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タツキ・フォロワーズ

『チェンソーマン』がジャンプに掲載されて以来、藤本タツキ先生に影響を受けた新人マンガ家が増えてきた。
自分は彼らのことをタツキ・フォロワーズと読んでいる。
ここでは、自分がタツキ・フォロワーと感じた5作品を分析してみたいと思う。
レビューは個人的な評価順である。(★★★★★で満点)
※ネタバレもアリ

1.呪神ミーシャ ★☆☆☆☆

清々しいほどのトレース作品。
『予言のナユタ』を模写して描いたような内容。
下記の単行本の表紙がナユタ。

「呪い子」と呼ばれる言葉が通じない妹と、平凡な兄の話。
妹が動物を殺す理由も、兄がそれを止める方法も、話のオチも同じ。
編集者はタツキ先生の初期の作品を読んでいなかったのだろうか。
ちなみに『予言のナユタ』に出てくる妹・ナユタは『チェンソーマン』本編にも出てきたため、キャラの知名度が上がってしまった。
人気作家の初期作品をトレースする発想は悪くないが、SNSがある現代だと光速でバレる。

妹が暴走するシーンは『NARUTO』の尾獣の影響を感じる

オリジナル部分を探してみたが、自分には厳しかった。

言葉の意味を書いている

すごく残念だったのが、妹の言葉の意味を書いている点。
『予言のナユタ』では最後まで紙を使って言葉のやりとりをしていた。
妹が勉強していたのは、兄とコミュニケーションを取りたいという理由があり、伏線になっていた。
『呪神ミーシャ』が元ネタの細かい描写を理解できていなかったのが残念でならない。

2.咆哮JKシンドローム ★★☆☆☆

これも『予言のナユタ』と構成は似ている。
特殊な兄妹の話。
ただし、妹の言葉は兄に通じる点が異なる。
(他人には「ワン」としか通じない)

なぜ通じるかはわからない

説明不足すぎて、そもそも妹が何なのかは分からない。
ギャグなのかシリアスなのか、どちらに振りたいのか分からないため、評価に困る。

マキマさんっぽい

話を盛り上げるために出てきたヒロイン。
見た目をマキマさん寄りにしたせいで、センサーに引っかかってしまった。
『チェンソーマン』を読んでいる人なら、ビジュアルで中身が予想できてしまう。そして、予想を裏切らない。
これで中身が清純という話なら、上手い罠だったのだが。

⒊悪魔のララバイ ★★★☆☆

上記の2作品と比較して、タツキ先生に近い画力がある。

1ページ目から伝わる影響

トーンを使った光の表現や、影の付け方に影響力を感じる。
人間が悪魔に見える男の話。
正直、設定がわかりにくい。
悪魔とは何のか、主人公が作ったMark2は実在するのか?
雰囲気はオシャレなのだが、一読しただけでは話が頭に入ってこない。
タツキ先生の作品は奇を衒ったようで、話自体はわかりやすい。
フォロワーの作品と比較すると、優れている部分が浮かんでくる。

ヒロインを悪女にしなくて良いのに

ヒロインは、やはり悪女。
マキマさんの影響は大きすぎる。
見た目が良くて、感情の幅が少ないキャラはこのパターン。
人気キャラで好きな人も多いキャラだから、読者としては少し冷めてしまう。
マキマさんは、ヒロインとして丁寧に描きながら、終盤に中身が分かるのが良いのだ。
積み重ねがないとキャラの良さは引き出せない。
あまり短編向きのキャラではないと思う。

4.ミーシア  ★★★★☆

作者がタツキ先生のファン。
罪人を殺すために現世に降りてきた神の子どもの話。
まず、17歳でこの作品を書いたことに驚く。

情景描写から影響を感じる

極端にタツキ先生の影響は感じない。
話の途中、老人と一緒に生活するところなどは『チェンソーマン』に似ているなと感じる程度。
キャラの画風は『 アクタージュ』に似ている。
フォロワーでありながら、自分の作品に上手く吸収できているところが良い。
短編だが、2人の関係性がよく描かれている。
話の終盤、主人公が相棒に血を飲ませるラストは美しい。
この作者の他の作品も読んでみたい。

