奥未道=伊神空

@azul1425

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最近の記事

工業製品から"形態素"を精製する。 ―製造過程で付与された形質に着目した廃棄物の再生について―

明け方の街を歩いている。見渡す限りが、誰かによって寸法を決められたものばかりだ。この景色の中で一番古いものはどれだろうか。せいぜい50年前の住宅の壁なのであれば、そのくらいの年数で目の前にあるものすべてが廃棄されていることになる。粗大ごみ置き場に、3つの植木鉢が捨てられている。量産品であろう古びた素焼きの鉢の寸法はきれいに揃っていて、3段に積み重ねられている。 工業化社会において、自然環境から採取された天然資源は、精製されることで均質な素材となる。この素材に寸法を与え、加工

工業製品から"形態素"を精製する。 ―製造過程で付与された形質に着目した廃棄物の再生について―

    [現代民家採集]その3『新・摂丹型の白縁入母屋』

    車窓を眺めていて、一目見てわかる地域性に出会う瞬間はいくつかあるが、この摂津・丹波地域もそのひとつである。 JR福知山線を北上していると、三田を過ぎたあたりで住宅の妻面が真っ白に縁取られた入母屋住宅が現れ始める。妻面の幅は広めで、少しのっぺりとした印象のその住宅群は、明らかに意匠的な見せ場をそこに持ってきているようだ。数軒見ていると、多くは玄関を妻側に持つ妻入りである。谷川駅に着いたところで電車を降りる。取り急ぎ、このジャンルは「白縁入母屋」と名付けておくことにしよう。後か

    [現代民家採集]その3『新・摂丹型の白縁入母屋』

    [現代民家採集]その2『安房分棟型と振幅する増改築』

    少し前に東京を走っていた少しだけ古い通勤電車に揺られ、列車は南房総市に入る。車窓から時折望む太平洋は、浜の景色と磯の景色を交互に繰り返しながら、ただひたすらに穏やかであった。南三原駅で列車を降り、本日の目的地である旧尾形家住宅に向かう。駅から目的地までは徒歩1時間強と決して楽ではない道のりだが、このまえ佐賀で見た「くど造り」のときと同様に、道中で現在の民家の様子を眺めることも、今回の目的のひとつである。 「安房分棟型と振幅する増改築」 千葉県安房地域では、座敷(母屋)と台

    [現代民家採集]その2『安房分棟型と振幅する増改築』

    [現代民家採集]その1『筑紫平野の二階くど造り』

    日本で今和次郎による民家の採集が行われはじめてから100年近くが経つ。その間、建築の工業化が進み住宅の様相は大きく変化したが、工務店が担う住宅は確実に地域ごとの特色を保ち続けているようにみえる。歴史の末端には、建てられた民家があると同時に、民家の建てられ方がある。文化財として保存されている近世の民家の傍らにあるもうひとつの伝統を見てみよう。これは、構法の水脈の先でつくられ続ける"民家"の現在のメモである。 「筑紫平野の二階くど造り」 筑紫平野にはくど造りと呼ばれる民家があ

    [現代民家採集]その1『筑紫平野の二階くど造り』