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100年後も読み継がれる児童文学の書き方/村山早紀【読書感想】

児童文学作家の著者による物語の書き方入門書です。
30年近い作家人生において初の入門書ではないかと思います。
読了して思ったのは
「(著者の書いた)小説を読んだときと似た、心と頭に染み込むような内容」
でした。
このような文章読本や入門書などは堅苦しいものになりがちですが、ご本人も書かれているように論文形式にしなかったそうです。

自分を振り返ると、幼少期は母親に絵本の読み聞かせをしてもらい、文字が読めるようになると、学校の図書室で本を借りてよく読んでいました。そのうち自分でも物語を書き始めて、高校生の頃までは書いていたと思います。社会人になって給料が出ると、本を買いたくさん読んでいましたが、他に興味が移り、しばらくは書くことから遠ざかりました。

結婚を機に、また書くことに戻るのですが。

今から20年ほど前になります。
児童文学の勉強をしていました。通信講座を受講したり、同人誌会に入って作品を書いて合評したりと、夢中になったのです。今まで独自で書いてきたけれど、きちんと批評を受けて添削をしてもらうことが楽しかった。ひそかに、いつか子ども向けの本を出せるかもしれない。そんなふうに思いながら日々を送った時期もありました。

本書の中で深く心に残る文章がありました。
「夢は叶わないこともある」
「努力し、どんなに頑張っても資質や運がないと手が届かない夢がある」
「その叶わない夢のひとつが、作家になるという夢」

アマチュアで楽しんで書いていくことはできるけど、本業の作家になれるかは資質と運が大いに関係してくる。
書くことへの心構えや書く物のヒントも書かれています。
なんて厳しくも優しい言葉ではないでしょうか。

私が参加してきた講座や同人誌会の中から、作家としてデビューされて、数々の作品を生み出して出版されている方々がいます。それを見ていると、この言葉は本当だなと実感します。
子どもの本の作家の夢は叶わないけれど、本を読むこと文章を書くことは好きなのは確かです。それならば作家さんを応援することはできるかもしれない。
この本を読んで、改めて考えたことでした。

ただ、人生はまだまだ何が起きるかわかりません。子どもの本ということに捕われず、チャレンジ精神は持ち続けたいです。

付録として作品例の「トロイメライ」という短編小説が掲載されています。
発表したのは2007年7月刊行の、日本児童文学者協会創立60周年記念のシリーズ「おはなしピースウォークー傘の舞った日」に収録されたものです。反戦と平和をテーマにした作品集でした。
現在の世界情勢を目の当たりにし「トロイメライ」が胸に突き刺さります。
本書を発行する前は、世界がこれほどまで不穏になるとは考えておられなかったと思います。

児童文学の書き方ーーと言う本でありながら、人生を見直す本だと思いました。

『100年後も読み継がれる児童文学の書き方』 村山早紀 立東舎

2022年4月26日(火) 奈央



















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