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【MINOLTA TC-1】今を撮る、今しかないカメラで。【レビュー】

完全機械式でない、しかもメーカーが現存していなかったり補償が終了していたりするカメラは、基本的には電子基盤が故障したりすれば修理して復活させることはできないと考えたほうが良い。言い換えれば、壊れたら終わり。その覚悟で入手するようなものだが、逆に考えると、いつついえるか分からない関係の中で撮影を共にする、ロマンを感じずにはいられないパートナーともなり得る。

MINOLTAが技術の粋を結晶させて、世界最小の完全自動式カメラとして送り出したTC-1は、その精密さ故に常に脆さとも隣り合わせではあるが、今という時間・空間を切り取っていることを実感させてくれる。電源を入れると繰り出されるその眼は、一見するとカメラらしくない風貌と、大口径レンズと比較すればあまりに控えめに見える開放F3.5というスペックだ。ボケ具合こそ望めないものの、しかしその解像感は驚くべきもので、フィルムカメラであってもこれだけ精緻に被写体を描くことができることを身を持って教えてくれたレンズでもある。

PORTRA400

一昨年からスナップ写真のInstagramを更新し始め、常に3〜4台の(主に)フィルムカメラで撮影した写真を投稿しているが、並べてみてもTC-1で撮った写真は一際印象に残っている。これは常に持ち運べる、持ち運びたくなることによって良いシーンに巡り会えている場数が多いからなのかもしれないが、携行したいカメラという称号自体が、その魅力を最も端的に言い表している。

PORTRA400
PORTRA400
PORTRA400

上述のようにF値は控えめなので、使うフィルムもISO400あたりのものを入れておくと室内でも歩留まり良く(ブラさず)シャッターを切ることができる。今のところ相性が良いと感じているのはPORTRA400だ。安くないフィルムだが、もともと連写するようなこともなく、良い光に出会ったときに撮影していき、数週間から数ヶ月かけて1本を消費していくスタイルでは大きな支障は来さない。

ちなみに持ち出したくなる要素の一つとして、電源をON/OFFしたときのギミック(レンズバリアが自動開閉し、レンズモジュールが繰り出してくる一連の動作)があまりに精密であり、ついそれを眺めたくなるという点もあるのだが、これを無駄に繰り返すと内部の機械部品が摩耗してしまうことは明らかである。不可逆であるということが限りあるということを思い出させる。それ自体がロマンなのではないかと僕は感じている。

XTRA400
GR3

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