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カントリーガールズの行く末

同じ街で先祖の代から世話になり、地域と深く関わり合いながら成長してきた田舎出身の女の子たち、いわゆる生粋の「カントリーガールズ」にときどき遭遇する。最近、世間のイメージと実際に彼女たちの考えていることとに若干のズレがあることに気付いた。という話を書く。

お友達、勝手にネタにしてごめんね。

加えて某アイドルグループについての記事だと思った方には申し訳ないが、アップフロント界隈の話題に一切触れることはない。すみません。

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一人目は教員志望の女の子で、家は山とかを持っている。タヌキが出ただのイノシシを食っただのよく言っていた。現在は大学の関係で比較的都会に住んでおり、シティボーイの彼氏がいる。

彼女の悩みは、家を継がなくてはならないが、地元以外の場所でも挑戦をしてみたいということだ。それに対し、シティボーイの彼氏は「だったらそんな家、捨ててしまえばいいのに。君が家を継いだとして、同じことを子どもにもやらせるつもりなの?」と言う。彼の言葉はある程度的を射ているような感じもするが、彼女の思いとは少し違う。

彼女はふるさとが大好きだ。面倒なルールや不便さがあっても地元への愛着は譲れないし、この場所で子どもにも育ってほしいと思っている。地元に帰ってくるという前提で、外の世界のことも知ってみたいというだけなのだ。それなのに、自分の誇りの詰まったふるさとを、悪しきしきたりの産物のように扱われて、彼女は違和感を感じている。

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二人目の女の子は海沿いの田舎町出身。家業は映画館とか民宿とかかなり手広くやっているのだけど、彼女の進路に対する考え方でばーちゃんとパパがバトっているらしい。ばーちゃんは彼女に家業を継いでほしいのだけれど、パパは継いでほしくない。恐らくどれも、この先食いつなぐことのできる仕事ではないからだ。

彼女もそれはわかっている。だけど、自分は家業を継ぐのだと思って育ってきたから、継がないのだとしたら何をすればよいのかわからない。だから進路に迷っている。やりたいことがわからない。

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田舎の伝統の中で育つと、都会で育った人々が手にできる選択肢を奪われてしまうことがある。それを都会の人々は「可哀相だ」と感じてしまったりする。確かにそれを好まない人々もいるが、しかしそうとも限らない。田舎の人々に課せられた伝統は選び取るものではなく基盤であり、そのうえに様々な選択肢が存在している。田舎の伝統は初期設定であり彼女らのアイデンティティの一部なのだ。つまり田舎の伝統を頭ごなしに否定するのは相当に暴力的な言動だといえる。

加えて言うと、都会の人々は都会で生きる権利を与えられている代わりに田舎で生きる権利を奪われていることに盲目になりがちだ。メディアが生み出した地方移住への牧歌的なイメージとは裏腹に、田舎社会の閉鎖性・排他性はなかなか表出しない。この観点でいえば、むしろ都会の人々が「可哀相だ」と思われているのだろう。

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