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『2023年に読んだ本』3選

はじめに

近年めあてにしている、年間で100冊の本を読む、を本日(9/8)達成しました。

自分なりのこの早さは、前半の本屋大賞ノミネート作に背中を強めに押してもらえたことと、厳格な図書館がそばにあったことが大きくかかわったのだと思う。

人に力を分けてもらうことも多かった。三宅香帆さん、梨ちゃんさん、友達、先輩、ありがとう。

日に日に忘れっぽくなっていくので、元日から読書ノートをつけ始めていた。そよそよと手書きするのも、熱を旧twitterで140字にギュッとするのもよくやりました。こちらでも感想のまとめ甲斐があるというものだ。

昨年の記事を見返してみると、100冊読み終えたのは同じく9月のほぼ同時期だった。

私は区切りや、キリのいい数字にすぐよしよしとなるのだ。文芸誌や図鑑の拾い読みは苦手で、1から10までわからなきゃという囚われがある。そして平気で忘れていく。

ここからはくり返しに入りたい。反復して、記憶を補強する。私の踊る大捜査線に、ハリーポッターにしていきたい。

ぜんぶ丁寧に、再読しました。


1.『20代で得た知見』F

しかし言葉にできないものを是が非でも守ることが、もし私たちに課された使命であったとしたら


この本が私の、唯一の友達です

私の読書ノートに、そうメモしてあった。ずいぶん熱のある、極論にまで心が登っていた。
善き言葉がありすぎて、集めきれないともあった。

‘あえて言いたい。人生で一番の本に出会ってしまった。今年から読書ノートをつけ始めたものの、こればかりは私にとっての善き言葉があふれすぎて、というか全部なので集めることができない。こわい本だ。122の描写が手本だということと、123が今のわたしの間近にある書き手の心得だということ、青色のことと、遡及という言葉のことくらいしか言及できない。あらゆる価値観が揺さぶられて、しまいにはひっくり返る。あたらしくなる。あらたまる。未だ底が見えない。物書きとして負けたと言うこともできない。この本が私の、唯一の友達です。’

何歳で読むのが妥当なのか、そんなものはあるわけがないと分かってきながら、でもやっぱり20代のうちに、なーんて思って再び読んだ。

表紙をざわざわさわりながらページを捲った。慈しんだ。

ほらもう、数字かつ節目に頭がすい込まれていくけれども、他と明らかに異なってきた。意味が強かった。


2.『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小畑晩

余白の美しさ、素晴らしさをどうか手放さないで

初めて行ったABCにて購入した。サイン入りで、高い位置に、ポップと共に掲げられていた。ビニールがつけられていて中は読めない。この本の実態がわからない。ことば、大きさ、絵の‘とっておきさ’に、買って帰ることを決めた。

‘歌人のエッセイは上手い。お手本だ。納得できるオノマトペの使い手だ。エッセイってやっぱり書き手が滑稽じゃなきゃ面白くないのかな。‘眠らない夜のきらめき’がロマンチックである。買いたての本をでれでれと読むのと、何事も愛すべきは不完全である部分かもしれないの、わたしのこころと一致した。東京の一側面だ。初めて行ったABCで手に取ってみてよかった。’

この本を、自分で見つけたんだぞといううれしさ。‘うれしい’と直接書いたって、こんなにいいじゃん。行きたい東京の食シリーズが増えた。

私はこの本をこそでれでれと読んだ。


3.『ブラザーズ・ブラジャー』佐原ひかり

傷つけないから、傷つけないで、と祈っていた

二度目に行ったABCにて購入した。『おもろい以外いらんねん』といっしょにして、レジにもって行った。まるでここで買うんだと強い気持ちが、あのエスカレーターを降りる前からあったみたいだ。前後していた。

‘良すぎてどうしよう。ひらかれた文体も私好みだ。そしてエブリスタ発なんだということにもどうしよう。悟‘くん’からもう不審が始まっているんだけれども、あとから題にもされるブラジャーうんぬんだってこの物語の、奇をてらっている本質的なクリフハンガーではないの。改題させる(させたであろう)編集者とその手腕について、その判断についても考える。一人じゃできない。私だって直接的タイトルで手に取った人間だ。前のタイトルも良いけれど。そうして、それからの中身がすごい。箱に入れられない気持ちがわかる。いとわないよ。’

青春文学を、「自分が何者かわかっていない者が出てくる」と定義したのは誰だっただろう。

共感までの距離が未だある箇所が残る本は、今後も読み返していくことになるのだと思う。

それはきっと、ブラジャーのことではなくて。

おわりに

家族を扱ったものが、私をちくちくとつついてくる。本当はだらだらと選んだものからあふれ出ていくことはよろしくないけれど、どうしても『くるまの娘』『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』については言い残してしておきたい。

大それたことはない。全然なくて、寧ろ私には、いつかの野田クリスタルさんの言葉が蘇ってくる。何か特別な、個人的なことがあるともないとも言わない。

私は誰かに傷がつく場面と別れが苦手で、今のところは、そしてしばらくの間、ただそれだけなのだ。

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