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【感想】映画『蛇の道』

先日『蛇の道』という映画を見ました。
本作は、1998年に上映されました『蛇の道』のリメイク版であり、角川シネマコレクションというYouTubeチャンネンルで期間限定で公開されていたので、リメイク版を見る前にこちらを鑑賞しました。

物語の概要としましては、宮下という男が殺された娘の復讐に彼に手を貸す謎の男の新島という男の正体を追っていきながら、彼の瞳の奥にある狂気を映画内から感じられ、物語の後半で新島の発した‘‘お前が一番嫌いだ’’というセリフで全ての真実が明らかとなるのですが、クライムサスペンスものとして大変面白く楽しめました。
娘を殺した容疑者の復讐に迫っていくのだが、一向に犯人へと近付くことが出来ないもどかしさを感じられました。
カメラワークによるものだが、黒沢清監督独特の世界観で住宅街を車が走るシーンやテレビに映し出され、宮下が何度も読み上げる犯行内容、それに加えての新島の冷静さはとても不気味な雰囲気も感じられました。
娘の復讐者としての宮下は怒りと苛立ちにより、より狂気的に駆り立てられた存在として描かれることによって物語がより立体的に浮かび上がってきます。
タイトルの『蛇の道』という意味を後に考えてみると、とても秀逸だと感じられました。
そして、オリジナル版から本作のセルフリメイク版における『蛇の道』とオリジナル版を比較した時、第一にオリジナルの映像表現の難解さは削ぎ落とされ、柴崎コウさん演じる小夜子の復讐心の意図が明確化されているという印象を受けました。
更に、彼女の仕事である心療内科もきちんと機能しているところも見逃せないところでした。
カメラワークが捉えるアルベールと小夜子の復讐から生まれる悪が交錯し合った先の結末と小夜子の瞳が宮下とはまた違ってまさに蛇の瞳であって、彼女の狂気さも窺えられました。
セリフ自体も忠実さがあり、復讐を手伝う新島を女性に変更した事、舞台をパリに変えたところもまた本作の良さだと感じられました。
『蛇の道』はオリジナルもリメイク版も、作品の思想的には違いがあり視点を変えて考えてみると、どちらも傑作だったことは間違いありませんでした。

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