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大いなるクトゥルフと大いなる世界の闇

真髄としてのクトゥルフ神話は、グロテスクなクリーチャーを愛でるコンテンツではない。

かつて世界を支配しており、今は現代に封印されている神──復活した暁には、容易に世界を滅ぼすことができる。

星辰が揃った時、それは必ず復活する……。


現代に精神思念体として存在する私は、封印されしクトゥルフに、何かメタファーを感じ取らずにはいられない。

【るるいえのはこにわ】という劇団で私がつくろうとしているものは、そういう闇である。

世界が封印した闇。かつて世界を支配していた闇。それは、究極的には、人の手には負えないものである。

人を楽しませるものが、笑顔にさせるものが、それとして素晴らしいのは理解できる。しかし同時に、そういうわけにはいかない世界があることを、世界が忘れてはいけない。

病や、死や、欲望は、人間が人間の手で葬り去った。しかしそれは世界を支配していたし、今だって、その気になれば世界を滅ぼせる。

私は、暗がりでそれを見つめている。
光を見て「つまらない」と蹴飛ばすフェイズは終えている。私は、闇を闇のまま描かなくてはならない。

私は所詮、闇をさまよう存在だからだ。

愛だとか、恋だとか、私にはそういうものを書く資格がない。
次回作は悪意をめぐる物語ではあるが、愛がテーマなのではないし、ラブストーリーではありえない。

愛と性と──憎むべき欲望によって、人間は間違い続ける。

これは、間違ってしまった人たちの物語だ。


2023年10月26日 薊詩乃

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