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マイホーム購入が教えてくれた、共働き夫婦の理想の姿

二人目の妊娠・出産に伴い、マイホームを購入することにした。

典型的なライフイベントを控えたミドサー夫婦の話題といえば、もっぱら住まいのこと、子どもの教育のこと、そしてお金のこと

夫と話すたびに、同じ道を通ったであろう20〜30年前の両親の姿に、今の自分を重ねていた。両親が夫婦としてどのように家族のライフイベントに向き合い、様々な決断をしてきたのか、興味があった。

■家を買うということ 〜母の場合〜

先日、母と久しぶりに会った時のこと。「ねぇ、家を買うときってどうやって決めたの?」と母に聞いてみた。

(なお、父の仕事の都合で転勤族だった。国内外を行き来した後、私が高校に入る頃に東京に落ち着き、家を購入している。)

すると、驚きの答えが返ってきた。

母「うーん、お父さんが一人で決めたのよね。この家を買って引越すって。」
私「・・・え?!お母さんに相談なしに?」
母「そうねぇ、あなたたち夫婦みたいに共働きじゃなかったからねぇ。」

度肝を抜かれた。父が一人で重大な決断を下したという事実にも驚いたが、母がその事実を特に気にしておらず、自分が専業主婦だったので意思決定に携わることができなくて当然と捉えていたことがさらに衝撃的だった。

私「え、じゃあ住むエリアは?」
母「お父さんの職場と、あなたの学校(私立だった)への通いやすさで決めたみたいよ」
私「家を買うタイミングとかお金の話は?」
母「お父さんがずっと一人で計算してたみたいよ、職場からの手当てが減るタイミングと、賃貸と住宅ローンの金額を比較したり」

まるで他人事のようにあっさり話す母に驚きつつ、すでに他界している父に話を聞けないことを悔やんだ。

父親が一家の大黒柱として働き、母親が家庭を守る。そんな時代に生きた父にとって、家族にとっての重大な意思決定を全て一人で背負うことはやはり当然という意識だったのだろうか。それとも、本当は母に相談したいという気持ちもあったのだろうか。

■家を買うということ 〜私の場合〜

私たち夫婦は、ともに会社員で共働き。二人目の妊娠をきっかけに、家の購入を検討することにした。

賃貸マンションで満足していたものの、今のエリアで家族四人で住めるような間取りの賃貸はほぼなく、住まいを見直す必要性に駆られたというのが一番の理由。また、一時期夢見ていた海外移住が新型コロナウイルスの影響で現実的でなくなってきたことが、検討の後押しになった。

初めてのことだったので、手探りながら、夫と多くのことを話し合いながら検討を進めた。

■我が家のポイント① 価値観の共有と軸の決定

「家を買う」と一口に言っても、選択肢は膨大にある。

・マンション or 一戸建て
・新築 or 中古
・都心(車なし) or 地方(車あり)
・広さ or アクセス

何かを取れば、何かを失う。全てはトレードオフである。

住まい探しの条件を決めるため、「どのようなライフスタイルが理想的か」「自分のキャリアや子どもの教育で何を重視したいか」「人生において何を優先したいか」など、住まいにまつわる価値観を共有した。

平日の昼間(お互い在宅勤務で時間がとりやすかった)や休日の夜など、十分に時間をかけて話し合った結果、私たち夫婦は以下を軸に住まい選びを進めることにした。

・メンテナンスにかける手間は最小限にしたい →マンション
・資産価値(売却の可能性)、耐久性(老後まで住む可能性)を優先したい  →新築
・子育ては「自然環境」よりも「教育の選択肢」を重視したい、車の維持費や事故のリスクは回避したい →都心(車なし)
・住まいの広さは捨てがたいが、日々の通勤時間の短縮を優先したい。子育て期間は短いので、夫婦だけで住む時間の方が長い可能性を考えると、大型ショッピングセンターや広大な公園よりも都心のほうが魅力的。 →アクセス

■我が家のポイント② 保育園問題

軸が決まったら、エリアを絞り込み、物件の候補探し。都心・アクセスの良さを重視することになったので、その点では満足している現在の居住エリアを中心に検討。

我が家には未就学児がいるので、最大の制約となるのが保育園問題。認可保育園に通う場合、基本的に自治体を超えて通うことはできないので、引っ越しをするということは、転園が必要であることを意味する。

当時、上の子が小規模保育園の卒園を控えていたため、短期間で2回も転園するのは親子ともに負荷が高いと感じた。年度途中に入園できないリスクも多い。かといって年度途中に比較的入りやすい認可外は、同年齢の子どもたちと触れ合う機会が減ってしまう可能性が高いと予想された(待機児童の多くは0〜2歳であり、3歳になると認可外から認可保育園や幼稚園に転園する子が多い)。

