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創発コーディネーターからみる錦江町の可能性への期待

わたしたちエーゼログループが錦江町に関わるようになって半年あまりが過ぎました。わたし自身も実際に錦江町を訪れ、講師として職員研修の実施を通じて錦江町の人や自然に触れる中で、様々な気づきを得ています。
創発コーディネーターとしての視点を交えて、これまでの取り組みと、これから先どんなことをしようとしているか少しまとめてみました。
(文・博士(学術)松﨑光弘/株式会社エーゼログループ CRO/地域共創事業部長/創発コーディネーター )


わたしたちのこと

株式会社エーゼログループは岡山県西粟倉村、滋賀県高島市、北海道厚真町の三拠点で、木材加工や苗木生産、養鰻、養蜂、水稲、イチゴの栽培、レストランの運営といった自然資本の循環をテーマにした事業や、「ローカルベンチャー」と呼ばれる地域発のビジネスの育成に取り組んできました。
ローカルベンチャー」というのはわたしたちの代表である牧大介が考え出した言葉で、「地域の資源である自然や文化、そこに暮らす人たちの関係を生かして、地域の新たな経済と安心で豊かな暮らしを生み出すビジネス」と定義づけることができます。
その根底には、「命のつながりを豊かにすることは人々を幸せにする」という仮説ないしは願いがあります。
命のつながりが豊かになるほど人々が幸せになり、人々が幸せになるほどに命のつながりを豊かにしていけるという好循環が長期的に持続している社会・・そんな社会をわたしたちは「未来の里山」と呼んで、地域の中での地道で具体的な「ローカルベンチャー」の取り組みを積み重ねることで実現しようとしています。

わたしたちが見た錦江町の可能性

「未来の里山」づくりに取り組むわたしたちの目には、錦江町は可能性の宝庫に見えます。
昨年始めて錦江町を訪れたときの感想は、「わぁ、明るい!」というものでした。
あまり高くない溶岩台地と錦江湾に囲まれ、そこに燦々と日の光が降り注ぐ景色は、開放感と同時に自然資本のポテンシャルを感じさせるものでもありました。
たとえば、錦江町を東西に流れる神ノ川は神川大滝の美しさもさることながら、希少種を含む多くの生き物が暮らしている点が観光だけではなく大きな可能性を感じさせます。神川周辺の自然環境の保全や改善、資源の循環を進める事業活動は、これからの錦江町のあり方に一つのモデルの一つになり得るでしょうし、地域外の企業と一緒になってそういった事業を共創できるなら、町の外の資源を活用して錦江町が錦江町らしく成長発展する機会になるかもしれません。

錦江町のお茶にはポテンシャルを感じます

ビジネス的にも興味深いものがたくさんあります。たとえば、海辺と山間部のそれぞれに茶畑があり、見た目や味わいの異なるお茶を育てているのを見ると、量はともかく質としては京都の宇治や静岡と比べても市場で戦えると感じますし、養殖のカンパチやヒラマサは流通次第で今よりもっと高い価格で売れるようになるのではないかと期待します。

また、今世界的に生物多様性がホットな話題になっています。特に大手企業では、自社の事業を通して自然環境を回復させる取り組みが求められています。神川周辺の自然環境の保全や改善に貢献することは、そういった企業にとってはとても重要な取り組みになる可能性もあります。

錦江町で取り組み始めていること

わたしたちが錦江町で取り組もうとしていることは、「ローカルベンチャー」をてことして、この町がこの町らしく持続できるようにすることです。
そのためには、世の中の変化をうまく取り込んで新しい事業を立ち上げる人たちと、それを応援する人たちのコミュニティが欠かせません。
そこで、今年度から社員が1名常駐し、錦江町役場といっしょに次のような事業の取り組み始めています。

  1. 町内の事業者や既存の地域おこし協力隊員など、今後あらたな事業づくりに関わる可能性のある人たちのこれまでの取り組みや思い等を取材し言語化・発信すること

  2. ローカルベンチャーや地域外企業との共創の事例を紹介し、町内で新しい事業のアイデアを考える研修会・事業開発会議

  3. 地域と地域が持つ価値を意味づけし直す事業を育てる「ローカルベンチャースクール」

  4. これらをサポートする役場職員の育成研修

さらに、来年度以降は、町外の人たちとの事業共創の機会や、町内の子どもたちが自分発のプロジェクトに取り組む機会もつくる予定でいます。

チャレンジが地域の新たな光となる

錦江町の中でいろいろなチャレンジをしようとしているわたしたちですが、それは錦江町が、自然や文化、町で暮らす人や関わる人たちの関係性を生かして物心ともに豊かな町であるための、「ゆらぎ」をつくるチャレンジです。
ゆらぎ」をつくるということは、それまでやってきたことや人のつながりに変化を与えることです。「ゆらぎ」があまりに小さければ、変化はすぐに打ち消され元の状態に戻ります。しかし、ある程度大きな「ゆらぎ」は吸収しきれずに地域の中の物事や人の関係性を変化させ、新しい姿を生み出します。

この町の未来にとってよい「ゆらぎ」になれることがわたしたちのねがいです。


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