短歌は国境も世代もこえる
こんにちは。
最近、仕事が少し忙しく、前回の投稿からだいぶ間が空いてしまいました。
ストレスフルになると本の購買欲と読書欲が増すので、本はたくさん読んでいるし、少し買い足しました。積読が増えてしまった・・・。
疲れている時は、癒しを求めてかエッセイや歌集に手が伸びがちです。
今回は、どちらも同時に楽しめる、【エッセイ+短歌】な本をご紹介しようと思います。
短歌一首にエッセイを
私のお気に入りの2冊は、1冊は歌人 佐藤真由美さんの『恋する歌音』、もう1冊は韓国の翻訳家チョン・スユンさんの『言の葉の森』です。
2冊とも最初は電子書籍で購入して読んだのですが、あまりに素敵で「絶対に紙の本で欲しい!!」と思い、買ってしまいました。
『恋する歌音』は絶版なのか、なかなか見つからなくて、運命的に古本屋さんで見つけて購入しました。絶対に手放さないぞ・・・!!
この2冊、実は構成がとても良く似ていて、両方とも「既出の歌一首+それに関連させたエッセイ一遍」の連続になっています。
佐藤真由美さんは歌人なので、『恋する歌音』の各エッセイは佐藤さん自身が詠んだ一首で締められています。
恋の感情は色褪せない
『恋する歌音』は、中日新聞の文化面で連載されていたエッセイをまとめた1冊。「あとがき」に、依頼を受けてから書き終えるまでの心境が書いてあって、裏話を知ることができたようで楽しかったです。
佐藤さんは結構ドキリとする恋の歌を詠まれる方なのですが、この本も、心がほわっとする歌からドキッとする歌まで、バリエーション豊かで感情が忙しかったです。
私は不倫経験はないですが(佐藤真由美さんもないですが)、感情としては想像できてしまうのが不思議です。
本自体は2005年に出版されているので、新聞での連載はもう少し前だと考えると約20年前の作品なのですが、引用された短歌も、佐藤さんのエッセイも、佐藤さんが詠んだ一首も、どれも「わかる・・・!!」と心の中で何度も頷いてしまいます。
片思いの時のふわふわした気持ちを、漫画『ハチミツとクローバー』の山田さんに絡めて書かかれたエッセイ。あの頃は一生懸命だったけど、今振り返ると、若い時の片思いにかけるエネルギーってすごかったなぁ・・・と懐かしく思いました。
仕事に疲れて、恋愛することも、感情が揺さぶられることも今は全部イヤだ!!って時にパラパラめくると、少しだけ心が復活する1冊です。
言葉とは国境をこえてゆくもの
『言の葉の森』は、2021年に出版された作品で、著者のチョン・スユンさんは『太宰治全集』や『春と修羅』『流浪の月』などの日本の作品を韓国語に訳している翻訳家さんです。
エッセイの前の引用は和歌なのですが、その和歌の意訳と一緒にハングルに訳した歌も掲載されています。
実はこのハングル訳も、ほとんどの歌がちゃんと31音になるように訳されています。なんという技術!!
もともと韓国で出版された韓国語の作品なので、日本語に訳した吉川凪さんの言葉選びも素敵なのだと思いますが、チョン・スユンさんのエッセイが、とにかく優しくてあたたかいのです。
この歌を引用した、子犬の頃から一緒にいた愛犬ケミとの関係をつづるエッセイでは、著者がケミにかける愛情と、ケミが著者を100%信頼している素敵な関係性が書かれています。
ケミは亡くなっていますが、その表現もとても優しくて、私も見送った愛猫を思い出してほろっとしてしまいました。
もう1つご紹介を。
この作品の中で、私が一番ハッとしたのは、著者が北朝鮮のことに想いを馳せるエッセイでした。
もともとは1つの国としての歴史があり、同じ神話があり、同じ言葉を持つ、一番近くて遠い隣国。
日本は島国で独自の文化を築いてきたので、「同じ神話と同じ民謡を持つ隣国」の存在に対する感情はいまいちピンときません。
でも、著者はその隣国がどんどん遠い国になることに、どうしようもない切なさを抱いている様子が文章から伝わってきます。
日本語の言葉の難しさや、日本の作品に出てくる方言を韓国のどの地方の方言に訳すかなど、翻訳家としてのエッセイも豊富です。
優しいエッセイが心に沁みわたる1冊なので、ぜひいろんな方に読んでみてもらいたいな、と思います。
今回ご紹介した本はこちら
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