底に触れる 現代美術in瀬戸 ~民治壁画のキャラたちが飛び出した
「底に触れる 現代美術in瀬戸」は、国際芸術祭「あいち」(あいちトリエンナーレ)1年前のプレイベントだ。会場のひとつである「瀬戸のまちなか」各所で現代アートが展開されている。
瀬戸信用金庫アートギャラリーでは、民治壁画オマージュの2人のアーティストの展示があった。北川民次原画の壁画は瀬戸市立図書館のシンボルだ。
瀬戸市立図書館の民次壁画|上杉あずき@STEP
木曽浩太
壁画「無知と英知」で目を引くのは、まるがお君と魚あたま君。悪役なのだが憎めない小者感があり、むしろ愛されキャラに見える。木曽の作品は「無知と英知」の愉快な登場人物たちを外に連れ出した、二次創作のような世界観だ。瀬戸会場ならではであり、図書館利用者へのプレゼントでもある。
動画も再生されていた。まるがお君と魚あたま君の帽子をかぶった二人が、テントを設営したり踊ったりというシュールで愛すべき行動に笑いがこぼれた。
田口薫
壁画「知識の勝利」は、まるがお君と魚あたま君がやっつけられる場面だ。一連の版画のうちの1点に、モチーフとして取り入れられている。壁画は赤と黒だが、迫力ある彫り跡の白と黒で表現された。見覚えのある壁画と図書館前の坂が荒々しいタッチで描かれ、不安と安心がないまぜになった気持ちになる。
植村宏木
無風庵も瀬戸らしい会場だ。街を一望できる高台に藤井達吉のアトリエを移築してある。野外にアートがあるのは大好きだ。作品がのびのびして見えるし、天候や時間で表情が変わる。
たくさんの木箱に丸い石が盛ってある。「これは何でしょうねえ」と居合わせたご夫婦もとまどっていたが、周りを歩きながら「箱に丸で囲んだ山の字がある」「焼き物屋の屋号?」「石は瀬戸川で拾ってきた?」「箱の数は39!」(5箱×8列だが中心がひとつない)などぽつぽつと発見しあった。現代アートの楽しみ方のひとつかと思う。
苦言をひとつ。アーティストトークが会期初日にスケジュール詰め詰めで行われたが、まだどんな作品か見ていない時点だし、パンフレットも展示品と違う写真だ。あちこち回って、気になる作家さんのお話を聞いてみたいと思ったときにはもう手遅れなのが残念だった。
上杉あずき@STEP
1枚目の写真は木曽浩太《あいつも来てればなあって》部分