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【症例検討会】 DAPAカンファレンス(医鍼薬地域連携)に参加して #6

こんにちは。鍼灸専門 一齊堂の東豪です。

本日、東方医療振興財団主催の「医師・鍼灸師・薬剤師が連携してよりよい医療を患者様へ提供できる仕組みづくり」の一環。

【症例検討会 DAPAカンファレンス(医鍼薬地域連携カンファレンス)】(以下、DAPA)に参加しました。

DAPAカンファレンスとは

「患者中心の医療」の実現に向け、医療連携を目指す鍼灸師育成のためのセミナーです。

医療連携・多職種連携の教育を受けていない鍼灸師にとって、日々の臨床は閉ざされたものになりやすいです。

そこで、医療連携を経験した鍼灸師が症例を報告し、医師の目を通じて検討することで、症例に対する新しい視点・現代医学的な診断やケアへの助言を得る機会を設けました。

医師をはじめとし、コメディカルも参加するこの会で、鍼灸師は、医療者同士のコミュニケーション・マナーを身につけ、臨床に役立てて欲しいと思います。


▼これまでの活動


本日の症例

●case43「鍼灸院から総合病院への紹介の症例」

こちらは我々の鍼灸業界では見ない日はない症状である「頭痛(ずつう)」を、鍼灸院から総合病院へ紹介した症例です。

本症例では、頭痛の中でも頭の片側・側頭部にズキズキとした痛みを感じることが多い片頭痛(へんずつう)に関するものでした。

この患者さんのケースでは、10代の頃から頭痛に悩まされ、頭痛専門のクリニックで数種類の薬が処方されていましたが、鍼灸治療を行うことで、目の前がチカチカキラキラと光る閃輝暗点(せんきあんてん)の発作が起こらなくなったり、頭痛そのものの症状が軽減したという報告です。

これまでは「痛い時だけ」鍼灸治療をしていましたが、コロナ禍でリモートワークとなり、時間の工面ができるようになったため定期的に鍼灸施術を受けるようになり、あきらかに閃輝暗点や前駆症状(ぜんくしょうじょう)が減り、『もっと早く定期的に通っていれば良かった』と、かなり良い経過をおったものでした。


【case43】ドクターからのポイント|潜んでいる薬物乱用頭痛の存在

この症例に関する質疑応答では、ある医師から鎮痛剤を服用している方に起る「薬物乱用頭痛(やくぶつらんようせいずつう)」と呼ばれる、薬の飲みすぎによって起こる頭痛の存在を教示して頂きました。

目安としては「15回/月以上 または 3ヵ月以上 鎮痛薬を飲んでいる」というものです。

また、市販の鎮痛薬ほど危険性があるという事もおっしゃっておりました。

なぜ薬物乱用性頭痛が起るのかは、まだ完全な原因は突き止められてはいないようですが、現段階では下記のような発症メカニズムがあると考えられています。

【薬物乱用頭痛に陥る機序について】

薬物乱用頭痛に陥る機序は,神経細胞の過敏性にあるとされており,NSAmsなどを連用することにより,神経細胞の痛みに対する閾値を低下させ,痛みに敏感とされている脳幹部の被蓋部もしくは黒質からドーパミンの過剰放出が起こり,大脳辺縁系が感作されやすくなり,結果として痛みに敏感になり,頭痛が生じやすくなると想定されている.

また陥る前の本来の頭痛は,片頭痛であることが多いが,痛みの情報伝達の過程で,セロトニン作動薬であるトリブタン製剤やエルゴタミン製剤を連用することにより,セロトニン系の抑制系がはずれ,薬物乱用頭痛に陥るものと想定されている.

引用:治療90巻7号:2171-2173, 2008

頭痛に悩んでいる。そのため、痛みを収めたいがために飲んでいる鎮痛剤によってかえって痛みを生じてしまうことがある。

患者さん自身も気がつかない内に陥ってしまう頭痛がある。

「痛みが出る前に痛み止めを飲んでおこう」とか、「ほぼ毎日のように飲んでいる」というのは、非常に危険ですね。

もしこのような「頭痛持ちで毎日のように薬を飲んでいる」という患者さんがいらした場合には、専門医へご紹介して薬を調整してもらいながら、薬を使わず治療できる鍼灸治療を試されてみることをお勧めします。


●case44「歩行困難・認知症における鍼灸院と訪問看護ステーションとの連携の症例」

こちらの症例は、認知症で高齢の患者さんの急な関節の痛みを、客観的な身体診察所見とバイタルサインから適切に医療機関へアセスメントできた症例です。

医師に同意書を書いてもらって訪問鍼灸を行うことができることをご家族様へご提案するとともに、訪問看護ステーションの看護師さんとは「ノート」を使って情報共有し、患者さんご家族・医療関係者らと円滑なコミュニケーションを図りながら、患者さんにとって最も利益のある治療環境を構築できました。

これこそ、DAPAが推奨・推進してる他職種連携・地域医療連携をそのまま体現できた素晴らしい発表でした。


【case44】ドクターからのポイント|「呼吸数」によって知る危険な病態

臨床的には、バイタルサインの一つである「呼吸数」によって敗血症・菌血症といった、手当てが遅れれば死に至るような病態を察することができる重要な指標であることを、総合内科医の医師よりご教示頂けました。

例えば、呼吸が20回/分を超えた場合、敗血症・菌血症を疑います。これは非常に危険で、感染症による寒気・食欲不振(食べれない)など、見た目もグッタリしてしまいます。

もしこれが関節炎で起きた場合には、異常に関節が腫れ、膿でパンパンになっているとのことです。

一方で、疑痛風などの関節痛では、熱出てるけど元気があり、食事も取れ、意外と元気があるといいいます。

関節炎も、痛いけどまだ我慢できるかな、というように見た目に大きな違いがあるようです。

下記は「quick SOFA(qSOFA)」といって、呼吸数を含めたいくつかの要素により、敗血症を疑う基準です。

【quick SOFA(qSOFA)】
qSOFAによる敗血症を疑う基準は,①呼吸数≧22/分,②精神状態の変化,③収縮期血圧≦100 mmHgのうち,2つ以上を満たす場合

東洋医学では、呼吸が速いというのは「呼吸促拍(こきゅうそくはく)」といい、心肺気虚(しんはいききょ)を疑う所見と、臨床歴20年の鍼灸師の先生。

特に心気虚・心陽虚が怖く、他の4蔵が元気でも亡くなることがあるといい、もし心虚の所見があり、治療後の変化がない場合にはコンサルする必要があるなど、非常に実践的な内容で参考になりました。

また、サーチュレーションがうまく測れない場合は、手足が冷たければ温めて再度測るというコツも教えて頂きました。

このような会に参加する意義を感じます。


次回は3/13(月)20:00~21:00

東洋医学にご興味のある医師の方・医療連携に興味はあるがどのようにしたらよいかわからない鍼灸師の方。

こちらからお申込みできますので、ぜひご参加・お問い合わせいただければと思います。

▼お問い合わせ


では、今日はこの辺で。


今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・開拓をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


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