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153kgのバーベルを頭上まで持ち上げるプロにウエイトリフティングのポイントを訊いてみた

バイロンベイからこんにちは。WRNのマロンです。

ウエイトリフティングって皆さんご存知でしょうか?重いバーベルを頭上まで挙げることができるかを競う競技で、重量挙げとも言われています。力でバーベルを挙げる豪快な競技というイメージですが、瞬発力、柔軟性、精神面も影響する繊細な競技です。選手は体重別で競技を争い、種目はスナッチ(バーベルを床から頭の上まで一気に引き上げる)とクリーン&ジャーク(クリーンでバーベルを床から肩の高さまで引き上げ、ジャークで肩から頭上まで一気に引き上げる)があり、各種3回の試技の成功した最高重量の合計で勝敗が決まります。そんなウエイトリフティングですが、最近では陸上選手を含む様々なアスリートが自身のトレーニング取り入れていますね。ウエイトリフティングは主に瞬発力(パワー)を高めることができるトレーニングですが、強い力を短い時間で発揮しなければならないアスリートには最適なトレーニングだと思います。筋肉量の増加や筋力の向上だけで瞬発力を高めることは難しいので、ウエイトトレーニングを取り入れて効率的に鍛えていきたいです。

そんなウエイトトレーニングですが、ジムでトレーニングしたことがない人がいきなり始めるには難易度高めです。まずは基本となるスクワットやフロントスクワット、デットリフトなど、重さを効率よく挙げる身体の使い方をマスターしてから取り組むことをおすすめします。本日は、陸上選手がよく取り入れる種目の一つであるハングクリーンにフォーカスして、正しい身体の使い方、コツをプロから学んでいきたいと思います。

その前に今回、監修していただいた熊川雄太氏と僕の出会いを紹介させてください。熊川氏は僕の実業団時代からの友人であり元同僚です。僕は2015年から2017年まで自衛隊体育学校という組織に所属させていただき、大学卒業後、陸上選手として陸上競技を継続しました。自衛隊体育学校とは、自衛隊員の体育指導に必要な知識や技能を習得させるための教育訓練を行うとともに、体育に関する調査研究を行うことを目的として、1961年に設置された組織で、様々なスポーツ選手が集まりオリンピック出場、メダル獲得を使命にトレーニングに励んでいます。当初僕は陸上、熊川氏はウエイトリフティングで同期入校でした。同じ寮の中住み、同じ釜の飯を食べました。なのでほぼ毎日あってました(家族のようなものです笑)僕は二年後引退しすぐ、オーストラリアに留学したのですが、彼は、2015年77kg級にて日本選手権優勝、2018年77kg級で日本社会人選手権、スナッチで当時の日本記録である153kg(デットリフトじゃないですよみなさん笑)を成功させ優勝、国際大会でも活躍され、輝かしい成績を残しました。自衛隊体育学校は成績を残すと自衛隊の階級が上がるシステムなのですが、2019年引退後も彼は自衛隊を継続し、今は宮城県の駐屯地で小隊長として国を守ってくれてます。(大変そうだけど頑張れ!)最近結婚なさったとのことで(おめでとう!!)ハネムーンはオーストラリアへぜひ!



スナッチ153kg 日本記録(当時)


股関節を使って最大限のパワーを発揮できているか。
熊川氏が上げた1つ目のポイントとして股関節があります。股関節を使えなければ、股関節周りの大きな筋肉を使うことも出来ず、大きなパワーを生み出すことは難しいです。(専門用語で言うところの股関節屈曲伸展、陸上で言うところのあげた腿をおろして地面に接地するまでの動作のことです)しかし、股関節を使えるポジションって何?って疑問に思う方も少なくないと思います。図1をのように、股関節を曲げた姿勢は股関節を屈曲することで腿の裏にあるハムストリングスと臀部の大殿筋を伸張させることが出来ます。ハングクリーンで言うところのスタートのポジションです。(股関節屈強/パワーポジション)。その股関節にためた力を一気に解放することで爆発的な力を生み出すことが可能になります。(股関節伸展)(図2)ハングクリーンでのパワーポジションから股関節を使う感覚がつかめないという方にはボックスクリーンがおすすめです。(図3)自分のパワーポジションの位置にボックスを設定し、強制的にポジションを作った状態からバーを引き上げる練習です。感覚をうまく掴めない方はこちらからトライしてみてください。



