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『パルプスリンガーズ』を一気読みしていてもたってもいられなくなった

銀皿に乗ったタコス2個とブリトー1本に、紙袋に入ったトルティーヤ・チップス。ディップ用のサルサソースと 、瓶の飲み口にライムが刺さったCORONA。少し早い夕食だがいいだろう。4人がけにしては少々狭いテーブルいっぱいに置かれた目の前の夕食を見て、久方ぶりの充足感を覚える。

ネクタイとスーツの上着は駅前のコインロッカーに放り込んできた。今日は取引先との打ち合わせが予定より早く終わったのだ。タコスから漂う香ばしいミートとトマトの香りにたまらず腹の音が鳴った。

「やったね!久々のタコスだ!」
「辺境住まいだとなかなかありつけない馳走だからな」

赤ら顔の太っちょ口髭と、コートに身を包んだ山高帽の鉤鼻が横合いから言う。口髭は早く食べようと言わんばかりに身を乗り出し、山高帽はテーブルに足を投げ出し懐からスキットルを取り出した。くつろぎの姿勢だ。

「おい、蹴らないでくれよ」
「分かってるよ。お前が食わなきゃ意味が無いからな」
「さあさあ早く!早く!」
「はいはい、そう急かすな」

隣のテーブルの連中が怪訝そうに振り向く。俺はすみませんというように手刀をつくり軽く会釈すると、自分の食事に向き直る。4人がけのテーブルの椅子のうち1つには鞄が置いてあり、残り2つは空だ。もちろん最後の椅子には俺が座っている。そう、俺は1人でこの店にやってきた。

口髭と山高帽はイマジナリーフレンドだ。俺以外の他の誰にも見えることはない。俺はソースが垂れないように気を付けながらタコスをほおばり、ライムを瓶底に落としながらCORONAを呷った。遥かにいい。

窓から差す日が暮れ始め、客も増え始めた。誰も彼も異様な個性が際立ち、「怪獣」「プロレス」「アイドル」「マグロ」など妙に熱っぽい口調の言葉が飛び交う。ふと見やると奇妙なトマトめいた生物の絵が壁に飾られている。額縁の下には「ト マ ト ン」という文字が読み取れ、不意に名状しがたい悪寒が走ったのでそれ以上視界に入れないようにした。

「たまんねえな、この風味」
「タコスもできたてでいい感じだ!」
「あ、ああ、代弁ありがとうよ。実際口にしてもいないのによく言うよな」

俺はリラックスするように伸びをし、架空の友人の茶々をいなしながら改めて食事に取り掛かる。ここは超巨大自由売買商業施設”Note”の一角にある胡乱なバー「メキシコ」。この店にはろくでもないトラブルが幾度となく持ち込まれては店に入り浸っている、もとい、常連のパルプスリンガーらによって解決されている。らしい。電脳アカウントで騒動の顛末をログデータとして面白おかしく読んでいた俺は、突然降ってきた出張命令の帰りに、ほんの軽い気持ちで物理店を訪れたのだ。それがまさか、俺の人生を揺るがす出来事になるとは口髭も山高帽も知る由もなかった……。

(続かない)


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ドーモ、azitarouです。こんにちは。
パルプ小説、書いていますか?私は書いているうちにどんどん文字数が増えてしまい大変なことになっています。殴り書きの設定メモもじわじわ増えていってすごいぞ。時間が足らない。小説書いてる人マジで尊敬する。

そんな状況なのに遊行剣禅=サンのパルプ小説『パルプスリンガーズ』を読み始めたらチョー面白く、突発的に二次創作の散文を書いてしまった。反省はしているが後悔はしていない。なかなか読み始めるタイミングが見つからなくて踏ん切りがつかなかったのですが、ジョン久作=サンの紹介記事がきっかけでノンストップで読み進めついに最新話に到達しました(ここ数日スキの絨毯爆撃を仕掛けて申し訳ないです)。

本作品のあつあつポイントはジョン久作=サンが全部挙げてくれてくださっている上に各エピソード紹介まで載っているのでこんな記事を読んでいる暇があったら上のリンクを踏むんだ。いいね?

ちなみに「パルプスリンガーって何?ロックバンドのファンの通称?」という方はお望月さんの以下の記事をどうぞ。いつも大変お世話になっております。


また、冒頭の二次創作小説は遊行剣禅=サンのガイドラインに則り執筆しました。ラブ・リスペクト・ラブ。パルプよ永遠なれ。


◆口髭と山高帽の出典元◆


逆噴射小説大賞発!外骨格パワードスーツをまとい、ポストアポカリプスを舞台にしたパルクールレース!オリジナルパルプ小説『ライディング・ホッパー』!チャプター2絶賛執筆中!公開までしばらくお待ちください。


(終わりです)

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