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おしりのイボを取る過程がシュールすぎた話

それ自体は無害でありながらも、日々の生活になんとなく違和感を与え続けるもの、それはイボだ。私はこのイボというやっかいなものと2度ほど暮らしを共にしたことがある。

はじめてのイボは中学生のとき、右手のひとさし指にできた。ちょうど親指とぶつかり、どうも気になって仕方ない。せっかくの関ジャニのコンサートのときでさえ、目の前から登場した大倉に発狂しながらも、右手ではイボをさわさわしていたほどだ。

どうしようもないので皮膚科へ行くと、先生はおもむろに取り出した何たら窒素の綿棒でジュッジュッとイボを軽くつつき、いとも簡単に退治してしまった。これで私のイボライフは幕を閉じたかのように見えた。



だが時は過ぎ、高校3年生になった頃、ヤツは再び現れた

次の場所は、おしりだった。

一体いつから私の体に住みついていたのかは全くわからない。しかし私の右尻には確実にヤツがいる。しかも前回より大きい。直径2㎝といったところだろうか。触っても痛くはないのだが、硬いイスに長時間座っているとだんだん痛くなってくる。そして不運なことに当時の私は、人生のなかで最も硬いイスに長時間座っていなくてはならない”受験生”という属性にあった。

仕方ないので今回も病院に行くと「手術で取りましょう」ということになった。このイボのために私は局部麻酔を受け、半日入院しなければいけないらしい。たしかに前回のゆびイボとは違って奥の方にある感じがするので、なるほど手術が必要なのだろうと納得した。

数日後に迎えた人生初の手術。おそらく「手術」と呼べるもののなかで最も小規模で緊急性のないものであろう。だからドラマで見ていたイメージとはまったく異なるものだった。手術室へは自分でトコトコと向かい、自力でベッドにうつ伏せになって、そしてちょっとだけケツをさらけ出す。常人ならあまりの恥ずかしさでリタイアしてしまうかもしれないが、私には「恥じらい」という機能がやや故障しているので、平然とお医者さんを待っていた。

看護師さんがそんな思春期女子高生のためにイボエリア以外をタオルで隠してくれていると、お医者さんがどこからともなくやってきた。そして「では始めます」とか言ったような言ってないような軽い感じで、気づけば手術が始められていた。

「局部麻酔うちますから、ちょっとチクッとしますよ~」と看護師さんが言う。おしりなので全然痛くない。麻酔といっても全身麻酔ではないので、イボ周りの感覚だけがなくなる。

ぼけーっとしていると、遠くから音楽が聞こえてきた。はて、音楽。どこかからの音漏れだろうか。それにしてはハッキリきこえる。

これは……おそらく私のために流されている…。手術用BGM…?そんなことってあるのか?しかも選曲がEXILE…!ライジングサン!!!!!!

薄らライジングサンがただよう手術室、右ケツだけ出てるうつ伏せの私、私のケツイボをカリカリしているお医者さん、それをやさしく見守る看護師さん。このシュールすぎる空間にじわじわと笑いがこみ上げてきた。だが手術中に突然笑いだす患者など、完全にやばい奴だ。術後にアタマのお薬を処方されるかもしれない。どうにか落ち着かなければ。それから十数分間はひたすらに笑いと格闘していた。

遠くのEXILEは遠いまま、西野カナを経由して再びEXILEに戻ってきたころ、お医者さんがトコトコと私の顔のところまでやってきて「こんなん取れましたよ~」とホルマリン漬けの小瓶を差し出した。

見るとそこにはたしかにイボがあった。体内のカルシウムが石灰化してできたものらしい。思ってたよりデカくて長い。こんなに奥深くまで刺さっていたのか…。私は感嘆し、そして自分から生み出されたイボになぜかやや感動を覚え、手術がおわった。

「先生は縫うのがキレイですから傷もちゃんと消えますからね~」と看護師さんは言った。そして今、傷はきれいになくなっている。お医者さんってありがたいなぁとしみじみ感じる今日この頃であった。



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