また、認可保育園の入園基準は自治体ごとに異なり、思わぬ落とし穴がある可能性があるので、面倒だが募集要項を読み込まなければならない。

とある区では、下の子の出生に伴い夫婦ともに育休を取得している場合は、「上の子に保育の必要性がない」と判断され退園になると、何箇所にも大きく太字で記載されていた。下の子の産後1ヶ月は、夫も育休取得予定であったため、この区はエリアから除外することにし、最終的には現在住んでいる区内に絞り物件を探すことにした。

上の子の保育園に通える範囲内となると、かなり選択肢が絞られてくる。あとはハザードマップを参考に災害地域をなるべく避け、自分たちの予算・タイミングに合致する物件を探した。

■我が家のポイント③ お金の話、ライフプランの設計

全て理想通り、とはいかなかったが、最優先としたい条件に見合う物件が見つかり、比較的スムーズに契約に至った。

住宅ローンという大きな出費の決定に伴い、世帯としてのライフプランを真面目に設計しようと、夫が提案してくれたので、乗ることにした。(実はファイナンシャルプランナーの資格を持っている夫。初めて家計について真面目に考える気になったらしい。)

ファイナンシャルプランナー(FP)の方と契約を結び、オンラインで何度か打ち合わせを行った。住宅購入、子どもの進学、退職など、ライフイベントを軸に収支のシミュレーションを行い、必要な貯蓄、検討すべき保険や投資など、長期に渡る家計運用の計画を立てる。

正直にいうと、私にとって「長期の計画」かつ「お金の計算」という時点で苦手分野の掛け合わせだった。何十年も先の計画を立てるという時点で気が遠くなる。

「50歳での年収はいくらに設定しておきましょうか?」なんてFPさんに聞かれても見当がつかない。「◯歳にはどの等級に上がり年収が◯◯になる」とラダー型のキャリアを描ける夫に対し、管理職にほぼ女性のいない会社で2度目の産休を迎える私は途方に暮れた。

ましてや75歳のときの健康状態や月々の出費なんか見当もつかない。保険は難しい専門用語ばかりでクラクラするし、確定拠出年金なんて入社以来何も触っていない。

そんな私はライフプランの算出に必要な数字を捻出するだけで一苦労だったが、第三者であるFPさんからプロの意見を聞きながら、ライフイベントに伴うお金の考え方について認識合わせと検討ができたのは、私たち夫婦にとって有意義だった。

そして私自身は、ミドサーにして、マネーリテラシーのなさを反省。確定拠出年金と積立NISAの運用、保険の見直しに着手するとともに、FP3級のテキストを買った。見栄を張っても仕方がないので、夫に素直に教えを乞いながら、大人として最低限の知識を身につけていこうと思う。

■共働き夫婦として、家族を共同経営するということ

「住宅を購入する」という経験は、多くの学びをもたらしてくれた。

日々、どのようなことに幸せや喜びを感じるか。
子どもたちには、どのような人生を送って欲しいか。
将来、夫婦二人になったとして、どのような暮らしを送りたいか。

こんな話題を夫婦で語り合うのは照れくさいけれど、毎日のちょっとした会話の中で、お互いの価値観を共有できたことは嬉しかったし、これからも面倒くさがらずに話しあえる夫婦でありたいと思った。

また、夫とともに、妻である自分も家族の共同経営者として大きな責任を負っているという事実を、ライフプランという数値化された形で認識するきっかけになった。

夫の方が収入が多いとはいえ(これは業界構造上、今後も変わらないと思われる)、私の収入が占める割合もそこそこ大きい。なので、住宅ローンのことや子どもの教育費のことを考えると、やりたいことだけを追い求めて安易に転職をするべきではない、ライスワークとライフワークのバランスを戦略的に考えていく必要があると痛感した。

片働きの場合、このプレッシャーを一人で担うのだと想像すると、恐ろしい。共働きを続けることが最大のリスクヘッジである、という考えには多いに同感する。

***

内閣府の発行する「男女共同参画白書」によると、昭和55年以降、夫婦共に雇用者の共働き世帯は年々増加。平成9年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回っている(I-3-4図)。平成29年の時点では、3世帯のうち2世帯は共働きという割合である。

いくら母が専業主婦だったとはいえ、私の両親のケースはやはり極端な気がするし、お互いがハッピーだったのであれば、それはそれで良いと思っている。

ただ、女性が働き続ける上で、男性の家庭進出(家事育児へのコミット)だけではなく、夫婦ともに共同経営者として、ビジョン(理想の家庭)と戦略(ライフプラン)を共有できるかが、幸せな共働き家庭を築く鍵になるのでは、と私は考える。

仕事と家事育児に追われる日々の中で、容易いことではないけれど、二人で共有した理想を実現するために、共同経営者としての自覚を常に持ち、対話を厭わない夫婦でありたい。



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