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#4 鶴岡〜酒田 20200816

山形県鶴岡市〜酒田市の気になっていたところを回ってきた。

内陸の村山地方は馴染みの地だけれど、沿岸部は全く行くことが無かったから、鶴岡市も酒田市もまともに行くのは今回が初めて。

秋田市からはひたすら海沿いを走って向かう。その道中では、鶴岡市の湯野浜エリアの海岸沿いはどこか三陸海岸沿いに似た雰囲気があって、特にその付近はただドライブしているだけでも気持ちが良かった。

この湯野浜付近のように、砂浜が無く海面すぐそばに道路があり、海抜も低いため海がかなり近く感じられるような道が、秋田からは県境を超えてすぐの遊佐町にもある。なのに、同じ日本海沿いの秋田ではあまり見ないのは何故だろう。

白山島

鶴岡市の由良海岸沖に、白山島という小さな島がある。

この由良海岸は、湯野浜・加茂水族館より少し南に位置する。著名なこの二箇所に比べると観光地としては少し地味なのかもしれないが、遠浅で透明度が高く、海水浴場としてはとても魅力的に見えたし、実際に多くの家族連れで賑わっていた。

白三島へは、その由良海岸から橋が架かっており、歩いてすぐに行けるようになっている。

この「島」というものに、何故だか異様なロマンを感じるのは自分だけだろうか。

たしか小学生のとき、ゲームキューブ(懐)の「ゼルダの伝説 風のタクト」というゲームに熱中していたことがある。このゲームでは「航海して未踏の島を周り地図をコンプリートする」という従来のゼルダシリーズとは一線を画す要素があり、それがひたすらに冒険心をくすぐった。

そしてそこに登場するこみっとした島々の隠れ家的・箱庭的な雰囲気に、心踊ったものだ。その時の感覚が今でも確かに残っている。ゲームは人並みに嗜む程度だったけれど、原体験として大きなものだったということだろう。

島に入り少し外周を進むと、島の頂上にある白山神社へ続く階段が現れる。

階段は237段あるらしいが、段数以上にとにかく急で、ここの昇り降りだけで体力を半分ほど持っていかれた。歩幅もかなり狭かったし、危険を感じるレベル。角度にしてどれくらいになるのだろう。正面から見るともはや壁だった。

登った先には小さな白山神社がある。それ以外には特に何も無いので、軽く手を合わせて戻るだけ。木々が生い茂っていて眺望を楽しめる感じでもない。

この神社のほか、島には釣り堀もあり、結構賑わっている。また外周を周回できる散策路もあるのだが、半周ほど進んだ辺りで通行止めになっていた。

大きな島ではないうえ全体がほぼ山なため、実際に人が足を踏み入れられる場所はかなり限られている。

白山島を望む由良海岸の景観が美しいのであって、島そのものに特筆すべき見所があるわけでは無いのかもしれない。ただ、近場を通ることがあれば立ち寄ってみてもいい場所だと思う。

庄内藩校 致道館

鶴岡の市街地、鶴岡公園の近くに、この史跡がある。

庄内藩創設の教育機関であり、かつては徂徠学という孔子の教えを説く学問を叩き込んでいたようで、孔子を祀った聖廟や、当時の教育体制や教育内容に関する資料が豊富に展示されてある。

また講堂の建築史跡としての美しさも見事なもので、畳の間に黒光りした縁側、まさに武士の家のような(違うんだけど)背筋の伸びる空間だった。

隣接する荘銀タクト鶴岡とのコントラストも、不思議と興を削がない。

ちなみにこのホールの設計は世界的にも著名な妹島和世という建築家の仕事のようで、致道館および鶴岡の街並みとの調和を計ったデザインの軌跡が窺い知れる。

↑ちょっと調べてみた。本当に素晴らしい仕事だと思う。

話は逸れたけれど、この致道館は無料で入れてしまうのがすごい。お金払わせて。

致道博物館

致道館からすぐの位置にある博物館。というか、敷地内に建物が数棟あり、それら自体が展示だったり、それぞれの内部に様々な資料が展示されていたりする。

この青い建物は旧鶴岡警察署庁舎で、内部のほとんどが撮影不可だったため写真は無いものの、中に入ってみると山形市にある旧済生館本館に雰囲気がよく似ている。

これらは共に山形県初代県令として赴任した三島通庸の令による明治前期の擬洋風建築であり(山形に詳しくなってしまった)、当時の建築観、またそれによって地方の近代化を推し進めようとした明治新政府の矜恃を感じ取ることが出来る。

この他にも三島の令により建てられた同様式の建築物は県内に点在し、加えて文脈は全く異なるものの山形市の文翔館など、史的価値に溢れた洋風建築が山形県には多数存在する。そういった建築物の存在は景観にも直結するし、隣県民としては単純に羨ましい限りだ。

旧西田川郡役所。

こういった単体として価値の高い建築物それぞれの内部には更に莫大え多角的な収蔵品が展示されており、全体的に資料館としてはとんでもないボリュームである。日本庭園なんかもあって雰囲気も最高だった。

鶴岡のマストスポットや!

