、人生はずっと充実したものになるということを説いている。
やるべきタスクというのは、こなしてもまた新たなタスクが生まれて全てをこなすことは不可能であるという現実を受け入れることが何よりも重要であるということを理解しました。
私自身がバークマンの著書の中でも特に印象的で考えさせられた一文があるので、ぜひとも引用したいと思います。

「ほかにも価値のある何かを選べたかもしれない」という事実こそが、目の前の選択に意味を与えるのだ。
これは人生のあらゆる場面に当てはまる。
たとえば結婚に意味があるのは、その他の(ひょっとすると同じくらい魅力的な)相手を全て断念して、目の前の相手にコミットするからだ。
この真実を理解したとき、人は不思議な爽快さを感じる。
「失う不安」のかわりに、捨てる喜びを手に入れることができる。

『限りある時間の使い方』P.86より引用。

引用文から窺えることは、私たちは何かを手に入れようとすれば、必ず何かを手放さなくてはいけないということを受け入れていないことが分かります。
有意義な時間を過ごす為にも、スキマ時間さえもタスクを詰め込んで、時間によって自分が縛られていることを理解していないと感じました。
つまり、私たちは時間というものをツール化していて、ツール化された時間を上手く使い、使い方によっては本なら要約サイトや動画、映画なら倍速視聴を行い、作品を楽しむ価値を消失させて、必要な情報だけをインストールすればいいという考えに陥ってしまっているのではないかと考えさせられることがありました。
有限的な余暇をどのように過ごすのかは、私たちの自由でもある。
だが、決して時間によって私たちが支配されてはいけないものだと感じました。
時間は私たちの思いのままに、止まってはくれないものだし、早めてくれないものでもあります。
時間の流れに身を任せて、限りある時間の中で今の私に出来ることは何かということを考えるきっかけを与えてくれた一冊となりました。

Ⅱ.

一冊目の『限りある時間の使い方』から、私が次に手に取った本は、鈴木祐さんの『YOUR TIME』という本であります。
『限りある時間の使い方』にも通じて言えることは、スケジュール管理やToDoリスト、タイムログ、締め切り設定などのテクニックはどれも、決定的な効果は得られないという点があります。
『YOUR TIME』で特に大切にしていること、それは‘‘時間感覚’’によるものであります。
時間という固定観念から外れた、時間感覚という観念によるもの。
時間感覚には、人によって個体差があるということ。
個体差に合わせて、時間感覚を書きかえることにより、これまでの時間術の概念が覆されるものがあります。
『YOUR TIME』では、主に作者の科学的見解とそれに伴うメソッドにより効果が発揮されるものになっています。
本書で紹介されている‘‘時間感覚タイプテスト’’については省略しますが、タイプテストによっては自分がどのようなタイプに分類されるのかを理解することが出来ます。
生産性を重視することで得られるもの、それは幸福度によるものだと本書では主張されています。
そして『YOUR TIME』で特に重要な箇所は‘‘予期’’と‘‘想起’’による考え方であります。
予期とは次に起きる未来のこと、想起とは前に起きた過去のことを指しています。
私たちは予期と想起を調整して現在の時間の流れを体感している。
予期や想起に合わせたそれぞれの技法はどれも感慨深いものだと感じました。
効率性を重視するがあまり、創造性というものが損失してしまう恐れがあるということは深く考えさせられるものがありました。
時間感覚というメインテーマから浮かび上がってくるもの、それはフレームワーク思考によるものだということを感じました。
時間による考え方、体感というものは人によっては様々である反面『YOUR TIME』におけるタイプテストがなければ、自分がどのようなタイプに属するのか、もしくは時間感覚というものの存在を知ることのないまま、時間を浪費する日々を送っていただろうなと考えさせることがありました。
『限りある時間の使い方』から『YOUR TIME』までを読み終えた今、時間による概念図は私の中で新たにアップデートされました。

Ⅲ.

一冊目に取り上げた『限られた時間の使い方』ではタイムマネジメント・ライフハックの効率性、生産性の否定、二冊目の『YOUR TIME』では時間感覚による予期と想起、それに付随する実践的なメソッドが主に記されていました。
三冊目のリサ・ブローデリックの著書『限られた時間を越える方法』では、『YOUR TIME』に通じますが、時間は実体ではなく、時間の概念は感覚だということを主張している。
時間とは、つまり物理的なものであるのと同時に感覚的なものでありつつ、ゴムひものようにいくらでも伸縮性があるということが述べられている。
本書では、これを‘‘超越した感覚’’と呼んでいるが、この超越した感覚というのは、端的に言えば覚醒した状態、つまりはゾーンに入るということである。
このような感覚的領域、超越した時間を越える方法というのが、自分自身の思考や行動に気を配るということ、マインドフルな状態へと持っていくことによって意図的に時間の流れをゆっくりと過ごすことも可能であります。
その為に重要なことは、本書でも紹介されていますが、超越した感覚における‘‘脳波’’によるものです。
脳波はメンタルトレーニングによって、意図的にその時に応じて自身の脳波の状態へと変えることが出来ます。
そして、変えられた脳波から、時間と空間内を捉えることによって深い洞察力が備わり、形面上学的に時間をコントロールすることも可能だということが分かりました。
脳波を意識的に変える為には、本書で紹介されているメンタルトレーニングを実践して継続していくまでには時間を要するものだということを考えさせられ、とても勉強になりました。
私たちは、この長い人生にとって時間は限りあるものであるし、その分貴重な存在であるということが『限られた時間の使い方』『YOUR TIME』『限られた時間を越える方法』から、改めて時間の概念について知見を深めることが出来ました。
私にとっての時間というものの概念は、タイムマネジメントやライフハックのような効率性、生産性を重視した方法論を取りながら、仕事やプライベートでもこなしてきたことを振り返り思いました。
現時点における時間術、ネオ時間術とも呼べる時間術はこの三冊であり、時間術についての新しい概論を記すことが出来てとても満足しています。


【参考文献】
『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン/高橋璃子=訳  かんき出版
『YOUR TIME』鈴木祐 河出書房新社
『限られた時間を越える方法』リサ・ブローデリック/尼丁千津子=訳 かんき出版


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