見出し画像

【最近、読んだ本紹介】23年ver.

[まえがき]

最近読んだ書籍の中でも特に面白かった本、主に今年出版された本を中心にnoteで5~6冊の本を取り上げて紹介してみたいなと思い記すことにしました。
ぜひ、興味のある本を一冊でも手に取って読んで頂けたら幸いです。


[文学・小説]

■一冊目

カリブ海に浮かぶ、ブラックコンチ島という架空の島を舞台に漁師のデイヴィッドは、人魚であるアイカイアと出会う。
デイヴィッドは、人魚である彼女に惹かれて彼女と出会った岩場へと通うことになる。
だか、ある日、釣り大会でアメリカ人の親子がアイカイアを釣り上げ捉えられた彼女を救出し、家へ連れ帰り彼女の世話をしていくと、次第に人間の姿へと変化していく。
そして、彼女が人魚なのもある理由があり、デイヴィッドとアイカイアは互いに心を通わせることになる。
人間と人魚の交流から描かれる無償の愛から、『マーメイド・オブ・ブラックコンチ』という作品は、ファンタジー要素もあり、かつ歴史要素もある、純愛物語だということが窺えます。
カリブ海地域による背景から、その当時の植民地支配や奴隷制度などの問題なども作品に内包されており、作者であるモニーク・ロフェイの本作に込めた思いを通して、新しい人魚伝説から生まれた様々な解釈を読み解くことが出来る物語だと感じられました。


■二冊目

ヘンクという中年男性は、老犬のスフルクと静かに暮らしていたある日、スフルクを介抱してくれた一人の女性と出会い、彼は姪のローザに後押しされ、恋愛に縁がなかった彼の人生に一筋の光が射し込まれていく。
年齢は離れているものの、ヘンクとローザとの対等な会話のやり取りには、とても瑞々しさが感じられるものがありました。
日常の暮らしから見えてくるものは、生きていることの喜びや楽しさ、幸せの価値を本作では描かれており、人生にとって最も大切なことはコラールトの描く物語に全て込めらていると思いました。


■三冊目

本作に収められた短編集には、それぞれ語りや表現描写の使い分けが巧みでありながら、表題作の『マナートの娘たち』を始め、「失踪」や「アリゲーター」などでは実際に起きた、失踪事件や殺人事件をもとにフィクションとして再構成させたり、作者のアルザヤットとは異なるコミュニティに属していたり、アイデンティティを持つ人たちをリアルに描いているところに注目して読んでみると、とても上手い書き手であると、痛感させられるものがありました。
事実と虚実を取り交ぜて、多様な視点を登場人物たちに持たせることは、容易ではありません。
暴力や屈折した感情、民族性の立場、殺人事件、多文化の在り方など、あらゆる問題意識を本作の短編には内在されており、現在に繋がる社会問題について考えさせられるものがありました。


[エッセイ]

■四冊目

随筆とエッセイには、同じのような印象を持つ人たちが多く見受けられますが、両者には異なる意味があることを本書から理解出来ました。
昔と今の感覚で言えば、高尚な作品が随筆であり、現代風、軽めに記された作品をエッセイと言う傾向が広がって浸透していき、随筆やエッセイとはまた、言い方が違う雑文や手記などといった言葉も存在していましたが、その中でも随筆という言葉が生き残り、小説、詩、評論など、あらゆるジャンルに溶け込みやすい表現媒体、それこそがエッセイというものが成立した所以でもあり、これまでに出版された日本のエッセイ作品からエッセイの歴史について深く学びながら、エッセイというものにより興味が湧く、魅力的な一冊でありました。


[ジェンダー]

■五冊目

ソーシャルメディアにおける、SNSの言論空間は日常生活に浸透しているということよりも、全てを覆いつくすほどの脅威へと拡大している。
SNSを利用しない日はないことは事実であり、永続的個人化としての問題である、フィルターバブルや閉ざされた小さな部屋で音が反響する物理現象になぞらえた、エコーチェンバーの問題が現代では挙げられます。
対立構造の観点から考えられる、Twitter言論の危うさやSNS特有の中毒性といった問題点から、スマホ時代においての表現の自由から知る権利、公共性、ジェンダーの問題からネット空間の構造やこれからのスマホ時代に向けてのスマホに対する向き合い方など色々と考えさせられるものがありました。


[社会・思想]

■六冊目

リベラルアーツという言葉には本来、自由に生きるための技術という意味があります。
自由に生きるためには、あらゆる選択肢を持つことと、最適な選択肢を持つことが求められます。
そうしたリベラルアーツの知識や技術を身に付ける上で、自分自身を知ること、論理的に物事を考える力、世界の構造などといったものを理解する必要があり、本質的な正解も不正解というものも存在しないものだと考えられるのではないかと思います。
私たちは、教養を学んで、そこから得たものを自分自身の知識や思考から創造することが求められ、創造力を育んでいくことで必ず、心身性を成長させるものがあり、人間には大きな可能性が秘められていることを学びました。


[あとがき]

現代の海外文学から、エッセイ、ジェンダー、社会思想について、今回は六冊の本を取り上げましたが、古典的名著や数年前に出版された本なども数冊候補として取り上げてみたいと思いつつ、今年に出版された本を中心に紹介する中で、様々なジャンルにとらわれず、常に新しいものをアップデートしていく試みは情報に限らず、読書においても大切なことだということを考えさせられるものがありました。
機会があれば、また違うジャンルの本なども手に取って読んでいきたいなと思います。


よろしければ、サポートお願い致します。 頂きましたサポート資金は、クリエイターとしての活動資金として使わさせて頂きます。これからも、宜しくお願い致します。