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【感想】映画『ナミビアの砂漠』

『ナミビアの砂漠』という映画を見ました。
ナミビアは、恐らく下半期ベスト10に入ってくるだろうと思うほどの名作でありましたし、これまでの邦画史においても『ナミビアの砂漠』は重要な位置に属する作品だろうと感じました。
『ナミビアの砂漠』でのカナという女性は、主演女優の河合優実さんしか演じることが出来ない特別な人であることを本作から感じられ、現代において自分の存在意義や価値を見出だすことはなかなか難しいことだし、先が見えない世の中であっても、今しか出来ないことというのは必ずあるものだと感じました。
恋人であるホンダからハヤシという恋人に変えて、彼女の内面や生活環境もまた変わっていく。
脱毛サロンスタッフとして働きながら、趣味や将来の夢もなく、毎日をただなんとなく生きている彼女の姿は、今を生きる若者世代の感受性に共感するところがいくつもあるのではないかと感じました。
自己矛盾を抱えながら、自分や相手のことを責めたり、傷つけたり、モヤモヤとした感情を抱えながら生きている女性像の描き方は巧みでした。
山中監督と河合さんの若い女性たちの化学反応で生まれた『ナミビアの砂漠』という作品から、タイトルのナミビアの砂漠とはどういう意味なのかをずっと考えていました。
ナミビアの砂漠とは広大で何もないことを示しており彼女の姿と重なるものがあると感じました。
こうした作品は、若い人の独自固有の感受性だからこそ描けるものであり、若き才能に感服させられる作品でもありました。
『あんのこと』や『ルックバック』では見れなかった女優、河合優実さんの演技力というのは底が見えないものだと感じました。
自由奔放で見切り発車なカナの性格とカナに振り回される彼氏のハヤシの描かれ方はとても面白くて、とてもリアリティのある現代の若者の姿として象徴されています。
ラストに描かれる、自分の姿を見つめるカナのメタ視点の構図は客観性からカナという女性がどのような人間だったのかということを改めて再認識させられるものがありました。
『ナミビアの砂漠』という良い作品に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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