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【RICOH GR3・FUJIFILM X100F】どちらかを選べず結局どちらも使ってきた数年間を振り返る

※この投稿を書いている最中にX100VIの発表がありました。X100シリーズ初の手振れ補正機能はかなり魅力的ですが、それがないX100F(V)も実は十分に魅力があるのでそのあたりをお伝えできればと思います。

単焦点コンデジは撮影にハマった者の行き着く先

オアフ島の夕景。Photo by X100F
噴火湾を臨む。Photo by GR3

単焦点コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)は、写真撮影にハマって初めてその魅力に気付くジャンルなどではないかと思っている。なにしろ普通のコンデジのように被写体に近寄れるズームレンズは持ち合わせていないし、かといってミラーレス・一眼レフのように様々なレンズを交換することもできない。そしてその機能性の欠如のわりに高価だ。しかしカメラに対する理解が深まってきたユーザーであれば、APS-Cサイズ以上のセンサーを搭載していること、専用設計でレンズを作ることができることが、その写りに対してどれだけ効用があるかを想像できるようになる。

富士フィルムのX100シリーズ、リコーのGRシリーズはどちらも単焦点コンデジの代表シリーズだ。両者ともスナップフォトを撮るのに適していると考えられているため、どちらのシリーズを購入しようかと比較検討する人も多いのではないかと思う。逆に言えば、どちらかの機種を持っている人は多いが、現在進行形で両方を常用しているケースというのは少ないかもしれない。今まで両者を検討し、現在どちらもヘビーに併用するユーザーの目線でそれぞれについて思うことを書き出しておきたい。

始まりはX70から

自分が単焦点コンデジとして最初に手にしたいと感じたのは富士フィルムのX70だった。六本木ミッドタウンのショールームを何度も覗きに行き、しかし最初に購入したのはGR2だった。当時、オフィス通勤用バッグの隙間に入れ、日常使いでスナップフォトを撮ることをカメラに期待したため、X70は相対的に厚みがあり、レンズ前蓋を外したり付けたりする一手間も欠点のように感じられたのだ。

しかしGR2は結局のところ1ヶ月経たずに手放すことになった。退勤後にスナップを撮ってみて分かったことは、F2.8のレンズは個人的には暗すぎであり、高感度撮影のノイズは出来上がった写真を満足なものにしなかった。その反省の結果手にしたのはオリンパスのPEN-Fであり、単焦点レンズ3つを使い分けができるわりにはコンパクトで、何より強力な5軸手振れ補正が搭載されていたため、夜間・室内でも全く問題なく撮影でき、2017年に一番持ち出すことの多いカメラとなった。

逆説的だが、PEN-Fを手にしたことがX100Fの購入へ一歩踏み出すことに繋がった。照度の低い環境はPEN-Fに任せれば良いので、旅に向かうときにまずはX100Fを使ってみるというチャレンジができるようになったからだ。

水面に映る観覧車。Photo by X100F
アカデミー賞授賞式の準備。ハリウッドにて。Photo by X100F

X100シリーズではX100Fからフォーカシングレバーが搭載されている。ピントカーソルを動かすために、それまでは十字キーをいったん押してカーソル移動モードにし、それからカーソルを移動させるという2つの手間を要していた。独立したフォーカシングレバーによって、いきなりカーソルを動かしてそのままシャッターを押せば良くなり、撮りたいものを見つけてから撮影するまでのコストが圧倒的に低くなった。

(ちなみにX100シリーズの世代ナンバリングは興味深いものがある。初代は無印だが、2代目が”S”(Second)、3代目が”T”(Third)、4代目が”F”(Fourth)でそのままの5代目のFiveでF被りするかと思っていたらローマ字のVとなった。このナンバリングは富士フィルムのオリジナルなのか、何か参考にしたものがあったのだろうか)

X100Fの下剋上、GR3との棲み分け

PEN-FのサブとしてスタートしたX100Fではあるが、いつしかPEN-Fの立場を代替していった。というのも、どちらの機種も日常使いに忍ばせるにはややサイズ感が大きく、どちらかというと撮影目的の外出時に持ち出すことが多くなっていた。となると、明るさが十分な場合もそれなりに多く、また仮に多少暗い条件であっても、F2.0で撮影可能な富士フィルムの高感度ノイズはそれなりに写真として成立するものだった。

数年が経ち、コロナ禍で大掛かりな外出自体が控えられるようになったことで、GRシリーズとの再会を得る。一時期は区外に出ることも電車に乗ることもほとんどなかった。人通りの少ない夜間にスナップを撮り、あるいは今まで機会のなかった人工物のデザインを撮るようになったことで、手振れ補正のあるGR3が自分の撮影シーンに合致した。圧倒的なコンパクトさは既にGR2で実感していたが、特に室内に強いことはアフターコロナで旅を再開した後も差別化要素となり得た。

窓の外には大阪の街。撮影旅でない出張でもGR3は容易に携帯することができる。
コロナ禍で意匠やデザインにも興味が向かうようになった。Photo by GR3

今のところの結論、と補足

このような経緯もあり、現在はX100FもGR3も共に一軍として活躍している。その使い分けを一言でまとめると、X100Fはいつでも手にして持ち出せるように机に置いておくカメラ、日常を撮り、旅を撮り、ポートレートのサブカメラとして作品やオフショットを撮るカメラという位置付けとなっている。フジはISOを上げても出てくる画が写真としてまとまっている。手振れ補正はないので必然的にシャッタースピードはある程度速めで撮ることを念頭においている。

一方でGR3の位置付けは常に鞄に潜ませておくカメラ、モノ・デザインを撮るカメラ、見たままを撮るカメラとしてイメージしている。換算28mm相当の広角レンズは、35mm相当のX100Fよりも「その場」を写し取ることができる。ときどき外出先でカメラ自身を撮影するときGR3は活躍する。逆に個人的にはこのカメラで人を撮ることは一切なく、そのあたりはX100Fと棲み分けられている。旅に選ばれるのはGR3かX100Fかの必ずどちらかだ。

結論として回り道はしたものの、X100FもGR3もヘビーローテーションしているカメラである。撮影した写真の画質と、撮影に至るまでの気軽さにおいて高いレベルでそれぞれの良さがあり、棲み分けができている。X100シリーズとGRシリーズで迷っている方に対しては、どちらを選んだとしても完全には相方を補完できないけれど、どちらを選んでも期待を下回ることはないだろうことを強調しておきたい。

補足1:GR3Xは周りで絶賛している人が多いカメラですが、自分が使うシーンは今のところないかなと考えています(他に持っているカメラと多少使いどころが被るため)。小さいカメラで人を(例えば旅行の同行者などを)撮りたい人、街スナップでヘビーユースしたい人、GRといえば28mmという伝統(?)に囚われない人に使ってもらいたいカメラ。

補足2:手振れ補正機能が搭載されたX100VIは正直かなり魅力的に見えます。とはいえ28万円という価格設定はかなり高額で、購入検討している人には中古のLeica Qが視界に入ってくるかもしれません(Leica Qについてもそのうち記事投稿したい)。X100VとGR3のどちらも欲しいと考えている人がいたらX100VIはその良いとこ採りのカメラとなるかもしれません。

補足3:X100Fについてはその推しポイントをまとめた投稿を載せています。おかげさまで好評いただいているのでもし興味がありましたらぜひご覧ください。

海外にちょっと持っていくのにX100Fの存在感が丁度良い。
GR3の手軽さで鏡に映った自分をさっと切り取る。

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