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彫刻おじさんに会って。芸術について考えたこと。

彫刻師が人口8000人中200人以上を占める富山県の井波という街に行ったお話です。

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彫刻作品を売るお店で湯のみをレジに持っていくと店主のおじさんが出てきました。
たぶん彫刻師の方ですね。
「これください。」
「あーそれいくらだった?」
「えーと、800円ですね。」
おじさんは商品の値段を把握していなかったようです。
まあいいでしょう。

私はレジの上に置かれたPayPayのQRコードを発見したので
「PayPayでお願いします」とひとこと。
すると、「あ、ごめん、俺そういうのわからんわ。」と言われてしまいました。
仕方なく現金でお支払い。

支払い後、おじさんは「これは〇〇の木でできているから使いやすいぞ」と湯のみの材質を教えてくれました。(忘れちゃったけど)
他にはどんな木が使われているかが気になったので質問してみたら、それがきっかけで、おじさんは本当にいろんな話をしてくれました。
西日本と東日本で使われる木の違い、彫刻に針葉樹が使えない理由、道具の話まで、30分ほど立ち話したんじゃないでしょうか。
勉強になることばかりでした。

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商品の値段を知らない、店の支払い方法もわからない、800円の湯のみしか買っていない客と長話をする、どれもビジネスの世界にはない考え方です。
しかし、そんな彼らだからこそ、お金のこととか時間のこととかに捉われず、ひと彫りひと彫りに思いを込めて作品を作り上げることができるのでしょう。

世界に誇る芸術作品を考えてみても、現代とは全く違う価値観が基礎にあります。
ピラミッドだって、奈良の大仏だって、信仰や権威のために意味わかんないくらいたくさんの人間を動員して作り上げた遺産です。
命懸けの民衆をこき使うことは良いことではありませんが、当時の芸術の規模に匹敵する作品が現代に存在しないのは否定しがたい事実といえるでしょう。

効率ばかりを追い求めがちな現代において、至高の作品を生み出すのは難しいことです。
そんな時代の中でメインストリームと距離を置きつつ確かに素晴らしいものを生み出す人々はこの世界の宝だと私は思います。
これからも彼らが大切にされていってほしいです。

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