国土交通省が公開する空港データから見る、コロナ以前の国内空港状況
2020年、コロナの影響もあって航空需要に大きな変化がありました。
飛行機の利用も減っているので、空港利用者も減る傾向が出ると思いますが、そもそもコロナ前まではどのような状況だったか気になり、国土交通省が公開している空港管理状況の統計データを分析・考察してみたので、結果を旅行者に役立つ仮説を交えて解説します。
前提
この記事で紹介する情報は、すべて以下の出典元のデータを元に、そのまままたは加工して作成しています。
出典:国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000185.html)
「空港管理状況」(国土交通省) を加工して作成
2020年の記事作成時、最新は平成30年のデータになります。
分析・考察結果と旅行者への情報
結果は、誰でも想像つくようなものになりましたが、データとして立証されたと思って見ていただければと思います。
1)主要空港の国内線は、近年座席利用率が向上していた。人気日時のフライト、または希望座席予約は難しくなっていたのではとも考えられる。
2)離島の空港も利用者は比較的安定していた。また、近場で短時間フライトが多く、料金も比較的安いので、移動の選択肢としても魅力的であったと思われる。
3)主要空港の国際線は、着陸回数・座席利用率共に向上していた。フライト数は増え、選択肢が広がっていたとも言える。
4)国際線については主要空港(その中でも成田空港、関西国際空港、羽田空港)の依存度が高かった。国内線との乗り継ぎを考えると、国際線が増えている羽田空港利用の利便性が高まっていたと言える。
ここからは、詳細な分析・考察情報です。
主要空港の着陸回数・旅客数
▼主要空港国際線 + 国内線
・着陸回数
伊丹空港と那覇空港は着陸回数の伸びが大きくありませんが、他の空港では2018年までは大きく伸びていました。
・利用者数
どの空港も利用者数は伸びていましたが、羽田空港の伸びが顕著でした。
国土交通省が出している、路線別の座席利用率の推移と合わせてみると、座席利用率の向上が、利用者数増加の大きな要因になっていたとも考えられます。
出典)航空輸送統計調査データを加工(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00600360&kikan=00600&tstat=000001018894&cycle=7&result_back=1&tclass1val=0)
続いて、国際線と国内線に分けて詳細を見ていきます。
▼主要空港国際線
・着陸回数
着陸回数は全体的に伸びていましたが、その中でも羽田空港の伸び率が顕著でした。
・利用者数
利用者数はどの空港も伸びていましたが、特に羽田空港と関西国際空港の利用者数の伸びが大きくなっていました。
▼主要空港国内線
着陸回数は近年、どの空港も横ばい傾向で推移していました。
旅客数は、国際線と比較すると緩やかですが、確実に伸びている傾向が出ていました。
主要空港で見ると、国内線は座席利用率向上が旅客数向上に貢献。国際線は着陸回数の増加と座席利用率の向上の2つの要因が旅客数向上に貢献していたように見えてきます。
全体通して伸びが期待できる動きを近年続けていただけに、2020年にブレーキが掛かってしまったのが惜しまれます。
ここからは主要空港含む、国内全空港を対象にした分析と考察です。
国内空港全体の分析
▼国内線+国際線の状況
国内に旅客数100万人超えの空港は32空港(計測対象82空港:約40%)
・着陸回数
羽田空港が全空港の17%を占めており、2位以下の割合は10%を切っている状態でした。主要空港以外だと、関東圏や関西圏から鉄道アクセスが難しい九州と愛媛(松山)の着陸回数が多い状況だったようです。
・旅客数と割合
全空港で旅客数をグラフにすると、東京国際(羽田)が多すぎて、他が判別できないグラフになります。。。
旅客数100万人以上とそれ以外をすべて「その他」にしたグラフがこちら。
割合ベースにしたのがこちらのグラフ。
東京国際(羽田)のシェアが、全体の4分の1を占めており、羽田への依存が強かったことがわかります。
後は、着陸数同様に九州の空港旅客数が多い傾向だったようです。
国際線と国内線毎に見ていきまうs。
▼国際線の状況
・着陸回数
着陸回数は、国際線では成田・関空・羽田・福岡・中部・那覇・新千歳の主要空港だけで、全体の90%以上となっており、特定空港への依存の高さがうかがえる状況でした。
・利用客数
グラフにすると、成田・関空・羽田の利用者数が多く、他の地方空港の状況がわからなくなるほど差がありました。
主要空港以外だと、九州や政令指定都市近くの空港が比較的利用者が多かったと思われます。
▼国内線の状況
・着陸回数
着陸回数で行くと、羽田空港がダントツ一位の次は、福岡・那覇空港と続いていました。大阪国際(伊丹)よりも福岡・那覇空港の方が着陸回数が多いのは驚きでしたが、関西国際空港と合わせると2番目になっていたようです。
・旅客数
旅客数が100万人を超えている空港は31空港(計測対象82空港:約38%)
こちらも東京国際(羽田)の利用者が多すぎ、他の利用者100万人を超える空港が霞んでしまうようなグラフができるぐらい、一人勝ち状態でした。
東京国際(羽田)の旅客数の割合は全体の30%を超えており、一極集中感がでていました。
グラフは上位の空港データのみ表示しましたが、国土交通省の公開データには離島路線なども詳細に掲載されています。
離島路線はフライト数も少ない上に小型機が主体の運用ですが、ほとんどの離島で年間1万人以上の利用者がおり、地元の人と観光客に必要不可欠な存在であるとも考えられます。
以下に、離島路線の多い航空会社の輸送人員推移のグラフを紹介します。
出典)国土交通省 航空輸送サービスに係る情報公開を加工(https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000727.html)
日本エアコミューターの減少と、オリエンタルエアブリッジの上昇要因がグラフだけでは掴みきれないですが、比較的安定した輸送人員であったことがわかります。
情報公開元
最後に
いかがでしたでしょうか。
2018年までのデータであり、2019年はおそらく上昇か維持傾向かと思いますが、2020年のデータは全く違った形になると思われます。早ければ2021年、おそくとも2022年にはデータが公開されるはずなので、改めてどのように変化したか記事にしようと思います。
早くここで紹介した2018年ぐらいの状態(いずれはもっと上昇)に、航空産業が戻ると良いなと願っております。
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