10月に北海道に行く話

先週からのいわゆる世間の「四連休」、わたしはどこにもいかなかった。
結果的にはどこも混雑していて大変だったみたいだけど、とりあえずほぼ家にいて、友達と喋ったりごはんを食べたりしていた。
そのごはんもあまり進まず、ただ、ぼんやりと過ごしていた。

SNSでは旅好きな人たちに恵まれているので、毎日タイムラインに美味しいものや名所がとんでもなく速く流れていった。
実はわたしもこの連休、出掛けようか迷っていたところだった。ただ、先月、その予定が崩れた。

大好きな花火業者を集めたクラウドファンディングで現地のチケットが買えるというのだ。
まず、花火好きの友人に相談した。1枚15000円でコロナ禍に対応した花火大会のチケットが買えること、参加する花火会社がどこも一流で間違いなく良い花火大会になることなど、わりと必死でプレゼンした。
友人の返事は遅かった。そして「遠い」「あまり玉数が上がらないのではないか」「交通手段はどうするのか」「一人で車で行けるか(私はペーパー)」などと訊いてきた。
早い話が諦めさせようとしてきたのだけど、一人でも行きたい、車なら教習所で練習してでも運転する、などこちらも諦めない。
結果的に、友人がレンタカーを借りて運転してくれる代わりに私はチケット代を二人分出すことにした。
三万円の出費は9月中に旅を追加するにはキツい。

四連休の間、ぼんやり過ごしながら、とあるきっぷを買おうかずっと悩んでいた。
北海道を6日間、特急も含めてどこでも乗り放題¥12,000というとんでもないきっぷが出て、鉄道ファンが大騒ぎしているのがTwitterでも伝わってきたのだ。

北海道の鉄道事情は厳しい。広く厳しい北国では老朽化の問題に加えて、よく新聞で載るようにほぼ使われていない路線が多数存在し、来年には廃線となる路線もある。

乗りに行きたいか?

そこまでしてあまりに広い北海道を知りたいのか?

ずっと悩み、連休中に乗り放題きっぷを満喫している人たちを見ていた。
「見に行けるの、うらやましいです」
悩んでいることをふとこぼしたとき、ある大学生に言われた。
「廃線になる前、行きたいときに、行けるなら…」

確かに。金銭的にそんなに余裕はないし、行かなくたっていいけど、
受験で知識のカラだけ詰め込まれた「北海道について」に色をつけるなら今なんだ。
札幌っていう字は頑張って小学校で覚えても、どんなところかなんて想像もできなかった。
このチャンスで色を塗って行こう。

決めたその足で、例の北海道きっぷを調達した。現地に行かないと買えないのだが、オークションに親切な価格でちょうど該当商品が売られていたので、それを落札した。出品者は翌日にきっちり丁寧に、きっぷを届けてくれた。

次に今日、北海道まで行ける飛行機を予約した。
来月ならまだ安く買える。Go To活用でさらに安く買える。
慣れないながらも、JAL往復チケットと、一泊目に泊まるご飯の美味しい宿のプランを、かなりの破格で予約することができた。
北海道はホテルの朝食競争がとても激しいらしく、確かに去年泊まった札幌でも美味しく食べきれないほどのご飯が出てきた。そんな中から多数の口コミのとびきり良いホテルを選ぶ。なんだか緊張してしまう。いつもは三千円のビジホでパンと牛乳を啜っているのに…。

二日目以降は列車の予定を立ててから宿を決める形になる。このあとはそこまで難しくないだろう。ゆっくり週末に埋めることにしたい。

準備に疲れ、夜になって友人に電話をした。
「北海道、行くことにしたよ」
そんな気がしてた、と友人は笑った。
「だって、先週会った時、みんなの連休をとても気にしてそわそわしてたから、きっとこれは北海道行くんじゃないかと思ってたよ」
わかりやすいんだよね、と二人で笑った。

私の「旅人としての転換」になる旅、いまから楽しみだ。

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