【読書メモ】『13歳から知っておきたいLGBT+』(原題:The ABC's of LGBT+)

・日本の13歳が読むには少し難しいかも?

自分のことを理解していこう、個性を尊重していこうという最低限の自己肯定感を持たずに、「普通からはみ出るのが怖い子」が読むと頭の中がぐちゃぐちゃになるかもしれない。

LGBTというものに全く触れたことがない13歳に手渡すには、扱う内容がちょっと複雑で広範な本。口調は砕けているのでそこは読みやすい。

逆に自分はそうだろうと思ってあれこれすでに調べたりしている人であれば、実に幅広い視野のセクシュアリティガイド本として読める。

・LGBT+(LGBTs)というワードを知ってすぐの人が読むべき「ではない」。だがそこが魅力

なぜか:十中八九混乱する。

LGBTs界隈でよく使われる単語がおおむね理解できている自分でさえ読後に「性別ってなんだっけ、生きるってなんだっけ、私って何者なんだっけ」と深く考えさせられた。

この本は、LGBT+、セクシュアルマイノリティの中にも色々あり、
それはけっしてマイノリティだけでなくシスジェンダー(いわゆる普通の男女)の人も含め、
自分のものとして考えていくには「自分がマイノリティ要素を持つ」ことへの受容ができている必要がある、ということを理解した上で読むといい。

大いに「性別」や「性的指向」についての思い込みをぶち壊し、混乱させ、視野を広げてくれる。すごく気持ちがいい本。

・P125~126、ジョイの「騎士の物語」が秀逸

(前略)その瞬間、そしてそれからずっと、彼女はお姫様でも王子でもなくなりました。きらめく鎧をまとった騎士になったのです、誰ともつかない、強くて、比類のない、満ち足りた存在に。彼女は気高く振る舞い、完全無欠の鎧を身につけ、武器を力強く使いこなしました。自ら頭と身体を鍛え、救ってもらうのを待つことは絶対にありませんでした。彼女はドラゴンを退治し、その同じ日に女王の午後のお茶会に参加することもできます。お姫様と結婚することだってできます。彼女はありのままの自分として、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

この寓話はジョイというアンドロジーン*が考えたものだそうだが、
セクシュアルマイノリティに限らず、世のステレオタイプに悩む人の光になりえると感じる。

*…アンドロジーン(androgyne):(中略)自分が男性と女性の両方か、そのどちらでもないか、男性と女性のあいだに位置すると認識する。(P124)

英語でXジェンダーをどう呼ぶのか知りたいなら読んでおきたい一冊

実は英語にはXジェンダーという表現がない。らしい。

この本では、おもに英語圏でXジェンダーと同様の性自認を持ち合わせていそうな人の例を用語とともに紹介しているので、
海外で似たような性自認の人がどういう発信をしているのか知りたい人にはぜひ一読をおすすめしたい。

先程例に出たアンドロジーンや、よくXジェンダーの置き換えとして名が挙がるジェンダークィア以外にも、かなりページを割いて解説がなされている。

構成としてはおおむね前半分が性自認、後ろ半分が性的指向という感じ。

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