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安政の遠足炒め

嘉永六年(1853)マシュー・ガルブレイス・ペリーが黒船で来航。このことがきっかけで日本は外圧と内乱に揺れる幕末という時代に突入。
大老、井伊直弼は勅許なく開国、嘉永に続く安政年間、反対派の粛清。所謂、安政の大獄。そうした安政二年(1855)に来る危機にいち早く備えておかねばならないということから、士風の刷新を図った大名がいました。
板倉勝明。上州安中の藩主。
彼は遠足という行事を企画。「えんそく」ではなく「とおあし」と読みます。
何かというと、早い話がマラソン大会。


城の中枢部は今や小学校。

安中城を出発して、城下を走り、

郡奉行役宅


武家長屋

碓井の関所を通り、

関所跡

碓井峠山中の熊野神社まで行き、到着時刻を書いた紙を貰い、城まで帰って来るというもの。
武士の心身を鍛えさせるために命じた板倉勝明、それに応じて走った96人の武士に敬意を込めた料理。


材料

スルメイカの下足 
玉葱 半分
大蒜 一欠け
バター 25グラム
醤油 大匙 2


大蒜を微塵切り

安中は上野国と信濃国の国境。中山道が通り、現代でも国道18号線が走っている交通の要衝。碓井関所は重要な関門ということから、安中藩は関所の管理を幕府から任されていました。
中山道を走らせ、碓井の関所や峠道まで行かせたのは、武士達に自分達が守るべき場所を熟知させるという意味もあった?

玉葱細切り

細切りの玉葱は脛っぽい?下足は勿論、走った武士達の脚に敬意を込めてのチョイス。
イカの足は10本、つまり「とおあし」正確には二本は触腕つまり腕らしいのですが、見た目は10本なのでまあよし。
又、当然ながら自分の足で走らねばならず、馬や駕籠を使うことは厳禁。つまりイカサマは駄目よということ。


バター20グラムで大蒜、次いで玉葱を炒める。全体に油が回るまで。

2019年にこの安政遠足を題材にした映画「サムライマラソン」が公開されました。映画の出来は正直言って?という感じで、あまり話題にもなりませんでした。すっかり色褪せた、その映画のポスターも映り込んでいる動画はこちらからどうぞ。↓

戦国時代には、碓氷峠を守る城として松井田城がありましたが、山城であり、江戸時代になり城の役割が防衛拠点から政庁へと移ると、不便ということからより平地に近い現在の地にあった安中城が改修され、松井田城は廃城。城下町も松井田から離れ、高崎寄りな現在地に。
松井田城に関する記事はこちら。↓


下足投入。追いバター5グラム投入。下足に火が通ったら、醤油を回し掛ける。

昭和三十年(1955)に碓氷峠の茶屋から「安中御城内御諸士御遠足着帳」というやたら御が付く文書が発見され、それに時間や着順が記されていました。ただ、この行事では順位やタイムは重視されておらず、あくまでも完走することに意義があり、走り切った者には餅などが振舞われたということです。
この安政遠足は日本マラソンの発祥と言われ、安中城の本丸跡には石碑。

この安政遠足は第一回の近代オリンピックであるアテネ大会よりも41年も前。そう考えるとすごいイベント。
安中市では、この安政遠足を記念して、毎年五月に安政遠足マラソンを開催しています。仮装して走ってよいというイベント。


安政の遠足炒め

見事に足だらけ?な料理。走ったことから足を痛めた者もいたかもしれないということから、炒めてみました。
醤油の甘しょっぱさがバターによく合う。下足の歯ごたえと海の香。玉葱の甘味もとてもよい。
イカは高タンパクで低糖質。タウリンやコラーゲンも豊富。

安政遠足の二年後、板倉勝明が死去したので、この遠足という行事は一回きりで終わりました。恒例にしたかったのかはわかりませんが、開国したことから、外国人が入り込んで来ることにより、いずれ有事になるかもしれない。それに備えておかねばならないという思いから、武士達の心構えを平時から戦時向きに切り替えさせねばならないと考えた板倉勝明。それに答えた武士達。
現代も国際情勢はかなり緊張しています。ロシアとウクライナの戦争はまもなく一年になろうとしています。中国もいつ台湾に侵攻するかという緊張状態。このままでは近い内に、フリーメイソンの重鎮、黒い教皇パイクが予言というより予告している第三次世界大戦が起こるのも必定?(実際に戦争になるよりも緊張状態を維持している方が金になるから、このままの状態を続けたいという勢力もあるかもしれない?)
そんなことを憂えている日本人はいるだろうか?危機感があまりにも欠如している人々が多いように感じる。
備えとまではいかずとも、危機感や覚悟だけでも持っていた方がいいのかもしれない。
そんなことを思いながら、板倉勝明や安中の武士達に敬意を込めて、安政の遠足炒めをご馳走様でした。

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