『檸檬』
「平気ですか?」
「……?」
うわの空だった。
目の前の男がレモンを持ったまま目配せする。そこに山盛りの唐揚げが運ばれていた。
「駄目な方もいるので」
「あ……大丈夫です」
来るんじゃなかった、元々こういう場は苦手だし。そう思っていた。優しい酸味が口の中に広がるまでは。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。