5.ドクターマーメイド  ★★★★★

タツキ先生のアシスタントの作品。
画力・ストーリー共に完成されている。
オッサンとマーメイドのラブロマンス。
『人魚ラプソディ』に通じるところがある。
個人的には、タツキ先生の猟奇性・変態性のDNAを一番上手く継承していると思う。

人魚は人間の皮脂を食べる

こういう発想は多分、常人では思いつかない。
足を舐める前に、臭い描写を入れてくる辺りに才能を感じる。
(作者の性癖を前面に出すところは好感が持てる)

唐突なカニバリズム

かつて不老不死のために、マーメイドを食べていた話がエグい。
記者のダイナミックなゲロにもセンスを感じる。
そして、ここから感動のラストへ繋げるところに驚きしかない。
とにかく記憶にこびりつく作品なのでオススメである。

6.ステージS ★★☆☆☆ 2022.04.17追記

最近、連載が始まった作品。
白蛇が憑依した不死の主人公。
1話目から『チェンソーマン』テイストを感じる。

神との契約

ラスボスは黒蛇という神。
幼馴染を黒蛇から守るために、契約を結ぶ。
黒蛇の排泄物が敵というのも、銃の悪魔の弾丸と似ている。
そして、唐突に所属が決まる謎の組織と謎の女。

謎の組織と謎の女

ちなみにマキマさんと違ってビジュアルの評判は悪い。
(アプリ内の掲示板)
性格は姫野先輩とトガタを合わせた感じ。
とにかく、キャラを立てるために無茶苦茶な言動をさせているのがキツい。
あと似ているところは、大ゴマを使用した敵の出現シーン。

コウモリの悪魔かな?

モンスターは唐突に現れて、主人公に倒される。
もう少し掘り下げてから倒しても良かったと思う。
話が急すぎてついていけない。
万事こんな感じなので、期待感は薄い。
デンジと違って主人公に好感が持てないのが原因かもしれない。

7.コントロール ★★★☆☆ 2022.09.24追記

新人による読み切り作品。
対価を払って超能力を得た人たちの話。
絵柄は確実にタツキ先生の影響力を受けている。
ストーリーも展開の節々に影響を感じる。

ヒロインは安定の悪女

ヒロインはメイド喫茶でバイトしており、主人公のことは「オタクくん」と呼ぶ。(常連なのに名前を覚えていない)
そして、主人公をイジメていた男の彼女というオチ。

ラーメンの悪魔?

唐突に現れる、強キャラ感あるお姉さん。
タツキファンなら「マキマさん」を連想してしまう。
そして、このキャラは一方的に喋り続けた挙句、ラーメン屋で切腹してしまう。
(臓物をラーメン丼に盛ると思ったら違った)

ラーメン・トッピング全盛の上で切腹

この辺りの展開は急すぎてついていけない。
切腹シーンは印象に残るが、キャラの掘り下げがなくて急に始まるので読んでいて混乱した。
(読み切りなので仕方ないが)

巨大生物と街

こういった音のない1枚絵も、最近の作品で多用されるようになった気がする。
異形の生物と見慣れた街は確かに映える。
しかし、画力勝負になるで使い所は難しいと思う。

〆はハッピー?

最後に出てくるバイト仲間の子も口が悪い系。
出てくる女の子全員にウラがあるのは『チェンソーマン』が与えた影響が大きすぎると思う。
タツキ先生の趣味が、若手にも伝播しているのが恐ろしい。

まとめ

『ルックバック』で知名度が上がったため、今後もフォロワーは増え続けると思うが、タツキ先生のセンスを常人がマネするのは難しい。
新人は、他の作品の要素も織り込んで書いて欲しい。
あと、自分の性癖をキャラに載せないと、魅力的に見えない。
(マキマさんはタツキ先生の理想像)
ちなみに、タツキ先生の影響を受けながらも守破離した人たちをタツキ・チルドレンと呼んでいる。
『ダンダダン』辺りの作家は近いと思う。

最近では、『暗殺教室』の松井先生が新人賞で言及するようになってしまった。
このブームはもう少し続くだろう。

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