善寳寺

曹洞宗三大祈祷所の一つに数えられる大きな寺院。無論その類の信仰心は皆無なので、ただ楽しそうだからというだけで来てみた。

色々ある。

特にどうこう言えることは無いのだけれど、とりあえず立派な御堂やら何やらが沢山あってなんかかっこいい。五重の塔は迫力がすごかった。あと人面魚がいるって有名な池に亀がめちゃくちゃいて楽しかった。

前項までに比べIQが著しく低下した所見しか書きようがない。これぞ予備知識・信仰心を全く持たずとも楽しめる寺院の素晴らしさである。

そういえば、寺の境内で神を祀る堂があったのだけれど、これが神仏習合というやつなのだろうか。

あと何気に気になったのが、境内にあったこの看板。

一行目、「観音」に「かみ」とフリガナが振られている。

日本の神道におけるアニミズム的「カミ」、キリスト教やイスラム教の信仰対象である超越的「God」とは全く異質の概念であるのが、仏教における「仏」「菩薩」である。

少し調べてみると仏教にも「神」と呼ばれる位は存在するらしいが、「菩薩」はそれに当たらない。

そしてキリの無いことに、神仏習合の場合は「仏」が「神」とされることもあるようだが、いずれにしても「菩薩」は「仏」とは違うので該当しない。

深く考えずに書かれた単なる誤用なのか、どういうことなのだろう。ちょっと調べたら満足したので、これ以上の追究はしないでおく。誰か教えて。

土門拳記念館

鶴岡から復路に入り、酒田市にて写真家 土門拳の記念館へ。

土門拳に関しては名前くらいしか存じ上げていなかったが、逆に言えば写真に関心が薄い自分でも名前は分かるほどの人物が酒田市出身だったことに驚いた。川端康成のポートレートが有名だと思う。

この日に行われていた企画展示は「日本の仏像」「土門拳の絵と書」「ヒロシマ」の三部で、特に主要展示であった仏像の写真の数々に関しては、はっきり言って度肝を抜かれた。

本物の写真家の作品をちゃんと見たことがなかったから、写真というもののパワーを実感したことが無く、芸術観賞の体験として正直そこまで期待を持っていなかったのだけれど、目の前の写真に映る仏像は、本当に生きているかのようで、今にも動き出しそうな生命力を湛えていた。

顔を正面から捉えた写真も、身体の一部だけを切り取った写真も、全てが物凄い迫力だった。これがプロの写真家の仕事なのかと、衝撃を受けた。

土門拳は、写真だけでなく水彩絵画や書にも通じていた。そんな彼が右半身付随になってから利き手ではない左手で書いたそれぞれの作品も、どれも力強く生気が迸るようで、それらを前にしただけで、傑物たる土門の胆力が伝わってきて心が震えた。

土門の作品以外にも館内には芸術作品が点在していて、開放感ある落ち着いた空間で、座ってそれらの作品を眺めていられる一角もある。

(これは外から撮ったやつ)

そこまで大きくない文化施設だったけれど、とても良いところだった。別の展示の時にまた行きたいと思う。

旧白崎医院

最上川の河口そばに、様々な史跡が点在する日和山公園という大きな公園があり、この旧白崎医院もその一角に建つ。

大正時代から残る貴重な洋風木造建築で、これまた史的価値の高い建築物。

一階を医院、二階を院長の住居として使っていたそうだが、このタイル張りのオペ室以外はほとんどが畳張りの和室で、洋風の外観と見事な和洋折衷を為していた。

めっちゃ細かいポイントとしては、古いオペ室によくあるこのスリッパをちゃんと置いたままなのがリアルで良かった。

そして外観が洋風なのに内観は完全に畳と襖の和風構造なので、外周の大窓に接する部屋は、こんな奇妙なことになっている。

洋風の大窓が畳に接する光景は他では見られないものかもしれない。

あと一階にオペ室がある以外は本当に普通の立派な家なので、見学云々より単純にゴロゴロしたくなった。日当たりも良いし広いし最高や。

この旧白崎医院がある日和山公園は、広大で景観が良く、見所が沢山あってとても良い公園だった。酒田市民の憩いの場なのだろう。春には400本のソメイヨシノが咲くらしい。

おわり

本来、鶴岡であれば鶴岡公園や加茂水族館、酒田であれば山居倉庫など、まず行くべき著名な観光名所はあるのだが、それよりも知る人ぞ知るニッチなスポットの方に魅力を感じてしまう。

今回はいつものような自然満喫より、文化に触れた小旅行だった。たまにはこういうのも良いかもしれない。楽しい1日だった。

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