図1 パワーポジション 股関節を屈曲することで腿の裏にあるハムストリングスと臀部の大殿筋を伸張させる


図2 股関節伸展 股関節にためた力を一気に解放


図3 ボックスクリーンで股関節を使うイメージを作る

真っ直ぐなバーベルの軌道を作れているか。
次に熊川氏が上げた2つ目として、バーベルの軌道があります。地球は地球上の物体を地球に引きつけようとする力、重力がありますが、重力は地球に対して直角に働きます。重りを自分の身体から離したところで持つのと、身体の近くで持つのを比べると一目瞭然ですが、身体の近くで持ったほうが重さを持てるはずです。それと同じことがウエイトリフティングも言えます。つまり、身体と重りの距離を出来るだけ少なくすることが効率よく重さを挙げるために重要になってくるのです。(バーベルが重力に逆らわずまっすぐな軌道を描くということ)その軌道を描くために大切なことは2つです。1つ目はパワーポジションから股関節が進展して爆発的な力が生まれるわけですが、最大限に達する完全伸展位のタイミングでバーベルが上がってきているかです(図2)実際に行うと分かりますが、股関節が完全進展する前に上半身の力を使ってバーをあげてしまう傾向が見られる人が多いとのこと。そうなってしまうとバーベルが身体から離れたところで上がってきてしまい前側に引っ張られる力が生まれると当時にバーベルの移動距離も長くなり不効率です。(図4)そのエラーを起こさないためにも大事なこととしての2つ目、上半身の使い方が重要になります。肩甲骨をしっかり寄せて肩を落としたポジションを作り、バーベルが上がってくるポイント(股関節完伸展位)に達したと同時に、肘を曲げキャッチのポジションに入っていくわけですが、熊川氏いわく,バーベルをまっすぐあげようとして肘を90度にあげようとしてポジションを崩してしまう人が多いのので(図5)肘を斜め45度に引くイメージで肘の先から引っ張られる感覚をもつとポジションが崩れにくいとのこと.。(図6)(僕もこのイメージでかなりいい感覚がつかめるようになりました)

図4【エラー】バーベルの上がるタイミングのズレ、身体とバーベルの間に距離が出来る


図5【エラー】バーベルを真っ直ぐあげようとして肘を90度にあげてしまう
図6 肘を45度のイメージで引くことによってバーベルを身体から離さず引くことができる


キャッチの姿勢は全身を使って衝撃を分散
いよいよ最終段階、上がってきたバーを鎖骨と肩の位置にのせてキャッチするのですがキャッチの姿勢で大事なポイントとして、お尻をしっかり引けて、くの字の姿勢が作れているかが大事です。(図7)この姿勢が、お尻、脚、体幹の筋肉全身が使える最強のポジション、身体の全身の筋肉を使ってバランスよく重りを支えられます。熊川氏いわく、初めてクリーンを練習してバーベルをあげるイメージが作れない人は、キャッチの練習を一番はじめにやることをおすすめするとのこと。そうすることによって身体の使い方のイメージが作りやすいとのことです。(不安な方はぜひキャッチの姿勢からでもトライしてみてください!)


図7 キャッチの姿勢、全身に力を分散することが大切



現役時代、重さを追求しすぎた後悔、いかに自分の身体を使いこなせるかって事が大事で、その次に重さの追求がある
重さに慣れてくると、重さを追求したくなりますよね。(なります!笑)熊川氏いわく、人間の身体は慣れてくると自分の強い筋肉を優先して使いがちで、疲労を重ねるごとにその筋肉だけを使うようになる、それを日々繰り返すことが身体の歪みの原因になり、日々のトレーニングの感覚が自分のイメージとうまく噛み合わせることが起きる。今思うと、彼が現役時代後悔したことの一つだとのこと。ましてや、本職がウエイトリフティングではない陸上選手はなおさらですよね。いかに自分の身体を使いこなせるって事が大事で、その次に重さの追求があります。負荷をかけることももちろん大事ですが、まずは身体の使い方を覚えることが大切です。ケア後の身体がフレッシュな状態で軽負荷で身体の使い方を練習すると身体に良い刺激が入りオススメだそうです。


いかがだったでしょうか??(熊川氏ありがとうございました!)ウエイトリフティングってあんなに筋肉隆々な人たちが戦ってるパワフルなイメージとは裏腹に、すごく繊細で奥深い競技ですよね!(実際ウエイトリフティングの選手ってすごく優しい人多い気がします笑)この機会に自分のトレーニングの新たなスパイスとして始めてみてはいかがでしょうか?皆さんの競技力アップに少しでも貢献できてたら嬉しく思います。


それでは
Peace out✌️


バイロンベイにて

WORLD RUNNING NEWS™️
マロン・航太•アジィズ









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