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ライディング・ホッパー チャプター2 #9

ライディング・ホッパー 総合目次


「巽に続いてカナズミまでもがあんな子供相手に敗北を期するとは、全くの惰弱!惰弱の極み!」

ロバート&ウィルソン・インターナショナル本社大会議室!天井から吊り下げられた大スクリーンに映し出された、カナズミの敗北を見届け開口一番に言い放った、頬に古びた傷跡を残す厳つい顔つきの初老の男はR&W代表取締役兼本社工廠長、ロバート・ツカモト・メイスンその人である!

「勝負事を玩具のお披露目会と勘違いしていないか?例え無名の小僧子っであろうと、真正面から叩き潰すこれこそが本懐!そう思わんか!」「「「ハイ!」」」

円卓に肩を並べる上位役職の面々は一切の迷いなく返答する。R&Wは外資系企業でありながらあの大崩壊を生き延びた、ヴァイキングが如き荒くれ集団である。年功序列を完全に撤廃し、優秀な人材であれば前歴を問わずに積極的に採用する完全なる成果主義を掲げ、アライランスの一角までのし上がってきた。

R&Wは本社機能こそ東北に置くものの、全国各地の支店営業所に本社と同規模の工廠を有し、それぞれが独自に技術開発に勤しんでいる。そして4年に一度催される社内運動会において、各営業所が技術の粋を結集したライディングギアを持ち寄り競わせ、その優劣で経営陣を選任するのだ。

優秀な成績を残した営業所には潤沢な予算と福利厚生が回され、一部には上級管理職レベルの手当が支給されるとだけあり、どの営業所も士気は高い。さながら同じ船に乗り込み荒波を越えんとするクルーが如きだ。

そして、次のレースに臨むR&Wが選ぶのは先の車内運動会で見事な成績を残した車両型ライディングギア「チャリオット」。鈍色に輝く機体にスパイク付きの巨大なローラーであらゆる地形を踏破し、全てを踏み潰す。ギアライダーも自社が抱えるプロ中のプロを選出する。奇策も変化球も場外戦術も必要なし。正面から確実に、勝ちに行く。

レースの中継画面に変わって映し出された試合要項に満足したロバートは満足げに頷くと承認印を手に取る。そして稟議書に捺印しようとした瞬間、大きな揺れが大会議室を襲った。

「一体どうした!?」

大窓にすぐさまシャッターが降り安全性が確保されると、屋外定点カメラの映像がスクリーンに映し出される。煙を上げる工廠、逃げ惑う従業員、そして重火器で施設を破壊する橙色のライディングギアの群れ。

「本社工廠がライディングギア部隊に襲撃されております!所属は不明!なお機体多数接近!」
「何たることだ!何故ここまで侵入を許した!我が社始まって以来の大失態だぞ!」
「も、申し訳ございません!」
「襲撃機の特定を急げ!機体構成からあぶり出せるはずだ!」

ロバートは自ら陣頭指揮を取る。彼はR&Wの代表取締役社長であり、荒くれ揃いのヴァイキング達の司令官だ。

「各員、それぞれの部署で持ち場に着け!威力業務部は全員「モンキーレンチ」に搭乗し不明機の無力化、並びに従業員の救助に当たれ!動作確認が完了次第「デビルドーザー」も随時投入しろ!」

ドローン空撮で不明ライディングギアの進行ルートを確認する。そして前線から程なく離れた位置に座する巨躯のライディングギアの姿を認めた時、ロバートは襲撃者の正体に確信を得た。すぐさま専用端末にアクセスし、社内共有ネットワーク上にデータをアップロードする。

送られたデータファイルは昨年のアライランス定例会議で撮影されたとあるライディングギアの写真。赤富士を思わせる朱色にカラーリングされたライディングギアと思えぬ大質量。

あの男は、完成の暁にはあらゆるギアを過去のものとすると豪語していた。その名は「富嶽」。巽建機が開発していた、あらゆる規格から逸脱した軍事用ライディングギアだ。

「栄あるR&Wの諸君!不明機の身元が判明した!襲撃者は巽建機!これより我らは巽建機からの防衛戦争に入る!繰り返す!これより我らは巽建機との戦争状態に突入する!」


【ライディング・ホッパー:チャプター2終わり チャプター3へ続く】


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