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【‘‘遊離の砦’’】

群生の中で、心はもう一つの私として、それは心象として浮かび上がった。
憐憫を感じながらも、月明かりに照らし出された妖艶な声色が鼓動して伝わる刹那。
遊離する砦に佇む少年は過去と未来の象徴でもあるかのように感じた。
どこかで聴いたことのある音楽や映画も、それは過ぎ去ってしまった産物でしかないものだと思えた。
断片的に記された、いくつものメモが壁に貼られている光景を眺めていた。
脈絡のない言葉の一つ一つを噛みしめながらも、私の心は飲み込まれてしまうような感覚を覚えた。
好きなものも、嫌いなものも、感情と混ざりあってしまって、何もかもがどうでもよくなることさえある。
生まれ育った故郷に帰ると、町の人たちも何も変わっていないことに気付いた。
子供の頃によく行った駄菓子屋やレンタルビデオショップは、今はなくなってしまって、スーパーや雑貨屋に変わってしまっていて、少し寂しさを覚えたりもしたが、帰る場所が今はもう違うことを思い出したことでより虚しさだけが残ってしまった。
King Gnuの曲を聴きながら創作をしたり、映画を観ながら別の物事に気を取られ内容が筒抜けになってしまったり、本を読んでもSNSの方が気になって読書する時間が削られてしまったりと、全てが中途半端で曖昧だと思えた。
無価値なものというのは、人生において時には必要なものであるということを考えながら、砦の向こう側にいる私は今もこうして、何かしらのものを書いていることに違和感を覚えながらも、錯綜する意識が交わる中で、新しいものを創ることに幸せを抱いた。

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